IT戦略本部は、2002年度の重点プログラムとして、「IT人づくり計画」を打ち出した。これまでの施策でそれなりの成果はあげているが、世界最先端のIT国家となり、国際社会において引き続き優位な立場を維持していくためには、ITを実際に活用する「人」に着目し、「人づくり」のための取組みをさらに進めることが不可欠。また、これまでの政府の動きをいっそう加速していく必要がある。具体的には、「学校教育の情報化等」、「IT学習機会の提供」、「専門的な知識または技術を有する創造的な人材の育成」――の3分野に分けて総合的な人づくり対策に取り組む。3月11日開催の第10回IT戦略本部会合で公表された資料を紹介する。
1基本方針 現在、我が国においては、IT戦略本部(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)が中心となり、「e-Japan戦略」で掲げた「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す」という目標の実現に向けて、政府一丸となって必要なIT 施策を積極的に推進しているところである。
(1)「e-Japan戦略」における目標設定と現状認識 世界最先端のIT国家を目指すという目標の下、とくにITの「人づくり」の面については、「e-Japan戦略」において、
(1)2005年のインターネット個人普及率予測値の60%を大幅に上回ることを目指し、高齢者、障害者等に配慮しつつ、すべての国民の情報リテラシーの向上を図る。
(2)小中高等学校及び大学のIT教育体制を強化するとともに、社会人全般に対する情報生涯教育の充実を図る。
(3)IT関連の修士、博士号取得者を増加させ、国・大学・民間における高度なIT技術者・研究者を確保する。併せて、2005年までに3万人程度の優秀な外国人人材を受け入れ、米国水準を上回る高度なIT技術者・研究者を確保する。
という3つの目標を掲げている。
この目標の達成に向け、2001年度においては、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するために策定された「e-Japan重点計画」(平成13年3月)等に基づく各種施策を実施し、これらの取組を通じて、インターネットの利用人口が順調に増加したり、学校教育の情報化が進展したりするなど、一定の成果を収めているところである。
具体的に言えば、インターネットの利用人口については、1997年に1,155万人であったものが、2000年には、4,708万人となり、4倍以上になっている。また、公立学校のインターネット接続率は、2000年3月に57.4%だったものが、2001年3月には、81.1%となり、1.4 倍以上になっており、現時点では、ほぼ100%になっていると見込まれる。
しかしながら、世界のIT化は我が国以上に急速に進展し続けている。
例えば、インターネットの普及率についてみれば、我が国の普及率も急速に上昇しつつあるものの、他国での進展は一層著しいものとなっており、世界の中では第14位(「平成13年版情報通信白書」)にとどまっている。我が国の教育水準、所得水準等を考慮した場合、本来であれば、さらに上位に位置しているべきであるということができよう。
また、学校教育の面でも、米国と比較した場合、教育用コンピュータの一台当たり生徒数が米国は2000年の時点で5人であるのに対して、我が国は2001年3月の時点で13人となっていることなど、なお、努力すべき点が見受けられるのが事実である。
さらに、この一年で、ITをめぐる環境も大きく変化している。例えば、インターネットの回線速度の高速化が進み、ブロードバンド時代といわれる状況が到来していること、また、ハードからソフトへの転換という社会の動きが進み、機器の整備などだけではなく、その質、つまり利用の内容と程度が問われる状況になってきていること等が挙げられる。今後のIT政策の立案にあたっては、このような動向を考慮しつつ、新たな取組を指向していくことが重要である。
このため、平成17年度までに我が国がIT人的資源大国となることを目指すこととし、「e-Japan2002プログラム」の「IT人づくり計画(骨子)」を具体化し、この「IT人づくり計画」としたものである。
なお、2002年度における、IT人づくり関連施策については、本計画に基づく施策と「e-Japan重点計画」に掲げられた施策を中心に、積極的に推進していくものとする。
(2)「IT人づくり計画」の基本方針 我が国が世界最先端のIT 国家となり、国民すべてがIT の恩恵を享受できる社会が実現するとともに、国際社会において引き続き優位な立場を維持していくためには、ITを実際に活用する「人」に着目し、「人づくり」のための取組をさらに進めることが不可欠であり、これまでの政府の動きを一層加速していく必要がある。
具体的には、「IT人づくり計画」において、育成すべき人材について、
(1) 将来を担う子どもたちのIT活用能力を高めるための「学校教育の情報化等」
(2)すべての国民が日常生活の中で自然にITを使いこなすための「IT学習機会の提供」
(3)各分野のIT専門家の育成のための「専門的な知識又は技術を有する創造的な人材の育成」
の3分野にわけ、児童・生徒、一般の国民、職業人、学生、専門家等にわたる総合的な人づくりを重点的かつ戦略的に図っていくこととする。