このコーナーでは、店頭販売に注力するメーカーの販売第一線の動きを紹介する。(上)では各社の販売戦略や体制を、(下)では現場の奮闘ぶりを追う。
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後藤宏聡 ブロードバンド ソリューションズ事業部 マーケティンググループリーダー |
PC周辺機器を扱うバッファローは、無線LANのトップメーカー。BCNランキングの09年1~11月販売台数では、52.7%と市場の半分以上のシェアを占め、君臨してきた。そして今、無線LANを「テレビの周辺機器」として位置づけ、製品戦略や家電量販店での施策の軸に据える。「これはPC周辺機器メーカーのバッファローにとって大きな変革」(後藤宏聡・ブロードバンドソリューションズ事業部マーケティンググループリーダー)であり、テレビ分野における市場の拡大を意識したものだ。
「無線LAN経由でテレビの映像を見るユーザーが増えたのは、映像配信サービス『アクトビラ』がスタートしてから。さらに、インターネットにつなげるテレビのラインアップが充実してきたことも、市場の成長を後押しした」と後藤氏は振り返る。もちろん、ユーザーはこれまで通りPCとも接続しているが、無線LANは一戸建てやマンションで暮らす家族がみんなで使うもの。テレビやゲーム機、プリンタなど、接続先は広がってきている。
テレビのコンテンツをワイヤレスで送信するには、技術的な課題がある。電波のパワー不足による映像のコマ落ちだ。「PCのデータ転送なら、仮に時間がかかっても最終的には完了するが、映像は見ている人の目と耳で送信状況がわかってしまう」(後藤氏)。ユーザーにとって、テレビの映像は途切れないのが当たり前。同社の製品は3本のアンテナ搭載し、電波出力を強化することで課題を克服した。
接続先としてテレビが加わったことで、家電量販店との連携も重視する。店頭では「PCやテレビなど製品は売るけれどLANはわからない」と戸惑う店員の声が多く、無線LANを売り場で展開するのには抵抗があったという。「店員さんはネットワークを勉強する必要があるし、われわれはそれをやらなければならない」。ある店舗では、テレビメーカーとキャリア、バッファローの三者による勉強会を実施したケースもあり、無線LANの啓発活動に力を入れる。(井上真希子)
・(下)に続く