NTTブロードバンドイニシアティブ（NTT-BB）は11月28日、新サービス「BROBA（ブローバ）」を発表した。（1）エンタテインメント、（2）ライフ、（3）ラーニング、（4）ビジネスの情報配信と、テレビ電話など映像通信機能を提供中だ。現在は「試行サービス」で、配信される情報は34社約200番組、地域は東京都と大阪府、速度は最大1．5Mbpsと限定されている。NTTがインターネット接続サービスを立ち上げただけのようだが、通信業界では、「ソフトバンクのADSL接続サービス『ヤフーBB』に対抗し、NTTの生き残りを図る『戦略商品』に違いない」とささやかれている。（平岡忠紀●取材／文）

目標会員数300万人

　ブローバは、02年4月から全国展開し、最大6Mbpsで100社以上が情報配信する予定だ。NTT-BBの和才博美社長は、会員獲得と収益の見通しについて、「01年度末に10万会員程度、02年度末に100万、05年度末に300万以上を獲得したい。サービス開始5年後の05年度に単年度黒字、07年度に累損解消する。数百億円規模の売り上げを見込む」と語ったが、業界の一部では、「楽観的すぎる」と受け止められている。

　なにしろ、単なるインターネット接続サービスでは、「固定料金」と「常時接続」が主流で、加入者の増加に比例して設備投資がかさむ一方、利用時間がいくら伸びても収入は増えない。和才社長も、設備投資は「投資総額300億円のうち150-160億円」と総額の5割以上を占めるとしているが、見込みの範囲内でおさまらないのが一般的だ。

　それでも和才社長が自信を崩さないのは、事業構造について、「会員制をとりたい。そのうえで有料番組を設定する」というように、ブローバの収益の軸足を400-500円と予定している会員料金ではなく、有料番組の視聴料金に重きを置いているからだ。

　NTT-BBの計画どおり05年度に300万会員を獲得していても、1人500円の会員料金収入では総額15億円で、「数百億円規模」の売り上げの1割にも満たない。「有料情報の視聴料に依存しきる構造」（業界関係者）だが、これこそ、ソフトバンクの孫正義社長が、「回線利用料金など2280円で商売するつもりはない。あくまでもコンテンツビジネスを目指す」とするヤフーBBとまったく同じだ。

　ある通信会社幹部は、こう見る。

　「ADSLでヤフーBBに押され気味のNTTが、真っ正面から全力でぶつかってきた」

電話に変わる新規事業

　なぜNTTは、そこまで力を入れるのか。

　NTTでは現在、固定電話が加入者、通話量ともに長期低落にあり、ネット関連も固定料金・常時接続で収益性は下がっている。さらに携帯電話も市場が飽和に近づくなど、将来に向けた成長事業の確保が焦眉の急となっている。

　「電話に代わる新規事業を探せ」とハッパをかけ続けるグループのトップ、宮津純一郎社長は、ここへ来て、活路を「光ファイバー」に見いだした。それも、利益率の悪い回線事業ではなく、そこでやり取りされる情報の「流通市場」を創設、支配しようというのだ。

　「そこで、NTT持ち株は100％子会社としてNTT-BBを設立した。将来のグループの中核会社となる期待を背負っている。持ち株側から、電話以外の個人顧客向けサービスを一手に引き受ける会社にするかもしれないと言われている」（NTT-BB幹部）。

　そのためにも、ブローバはまずヤフーBBを圧倒しなければらない。そして、その成否こそが、NTTグループの命運を占う重要なカギになるだろう。