時の人

<インタビュー・時の人>オンキヨー PCカンパニー 量販営業部長 砂長潔

2010/08/19 18:44

週刊BCN 2010年08月09日vol.1345掲載

 オンキヨー(大朏宗徳社長)が、オーディオ機器で定評のある「ONKYO」ブランドをPCにまで広げてから10か月。「BCNランキング」のノートとデスクトップを合算したPCのメーカー別販売台数シェアで、オンキヨーは2009年10月から1~2%で推移し、10年7月は2.0%だった。有力メーカーがひしめく国内PC市場で、音の世界で実績のあるオンキヨーはどこを目指すのか。PCカンパニーの砂長潔量販営業部長に話を聞いた。(取材・文/井上真希子)

店頭販売の価値を見つめ直す
オーディオの長い歴史で培ったノウハウをPCに

Q ブランドとしての参入から10か月。改めて「ONKYO」ブランドが描くビジョンを教えてほしい。

 「オンキヨーらしい付加価値のあるPCをいかに提案していくか。これが事業の目指すところだ。例えば、その一つのかたちが、6月に発売した液晶ディスプレイ一体型の『E713シリーズ』だ。高音質化技術『DTS Premium Suite』を、PCとして世界で初めて採用した。さらに、iPodを装着できるスライド式のDockコネクタを搭載し、PCの電源を入れなくても、スピーカーとして使うことができるようにしている。


 また、ノートPCでは、工人舎との協業で実現したデュアルディスプレイを構築できる『DXシリーズ』や、4.8型ワイド液晶のポケットサイズの『BXシリーズ』も発売している。このように、従来のPCにはなかった機能と製品で独自性を打ち出すことが、ブランドの立ち位置だと考えている」

Q iPod対応製品を、オーディオ機器だけでなくPCにも導入した狙いは。

 「iPodをもつのは、いまや特別なことではない。そうしたユーザーの日常に即したエンタテインメントを提供するため、対応製品を投入した」

Q PCスピーカーやサウンド関連ボードなどのPC周辺機器ブランド「WAVIO」の事業は継続していくのか。

 「PCユーザーのなかには、オーディオにこだわる人もいる。そうしたユーザーに提供していく製品として、より拡充していく方針だ」

Q PCをユーザーに届けるために、販売店で取り組んでいる施策は何か。

 「ECサイトで購入する人が増えている状況のなかで、店頭でユーザーと対面して販売することの価値を改めて考えていく必要がある。ONKYOブランドのPCは、“ユーザーがPCを買う動機”を販売店とともにつくり上げてきたと実感している。具体的には、POPや製品の展示方法だ。

 われわれは、オーディオ機器分野では長い歴史と、それに伴う販促のノウハウをもっている。ここで培った手法を生かして、PC事業に応用していく。PCは発足してから1年たっておらず、事業としては未熟だが、これから販売店と協力しながら、売り場に並べた製品を通して、新たな価値や楽しみ方をユーザーに伝えていきたい」

Q PC事業の今後の目標を聞かせてほしい。また、オンキヨー全体として、これから何を目指していくのか。

 「この10か月で、PCのONKYOブランドはユーザーに認知されてきた。当社はこれまで、音響を重視した液晶ディスプレイや新開発のスピーカーユニット搭載したPCなどを市場に投入してきた。こうした取り組みとブランドの広がりは、PC市場の活性化、PCを使った新たな楽しみ方につながる起爆剤になっていると自負している。10年度はブランド全体で、前年の約2倍となる30万台の販売を目指す。

 グループ全体としては、音の配信から再生まで、一貫して届けられるソリューションをもっているのが強みだ。具体的には、高音質な楽曲、音楽配信サービス、PC・オーディオ機器だ。ただし、まだ一部の事業が未完成で、PC事業もその一つ。それら個別の事業を、いかに強化していくかが課題だと捉えている」

・思い出に残る仕事

 PCの生産拠点であり、修理・サポートを手がける鳥取オンキヨーの設立に携わったことが、今の営業活動に生きている。ソーテックの事業を清算してオンキヨーグループ内に取り込み、新会社として立ち上げた。「PCの生産の仕組みを自分の手で築き上げてきたからこそ、製品に自信をもって拡販ができる」。

 これまでのキャリアを振り返ると、30代から、新しい取り組みに挑戦する仕事が多く回ってくるようになったという。「企業のなかでの自分の役回りを徐々に認識し、いまでは自然に受け止めている。人にはそれぞれ持ち味があるので、ポジティブに受け入れた」と柔和な笑顔をみせた。
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