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年末年始、好調だったEC物販サイト 各社、軒並み売り上げ増
2002/01/21 15:00
週刊BCN 2002年01月21日vol.925掲載
年末年始商戦における個人向けEC物販サイトの売り上げが好調だ。この背景には、インターネットを活用する客層が増えたことに加え、各社とも特定層の固定客を確実に増やしていることが大きい。キュリオシティは名産名品など高級食材を好む中高年をつかみ、楽天は地方の特産品や衣類、ブランド品の売上貢献率が拡大。ネットプライスは、携帯電話と共同購入を組み合わせて可処分所得の多い若年女性の心を捉えた。ネット業界の巨人・ヤフーは、1年前まで売上構成比で50%を超えていた薄利多売型のパソコン・家電商材が3割に下がり、代わりに服飾、装飾といったファッション商材や食材が着実に売れる体制をつくった。2002年はECサイト飛躍の年になるのか。
インターネットで買い物三昧
名産品、高級食材…顧客ニーズをつかむ
キュリオシティ(西澤泰夫社長)は、「昨年10月から、手応えを感じるようになってきた。まだ数年は攻めの経営を続ける」(西澤社長)と意気込む。
同社は、年末年始の売り上げが前年の17倍と、飛躍的に伸びた。これまでに獲得した会員向けにお歳暮商材などを掲載したカタログを70万部配布したことで、地方の名産・名品を中心とした販売に火がついた。
直近の売上構成では、名産・名品など高級食材や健康食品などが全体の6割を占める。購買層は30-40代が中心。このうち女性が67%を占める。今年度(02年3月期)はまだ赤字が続くものの、来年度(03年3月期)は単年度黒字化を見込む。
西澤社長は、「一時は顧客から思うような反応が得られず、心配していた。実際の数字が上がってきたので嬉しい。この1月も、昨年12月の数字からほとんど落ちずに好調が続いている。来年度は、今年度の10倍の流通額を目指す。楽天の背中を睨みつつ、機を見て一気に追い越したい」と鼻息が荒い。
今年度の売り上げは数億円だが、来年度は「数十億円を目指す」と強気の姿勢を崩さない。昨年12月には、東芝から第三者割当増資により約5000万円の資金を得ており、資金調達も順調だ。
対する楽天は、「年末商戦では前年の2倍は伸びた。地方の特産品、ブランドなどファッション商材が全体の4割を占める。次に多いのが、パソコン・家電系商材」(楽天市場・池田真一シニアプロデューサー)と、こちらも食品系に注力する。
楽天の流通総額は、四半期ごとに10%以上伸びている。昨年10-12月期においても、同7-9月期の流通総額133億円に対して2ケタ以上の伸びを示しており、このまま行けば年間1000億円に手が届くと期待を寄せる。
池田シニアプロデューサーは、「将来的には、楽天全体で年間1兆円の流通総額を実現する。特産品、ブランド、IT商材を深堀りする一方、当社が弱い不動産関連や旅行、自動車など、強化すべき分野は多い。旅行パックの取り扱いなど、商材拡充の余地は大きい。いずれは書籍販売の楽天ブックスのように、各分野とも独り立ちできるほどの集客力、販売力を獲得したい」と意欲的だ。
ネットプライス(佐藤輝英社長)の昨年10-12月期の売り上げは、前年同期比3倍の4億3000万円に増えた。しかも、約半分が携帯電話からの注文で売り上げる。女性の比率も高く、携帯電話で注文する顧客の7割を女性が占め、年齢層も25-35歳の可処分所得が高い独身女性を中心に獲得しているのが強味だ。
同社では、「共同購入(ギャザリング)」と呼ばれる販売方法を主体としている。通常はあまり安くならないブランド商品などを、ほかの人と共同して“まとめ買い”することで2-3割安く手に入れられる。これが人気を呼んだ。同社の共同購入経験者は累計75万人を超え、今年度(02年9月期)は、前年度比66%増の20億円の売り上げを見込み、単年度黒字化を達成する。
オークションで購入する場合は、ほかの購買客と値段を競るため価格が上がっていく。しかし共同購入では、ほかの購買客と協力して値段を下げる。「当初の表示価格より値段が下がるので、値段が上がるオークションよりも購入後の後味がいい」(佐藤社長)と話す。
購入時の住所入力などの作業も、ユーザーは携帯電話で難なくこなし、ポケベル世代と携帯電話、女性、ブランド、共同購入など、複数のキーワードが重なり、うまく相乗効果を高めた。
各社、独自戦略で差別化、気になるヤフーの出方
こうして見ると、各社それぞれの特徴を打ち出しているのが分かる。
キュリオシティは、主婦、中高年向けの高級食材、名産・名品を強化。商品単価が高く、高い収益性が期待できるうえ、シニア利用者は今後とも増え続けるという将来性もある。
楽天は、もともと強い食材に加え、ファッション系も立ち上がり始めた。「ファッションのなかでも、衣類や靴といった“サイズもの”は、ネットでは売りにくいと言われていた。それが、店舗側の努力もあり、今では無視できないほどよく売れている」(池田シニアプロデューサー)という。ネットプライスは、iモードなど携帯電話による共同購入でヒットを飛ばした。
ようやく手応えが出始めた日本のEC業界だが、不気味な沈黙を続けている企業もある。日本最大のアクセス数を誇るヤフーである。同社は今年1月から、従来の流動的なプロジェクト制だったEC部門を、専任人員を中心にした事業部制に切り替えた。
ヤフーショッピングの売り上げは、ヤフー全体からみれば、まだ数%に過ぎないものの、「1か月当たり2100万人の利用者数と、1日2億6500万ページビューを誇る集客力の割には、ECの規模が小さすぎる。1日も早くこの差を縮めるべく、仕掛を準備している最中」(ヤフーショッピング事業部・殿村英嗣事業部長)と、まさに“眠れる獅子”と言ったところか。
ヤフーには、現在170店舗のテナントが入居しており、数千店舗を集めるほかのECサイトに比べれば数が少ない。「店舗単位の売り上げを高めつつ、より広範囲な人々に、安い商品を、ヤフーブランドの安心感とともに販売することが、他社との差別化につながる」(殿村事業部長)と考える。
短期的な目標としては、1店舗あたり月間平均1000万円以上を維持しつつ、高級指向ではなく万人に受け入れられる大衆的ショッピングモールを目指す。価格を抑え品揃えを増やし、ヤフーの実力に恥じない事業規模にする考えだ。
年末年始商戦における個人向けEC物販サイトの売り上げが好調だ。この背景には、インターネットを活用する客層が増えたことに加え、各社とも特定層の固定客を確実に増やしていることが大きい。キュリオシティは名産名品など高級食材を好む中高年をつかみ、楽天は地方の特産品や衣類、ブランド品の売上貢献率が拡大。ネットプライスは、携帯電話と共同購入を組み合わせて可処分所得の多い若年女性の心を捉えた。ネット業界の巨人・ヤフーは、1年前まで売上構成比で50%を超えていた薄利多売型のパソコン・家電商材が3割に下がり、代わりに服飾、装飾といったファッション商材や食材が着実に売れる体制をつくった。2002年はECサイト飛躍の年になるのか。
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