その他
申告ソフトが乱立の様相 初心者向けの新機能争いへ
2004/02/02 15:00
週刊BCN 2004年02月02日vol.1025掲載
まもなく確定申告の受け付けが始まる。これに対応して、昨年末までに業務ソフトウェア各社は一斉に青色申告ソフトの新版をリリースした。2年ほど前から乱立の様相を呈してきた「申告ソフト市場」。今年の“申告商戦”では、各社ともパソコン初心者層を新たなターゲットとして、より簡単に使える機能を盛り込んで差別化を図ることに力を入れている。ソフトバンクBBが、同市場に注目して昨年初めて「青色申告フェア」をパソコン量販店で展開したこともあり、昨年から新規参入したソフト会社も多い。使いやすさやサポート体制、量販店での販売など、各社の戦略を探った。(谷畑良胤●取材/文)
新規参入組が増加
■パソコン初心者なども対象に
潜在需要を掘り起こせ──。2003年1年間の販売本数実績にもとづく「BCN AWARD 2004」の申告ソフト部門で最優秀賞を獲得したジェイシーエヌランド(JCN)は、昨年11月に初心者でも簡単に使えるように機能強化を図った新版ソフト2本と、その2本を合わせた「バンドル版」を発売した。
その1つである「やるぞ!青色申告2004」には、物品名から勘定科目を一発検索できる「勘定科目ナビ」を新搭載。「やるぞ!確定申告2004」も、申告ソフトでは初めて、申告書の入力方法などを音声でサポートする「ボイスナビ」を付けている。「仕訳作業は簿記3級程度の知識が必要。だが、当社の青色申告ソフトは、物品名を入力すると勘定科目が自動的に検索できる」(北山哲也・専務取締役)と、分かりやすさを追求した製品に仕上げたという。
JCNは、複式簿記の知識を持ち青色申告する従来のユーザー層以外にも、パソコン初心者や申告経験のない個人事業主、サラリーマン層などへ新たな販売対象を広げようとしている。
同じように初心者層に切り込もうとしているのが、「青色申告ソフト」というジャンルを最初に確立したソリマチだ。昨年12月に販売を開始した「みんなの青色申告5」は、出納帳の入力手順で簡単に複式簿記による青色申告ができたり、対話形式で仕訳の疑問に答える「仕訳博士5」などの新機能を加えた。
ソリマチの片原範之・営業統轄本部サービスビジネス営業グループシニア・マネージャーは、「経理の経験がない人向けに、白色申告にも対応した。パソコンを持ちながらも申告ソフトを購入したことのない層を狙う」と、同社の上位業務ソフト「会計王5」の購入へ結びつける“入門編”として「みんなの青色申告」を位置づけている。
■市場はまだ開拓の余地あり
昨年2月、申告ソフト市場に新規参入したビーエスエルシステム研究所(BSL)の小野秀幸社長は、「これまで、この市場は複式簿記で申告を行う層に向けたソフトで争っていた。だが、個人事業主の約7割は簡易簿記(単式簿記)で申告している」と分析する。このためBSLは昨年11月、簡易簿記向け専用ソフトとしては2作目で、改定消費税に対応した「青色申告らくだ2004」と、税対応を除いた安価版「かるがる青色申告2004」を出した。BSLは、青色申告決算書を自動的に集計する新機能を搭載するなど、「この約7割の市場に特化し拡販する」(小野社長)と、他社とは一線を画す製品戦略だ。
業務ソフトでトップシェアの弥生は、02年12月に初めて青色申告ソフトを出した。昨年12月には改訂版「やよいの青色申告2」をリリース。「物品名を入力すると、画面の裏で勘定科目に仕訳してくれる入力機能をつけ、簡単に青色申告決算書を作成できる」(西尾英雄・営業本部営業部弥生営業チームマネジャー)と特徴を語る。このソフト購入者には、確定申告ソフトを無償でダウンロード提供しているが、「あくまで事業を行う法人を狙い、サラリーマン層は狙わない」(西尾マネージャー)と、同社の上位業務ソフトユーザーに近い層を掘り起こす考えだ。
今回の申告商戦では、新たな市場として、簡易簿記を扱う層やパソコン初心者を狙う新製品が揃った。
JCNは今回初めて、登録ユーザーの買い替えを当てこんで印刷機能だけを省いた製品CD-ROMを無料配布した。印刷をする際にシリアルナンバーをJCNのウェブサイトから購入する必要があるが、「実際にすべての機能を体験してもらい購入につなげたい」(北山専務)と、パソコン量販店以外での販売に力を入れる。
他社も登録ユーザーや初心者層向けのサポート体制で独自色を出そうと必死だ。青色申告の対象は全国で250-300万社(人)といわれ、確定申告全体では約2000万人という。だが、現実は「1社が10万本売ろうとしたら10年はかかる。市場自体は年間10万本に届かないくらい」(業界首脳)の未開拓市場でもある。これは逆にみれば、戦略次第ではまだまだ開拓の余地は大きいということだ。
まもなく確定申告の受け付けが始まる。これに対応して、昨年末までに業務ソフトウェア各社は一斉に青色申告ソフトの新版をリリースした。2年ほど前から乱立の様相を呈してきた「申告ソフト市場」。今年の“申告商戦”では、各社ともパソコン初心者層を新たなターゲットとして、より簡単に使える機能を盛り込んで差別化を図ることに力を入れている。ソフトバンクBBが、同市場に注目して昨年初めて「青色申告フェア」をパソコン量販店で展開したこともあり、昨年から新規参入したソフト会社も多い。使いやすさやサポート体制、量販店での販売など、各社の戦略を探った。(谷畑良胤●取材/文)
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