台湾ITベンダーは、あの手この手で勝ち残りを模索する。得意分野に特化したり、商品ラインアップを増やしたり、斬新な用途提案をしたりと、手法はさまざま。ハードウェア製品の市場飽和で事業を取り巻く環境は厳しさを増すものの、雑草のようにたくましくビジネスを伸ばす。前号の「台湾ITベンダー動向(上)」では、大手パソコン本体メーカーをレポートした。今号は、主に周辺機器やネットワーク機器ベンダーの動向をレポートする。(安藤章司●取材/文)

勝ち残りを模索 斬新な手法で市場攻略

アプライアンス製品開発に進出

 アスーステックコンピュータやエイサーがネットブックで大ヒットを飛ばすなか、周辺機器メーカーやネットワーク機器ベンダーなども、新たな市場を求めてさまざまな取り組みを始めている。

 マザーボードなどを開発する台湾エーオープンは、新たに「デジタルエンジン」というコンセプトを打ち出し、パソコン市場以外の需要開拓に乗り出した。「デジタルエンジン」とは、マザーボードをはじめとするパソコンのアーキテクチャを自動車の“エンジン”になぞらえ、専用アプライアンス製品に応用する手法。例えば、流通・サービス、医療、教育などの業種向けのアプライアンス製品に、自社のマザーボードを載せて開発するものだ。

 従来、業務で使うIT機器は、専用ハードウェアに専用のOSを搭載するのが一般的だった。しかし、この方式では開発コストがかさむため、近年ではパソコンの仕組みを流用するケースが増えている。例えばPOSレジやデジタルサイネージは、パソコンをベースに開発することも珍しくない。「こうした市場にハードウェア製品を供給する」(エーオープンの蔡温喜CEO)ことで、新規需要を捉える戦略だ。業務アプリケーションを開発するSIerと連携し、ハードとソフトを組み合わせることで付加価値を高める。

 マザーボードをメインに開発する台湾ギガバイトテクノロジーは、強みとするマザーボードに経営リソースを重点的に投下する方針を打ち出す。世界同時不況で伸び率は鈍っているものの、ここ数年、世界市場での同社のマザーボード年間出荷台数は右肩上がりで推移。2007年12月期の1500万台が、08年12月期は2000万台になった。09年12月期は2200万台を目指す。成長の大きな要因は、「新興市場への積極的な進出」(ギガバイトテクノロジーの高瀚宇副社長)にある。中国やインド、ロシア、ブラジルなど、従来の北米・西欧中心から新興国へと領域を拡大。とりわけ中国は年2割の勢いでマザーボード需要が伸びており、同社は直近3年間、年平均5割増で出荷を伸ばしてきた。集積度の高いノートパソコンや高性能マザーボード市場は、台湾ベンダーが上位を占める。

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中国など新興市場を狙う

 同様に“強みをより伸ばす戦略”を展開するのは、省スペースパソコンなどを開発する台湾Shuttleだ。CPUが出す熱の排出効率を高めるなどして、より小さなパソコンづくりに取り組む。上半期(09年1~6月期)は、「大型のSI案件がなかなか決まらず、苦心した」(Shuttleの林志賢・マーケティング部長)というが、下期に向けては「中国市場での商談が活発化している」(同)という。昨年度(08年12月期)のアジア地区を中心とする地域の売上構成比は全体の約2割だったが、今期は中国での需要伸長によって3割程度にまで拡大する見込みだ。新興市場での需要回復に期待を寄せている。

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 ネットワーク機器ベンダー大手の台湾アクトンテクノロジィは、製品ラインアップの拡大に意欲的だ。ネットワーク機器市場は、米シスコシステムズという強大なライバルが君臨しているが、ここ数年、逆風にさらされながらもいくつかヒット商品を出してきた。その一つが、WiMAXやWi-Fiなどの無線ネットワーク端末である。今年に入ってから、ある新興国の通信事業者から10万台単位でWi-Fi電話を受注。従来の交換機式の電話からインターネットプロトコル(IP)ベースのネットワークへの切替え需要をつかんだ。今は、さらに高速通信が可能な「WiMAX機器の需要拡大に手応えを感じている」(アクトンテクノロジィの黄安捷CEO)という。

 さらに、HDMI規格に基づく映像配信用無線ネットワーク機器を開発。高精細なフルHD映像を無線で飛ばす斬新なアイデアだ。日本では独自の著作権保護システムを採用しており、ガードが固く、開発には幾重にも制限がかかる。しかし、台湾ITベンダーが有望市場として狙う新興国では、斬新でオープンな発想こそが、顧客のニーズを掴むのだ。黄CEOは、「イノベーション・オア・ダイ(革新か死か)」「ノー・イノベーション・ノー・フューチャー(革新なければ明日はない)」をかけ声に、新たな挑戦を続ける。

台湾ソニー  
“顧客体験”を重視  
激しい価格競争、規模の追求…。生き馬の目を抜く台湾パソコン市場で、したたかにビジネスを伸ばしているのが台湾ソニーである。アスース、エイサーの2強でノートパソコンの7割近くのシェアを占めることもあるなか、台湾ソニーは逆に販売店を絞り込んで、「ソニーらしさを前面に出した戦略」(プロダクトマーケティング部ITセクションの遠藤淳シニアマネージャー)を展開している。例えば、台湾のモバイル機器の有力販社のPDAking(蔡家国際)の20店舗余りのうち7店舗を、主力のソニー製ノートパソコンVAIOの専売店風につくり変えてもらった。雑多に売るのではなく、ソニーやVAIOの「ブランドや顧客体験を重視した店づくり」をしてもらうことで、他社との差別化を図る。