これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「mappin・吉元 台代表取締役CEO」を取材しました。
趣味のプログラミングに没頭
高校時代の成績が良く、「どうせなら偏差値の高い大学へ行こう」と、漠然とした思いで大阪大学医学部へ進学した。学業の一環で医療の現場を垣間見ると想像以上に厳しい世界だった。現実から逃避するかのように趣味のプログラミングに没頭した。
ある診療所から「人手が足らず物品の在庫管理ができていないので、得意のプログラミングでなんとかならないか」と相談を受けた。話を聞いてみると、一般的な診療所で使う物品は約300種。骨折治療や分娩、白内障手術などを手掛ける診療所では約800種類で、歯科医院も同じくらい多いことを知った。
医薬品管理で現場に寄りそう
医薬品はそれぞれ使用期限が定められており、在庫管理が十分でないと期限切れ、在庫切れが起こりやすい。そこで仕入れた物品の全てに二次元バーコードのシールを貼って、使うときに“ピッ”と剥がして台帳にまとめ、手が空いたときにバーコードを読み取って在庫を管理する「pitto」を考案した。
物品の外箱にもバーコードが印字してあるが、「単品や小分けで仕入れた場合は外箱がなかったり、海外から輸入品はバーコードの仕様が異なったりする場合もある」と、医療現場の実情を反映する設計にこだわった。
在学中に起業して夢を追求
将来的にはpittoを物品卸しと地域医療の現場を結ぶ受発注プラットフォームへ進化させる構想を練る。サービスの対象となる診療所や歯科医院、看護サービスを提供する介護施設、小規模病院、動物病院は全国で20万施設を超える。
医療用の物品は日々進化しており、「より良い物品を調達できるプラットフォームにすることで医療業界を支える存在になる」と目標を掲げて、在学中の2021年にmappinを立ち上げた。事業を起こすまでは医者になるかどうか逡巡したが、起業後は単位修得もとんとん拍子に進み、今年3月、在学9年にして無事卒業できた。今は志を同じくする仲間とともに夢に向かって充実した日々を送る。
プロフィール
吉元 台
1995年、沖縄県生まれ、広島県育ち。2024年3月、大阪大学医学部を卒業。
会社紹介
医療機関向け在庫管理・自動発注システム「pitto(ピット)」を開発。無料トライアル版も含めてすでに全国70余りの施設が利用しており、向こう3年で2000施設での利用を目指す。