その他
ハード単価下落で大打撃 悩むメーカー直系システム販社
2003/12/22 15:00
週刊BCN 2003年12月22日vol.1020掲載
メーカー直系のシステムインテグレータがハード単価の下落に苦しんでいる。今年1年を通じて、IAサーバーの単価は前年比で1割余り下がっており、これが直系システムインテグレータにおける業績伸長の足を引っ張っている。(安藤章司●取材/文)
付加価値分も吸収し、業績に影響
■下がり続けるサーバー価格、ハードの売り上げ比率低下は限界
直系システムインテグレータである限り、系列メーカー製品の拡販は、重要な存在意義の1つである。だが、今年1月の時点で、IAサーバー大手の日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が、低価格戦略でシェアを伸ばすデルへの対抗措置として「二極化戦略」を発表。高価格と低価格の差を広げる二極化戦略で、中価格帯を一気に低価格へと押し下げた。
日本HPは今年1年間、大型値下げとなるものだけで計6回の価格改定を発表した。これら価格改定を合わせると、年初の価格に比べ最大で6割引き、平均で4-5割は下がったという。デルが引き金を引いた低価格化は、日本HPを動かし、ひいては日本アイ・ビー・エム(日本IBM)やNECなど大手IAサーバーメーカーまで追従して値下げせざるを得ない状況を作りだした。
この価格下落は、当然のようにメーカーの直系システムインテグレータの業績伸長の足を引っ張った。直系システムインテグレータは、2000年のネットバブル崩壊以降、より付加価値が高く、収益性が見込めるソフト・サービス分野に力を入れてきた。このため、ハードウェアを中心とする箱売りの部分は、全体の売上比率の5割を下回り、ここ3年間でシステムインテグレーション事業全体の収益構造は大きく転換した。
だが、系列メーカーが製造した製品を販売する使命がある直系システムインテグレータの多くは、「収益性の改善とは別の問題として、メーカー系列の販社としての使命があるからには、これ以上、ハード比率を下げるわけにはいかない」(直系システムインテグレータ幹部)という矛盾が深刻化している。
富士通ビジネスシステム(FJB)は00年度(01年3月期)、「2000年(Y2K)問題」特需の反動などで赤字を出して以来、必死で構造改革を進めてきた。00年度にグループ全体の売上高の56%を占めたハードウェアの比率だが、03年度(04年3月期)には、38%へと減る見込み。また、経費削減のために、全体の11.2%に当たる457人を今年9月末までに削減した。
血のにじむような改革を推し進めてきたFJBだが、「親会社の富士通との協調関係のなかで、今以上にハード比率を下げる考えはない」(鈴木勲社長)と、ハードウェアの比率を下げるにも限界があるという。FJBでは、IAサーバーなどのハードウェアは、台数ベースでは今年度に前年度比で10%弱伸びる見込みだが、平均単価は前年度比10-15%値下がりした。
構造改革を急ピッチで進めていた01年度、02年度は、「意図的に」(鈴木社長)に儲からないハードウェアのビジネスから手を引いてきた。しかし、今年9月末まで続けてきた早期退職制度を廃止し、構造改革の完了を宣言した今となっては、これまでのような行動を続けるわけにはいかない。直系システムインテグレータとしての存在意義に関わる部分であるだけに、問題は深刻だ。
特に、価格に重点が置かれる官公庁などの入札では、それが顕著に現れる。鈴木社長は、「正当な利益すら認められないほど厳しい入札もある」と不満をあらわにする。
■システム構築とサポートが核に“メーカー系”のジレンマに悩む
NECネクサソリューションズは今年度(04年3月期)、IAサーバーを中心としたハードウェアについて、台数ベースでは前年度並みを維持する見通しだが、金額ではおよそ10%ほど落ち込む見込み。この落ち込みを、アウトソーシングなど付加価値の高い情報サービスで穴埋めしているのが現状だという。
松本秀雄社長は、「NECのソリューション系グループ企業のなかで最大のハードウェアの売り手である当社が、ハードウェアビジネスで苦戦していることについて、内心、忸怩(じくじ)たるものがある」と、苦い表情で話す。
「仮に将来、株式を公開するとしても、同業他社と比較したうえで、経常利益率10%以上を確保しないと、とても株式市場からの評価は得られない。だが、一方でわれわれはハードウェアを販売する使命を担っており、ハードウェア事業の利益率を高めるというハードルをクリアしない限り、全社的な利益率を大幅に高めるのは難しい」(松本社長)と打ち明ける。
同社の今年度(04年3月期)の単体売上高は、前年度比約4%増の1250億円余りを見込む。経常利益は同約10%増の約29億円を見込む。売上構成比の見通しは、プラットフォーム事業(ハードやネットワーク機器など)が5割弱、システム構築などのシステムインテグレーション事業が3割強、アウトソーシング事業が2割弱である。
これに対して、3年後の06年度(07年3月期)の中期経営見通しでは、ハードウェアの販売台数は伸びても金額ではほぼ横ばいか微増にとどまると見ており、売上構成比はプラットフォーム事業で約40%、システムインテグレーション事業で約33%、アウトソーシング事業で約27%を見込む。金額では06年度に売上高1500億円、経常利益70億円が目標だ。
売り上げを伸ばすのは、主にシステムインテグレーション事業とアウトソーシングであり、価格競争の激化が止まらないプラットフォーム事業では、どんなに頑張っても現状維持が精一杯という印象を受ける。
日本IBM系最大手の販売パートナーである日本ビジネスコンピューター(JBCC)は、中期経営目標として3年後の06年度(07年3月期)に、グループ売上高1000億円、経常利益50億円を目指す。だが、JBCCは日本IBMの直系という使命に加えて、グループ会社にはプリンタなどを製造するメーカーもあり、ハードウェアの比率はグループ全体で約5割に達する。
JBCCの石黒和義社長は、「現状の収益構造の延長線上のままでは、中期目標の数字は見えない」と厳しい見方を示す。「目標達成には、システムインテグレーションやサービス事業の拡充に加え、企業買収なども視野に入れる必要があるだろう」と話す。
「2000年問題」特需時に購入した情報システムの買い替え需要など、システムインテグレータ業界全体としては明るい兆しが見える。だが、一方でハードウェアの単価下落は歯止めがかからず、ハードの販売義務を負う直系システムインテグレータは深刻な影響を受ける。市場回復の波に乗り業績を伸ばす目標と、ハードウェアを売る使命のバランスをどのようにとるのかがポイントとなる。
メーカー直系のシステムインテグレータがハード単価の下落に苦しんでいる。今年1年を通じて、IAサーバーの単価は前年比で1割余り下がっており、これが直系システムインテグレータにおける業績伸長の足を引っ張っている。(安藤章司●取材/文)
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