その他
<BCN REPORT>ソーテック幸浦事業場工場見学
2002/05/13 21:12
週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載
ソーテック(大邊創一社長)は、修理時の機能追加サービスを6月から本格的に始める。同サービスでは修理を受け付けた際に、ハードディスク(HDD)やビデオカード、基本ソフト(OS)などを有償で最新のものに交換する。また、これまで限られていた受注生産(BTO)の選択肢も大幅に増やす。これにより、新品で購入しても、修理に出して継続使用したとしても、利用者は常に自分の好きな機能を取捨選択できるようになる。サービス拠点の「横浜サービスセンター」を取材した。(安藤章司)
6月から機能追加サービス開始
HDDやOSなど、有償で最新版に交換
●8割は3日以内に修理完了
「ソーテックの修理は遅い!」「コールセンターはつながらない!」――。そう言われ続けて何年か経つソーテックだが、気づいてみると業界最先端のサービス体制を築きつつある。
2001年6月に稼働した横浜サービスセンター(通称:幸浦事業場)では、提携工場の韓国トライジェム、台湾のFTC(大衆電脳)、ウィストロン(エイサー系列)などと協力し、修理やBTOを手がける。稼働1周年に当たる今年6月からは、修理から一歩踏み込んで、新しい機能を追加する有償サービスを始める。
幸浦事業場は、3フロア分の作業スペースをもつ建物1棟からなる。人員規模は約160人。内訳はソーテック側の人員が約100人、トライジェム側の人員が約60人で、このほかメーカーから数人の出向技術者が常駐する。
1階は仕分けスペースで、2階はトライジェムが管轄する修理ライン3本が並ぶ。3階はソーテック直営の修理スペースになっている。
不評だった修理期間の長さも、この1年で大幅に短縮した。今では、事業場に到着してから全体の80%を3日以内に修理し、顧客に向けて発送する。1年前は、3日以内に修理完了できた割合は20%だった。
田中厚輔専務は、「8割を3日で完了しても、なかには2週間かかるものもある。これではまだ不合格。揺るぎない信頼を得るためには、早急に全修理品を1週間以内に顧客の手元に返す仕組みをつくる」と、改善の余地を厳しく指摘する。
●修理品、在庫管理の難しさ
だが、頭が痛い点も残る。修理部品の在庫管理だ。ソーテックでは、1日150-200台の修理品が運び込まれる。これらを修理するには、最低でも500-600点の部品を常備しなければならない。なかでも、3か月ごとに型式が新しくなるマザーボードやビデオカード、そのほかボード類の在庫管理はとくに難しい。すぐに型が古くなり、余れば再利用も難しい。しかし、修理に時間がかかる理由の大半が部品の在庫切れに起因することを考えれば、在庫を減らすわけにはいかない。
田中専務は、「故障率・箇所の予測を正確に弾き出せるサプライチェーンマネジメント(SCM)の精度を高めるしか解決方法はない。機能追加サービスやBTOの選択肢が拡がれば、部品の在庫管理はこれまで以上に難しくなる。SCMの予測は最初から的中するものではない。1つ1つ経験を積み重ね、予測精度の向上および効率化に努める」と話す。
機能追加サービスでは、主にHDD、ビデオカード、OSなどに対応する。HDD交換では、顧客のデータが入ったHDDをUSB接続ケースに入れて返却する。顧客はUSBに古いHDDをつなぐことで、必要なデータ本体に取り戻せる。OS更新時は、ソーテック独自の付属ソフトやドライバも追加し、半年ほどの動作保証もつける。同サービスは、デスクトップより、顧客自身では分解しにくいノートパソコンで需要があると見込む。
●修理の半分はトライジェムに委託
ソーテックでは、修理の半分をトライジェムに委託する。実は、ここには“仕掛け”がある。ソーテックは、トライジェムに製品を発注する際、保証期間内に起きるであろう故障を「修理補償費」という名目で製品原価に織り込んで支払っている。幸浦事業場では、あらかじめ定めた故障比率を超えた場合、この分の修理費をトライジェムが負担するという契約を結んだ。
「すべて直営でも可能だが、それではメーカーとのつながりが薄れる。修理工場には技術向上に役立つ情報が山のようにある。どうして壊れたのか。次の新製品では、どう改善すべきか。提携工場の技術者を幸浦に常駐させ、徹底的に改善策を学んでもらっている」(田中専務)と、修理という“対処療法”だけでなく、次期製品の品質改善に向けた“予防策”にも力を入れる。
ソーテック社内では、「いっそのこと、ソーテックの設計部門を幸浦に移してはどうか」という意見も出でくるほど、修理現場は次期製品の改善アイデアに富んでいる。
故障の原因を潰していけば、結果的に品質が良く、壊れにくい製品ができる。修理現場の声を製品開発に反映すれば、修理しやすい製品が生まれる。設計を合理化し、修理しやすい製品となれば、出荷後の機能追加もしやすく、リサイクルもしやすい。組み合わせが簡単という点ではBTOにも役立つ。修理期間短縮に欠かせない部品の在庫管理の完成度を高めることで、機能追加やBTOの速度も上がる。幸浦事業場は、まさにソーテックを前進させる原動力となっている。
現在、BTOラインは、トライジェムに委託している2階の修理スペース部分の端に小さく2ラインを確保しているに過ぎない。月産5000台が限界だ。夏商戦が本格化する6月中にはラインを増やし、月産1万台体制を確立する。「まだ足りないようであれば、同じ幸浦地区に別の棟を確保し、生産能力を高めることも検討中」だという。
●コールセンターとの連携強化
もう1つ解決しなければならない課題がある。コールセンターとの連携強化だ。 修理日数短縮の足を引っ張る原因の1つに、「故障再現性が極端に低い」、あるいは「故障していない」ケースが1割ほどある。後者に至っては回収する必要すらない。
再現性が低くても、故障であれば、同型機で振動や過電圧、低電圧、高湿度などの条件を加えて徹底的に調べる。不具合が見つかれば、修理すると同時に次期製品でも改善策を打つ。
有償修理の場合は、電話を受けた時点で修理費用の概算見積もりを出せる体制をつくる。 後から見積もりの了承を得ようとすれば、その確認作業だけで時間の無駄になるからだ。
コールセンターは通常業務に加え、(1)修理が必要かどうかを判断し、有償修理では見積もりの概算をその場で提示、(2)機能追加サービスの告知・営業、(3)効率的なBTO受注――など、いくつかの技能向上を図る。
コールセンターで、不具合現象に対して、技術的な判断やその場で見積もりを出す動きは、大手メーカーでも始まったばかりだ。
田中専務は、「コールセンターでの対応や修理など、ようやく業界水準に追いついた。今後は、機能追加サービスやBTO、修理と設計および製造を一体化することによる品質向上など、ソーテックらしい製品やサービスを進んで提供する前衛部隊となるよう努める」と鼻息が荒い。
ソーテック(大邊創一社長)は、修理時の機能追加サービスを6月から本格的に始める。同サービスでは修理を受け付けた際に、ハードディスク(HDD)やビデオカード、基本ソフト(OS)などを有償で最新のものに交換する。また、これまで限られていた受注生産(BTO)の選択肢も大幅に増やす。これにより、新品で購入しても、修理に出して継続使用したとしても、利用者は常に自分の好きな機能を取捨選択できるようになる。サービス拠点の「横浜サービスセンター」を取材した。(安藤章司)
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