これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Liquid・長谷川敬起・代表取締役」を取材しました。
自ら作りたいものにたどり着く
「万人に必要とされるものを作りたい」。この思いをずっと抱き続けている。多くの人々に使われる優れた製品の開発に携わるべく、大学を卒業したら大手メーカーのR&D部門に進むものだと自分では思っていた。
しかし、研究の傍ら受講したベンチャー経営論の授業を通じて、ビジネスの世界に関心を持つ。コンサルティング会社やネットベンチャーで、アイデアやテクノロジーを種にして大きな価値を築いていくダイナミズムを実体験し、自分自身の事業として取り組みたい。たどり着いたのが「認証」の世界だった。
「認証したい」という人はいない
ECサイトでの買い物、音楽やスポーツイベントへの入場、口座の開設や保険の契約。今は事業者ごとにデータが分断されており、異なるサービスを利用する度に本人確認が必要となるが、それを“手ぶら”で済ませられる世界を実現すべく、認証技術の開発に取り組む。
認証技術のユーザーに、認証それ自体が目的という人はいない。使いたいのは、その先にあるサービスだ。だから、認証というレイヤーは非常に地味な存在。それでも、このレイヤーを進化させることで、万人に圧倒的な利便性を提供できると確信している。
アンテナを伸ばし、先んじて飛びつく
描くビジョンが大きいだけに、ゴールに至るまで事業をどのように継続していくかが難しい。救いとなったのは、カメラで本人確認書類や顔を照合する「eKYC」製品のヒット。ユースケース作りに地道に取り組んでいるさなかで、各種手続きのオンライン化を解禁する法改正が行われたことで、認証がビジネスとして回り始めた。
ネットベンチャー時代にたたき込まれたのは、「事象を線で捉える」という考え方。あるトピックが、なぜ今このタイミングで、どのような人々から関心を集めているのか、時系列で俯瞰することでトレンドが見えてくる。認証の世界で起きる次の大きな波に飛びつくべく、高くアンテナを伸ばす。
プロフィール
長谷川敬起
1977年生まれ。慶応義塾大学大学院卒業後、2002年にPwCコンサルティングに入社。05年にドリコムに入社し、その後同社執行役員、取締役を務める。16年にLiquid(現ELEMENTS)に入社、20年3月にELEMENTSのグループ経営体制への移行に伴い、現Liquidの代表取締役に就任。
会社紹介
「認証を空気化し、なめらかな世界をつくる」をスローガンに、あらゆるサービスを一つのIDで利用できるようにするためのテクノロジーを開発する。本人確認サービス「LIQUID eKYC」は、大手銀行を含む100社以上が、オンラインでの口座開設手続きなどで採用している。