これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「POPER・栗原慎吾代表取締役」を取材しました。
塾講師の業務を効率化する
学習塾の経営には、膨大な業務がある。請求書の送付や講師の勤怠管理などに忙殺されれば、子どもたちと関わる時間が確保できない。学習塾に共通する非効率性を解消するには、ITの力が有効になると考え、塾にテクノロジーを提供する会社を起業した。
塾の役割は「学力向上がいわばA面。ただ重要なのはB面で、教師が子どもと信頼関係を築き、学習以外の相談にも乗れるようなコミュニティーの役割がある」と話す。自社が提供するソリューションは、教師が子どもと向き合う時間とゆとりを創出し、学習塾が「子どもの居場所」になることを後押しできる。
自らの経験が強みに
祖父も父も経営者だったことから、自らも経営者を目指した。1度目の起業では、本やメディアから世の中の課題を見つけ、それを解決する事業をつくろうとしたが失敗。「自ら経験することなく、単に獲得した情報だけでは、どうしてもうまくいかない」。そんなとき、友人からの誘いで学習塾の共同経営者になり、実態を知った。
「ソリューションを開発する上で、現場の声を重視するのはもちろんだが、その声をただ反映させても、無秩序になり、誰にとっても使いやすい製品ではなくなる。必要な機能を絞るには、現場に立った経験が必要だ」
培ってきたノウハウを生かす
学習塾で課題になっているデータ活用に取り組みたい、と今後を展望する。バックオフィスから授業の支援まで、学習塾の広範な業務のデジタル化を一手に担う自社であれば、有効なデータ活用の仕組みを提供できるだろう。
学習塾に特化したサービスは、市場規模に限界があると思われるかもしれない。「しかし、隣接した市場として習い事や稽古事もあれば、学校教育といった巨大なマーケットもある。培ってきたノウハウは、塾以外でも生きるはずだ」。講師が子どもたちとよりよい関係を築き、教育を深化させるために、自社にはできることがたくさんあると信じる。
プロフィール
栗原慎吾
2007年に化学メーカーのスリーエムジャパンに入社。その後、デジタルマーケティング支援などを提供するソウルドアウトを経て、12年に友人が立ち上げた個人塾に共同経営者として参画。15年にPOPERを設立。
会社紹介
学習塾の経営におけるバックオフィス機能や保護者とのコミュニケーション機能などを搭載する教育事業者向けSaaS型業務管理プラットフォーム「Comiru」などを開発・提供する。