その他
広がるIP電話市場 基幹業務システムに取り込め!
2004/02/16 15:00
週刊BCN 2004年02月16日vol.1027掲載
IP電話需要の拡大がシステムインテグレータを変えるかもしれない。企業が通信コスト削減のためにIP電話を導入するケースが増えている。しかし、システムインテグレータにとっては、IP電話のインテグレーションだけでは「ビジネスとして旨みはない」という。とはいえ、IP電話システムをきっかけにして、大規模なシステム構築へ顧客を引き寄せるためのトリガーになる可能性もある。そのIP電話をどのように基幹業務システムの中に取り込んでいくのか、ネットワークとコンピュータ双方の高度な技術力が求められている。
インテグレータの技術力向上必要
「国内IP電話サービス市場は、2007年には02年の約230倍にあたる7200億円規模に急成長する」(IDCジャパン)。「国内でIP電話システムを導入する法人数は、07年には02年の約2倍の2万法人を突破する」(矢野経済研究所)。各調査会社のIP電話関連の需要予測をみると、揃って市場が急拡大する見通しを立てている。特に通信コスト削減を狙いに、法人需要の拡大が見込まれる。
だが、企業の情報システムを構築するシステムインテグレータ各社には、案件増加の予測を単純に喜ぶ様子はみえない。IP電話機やIP-PBX(構内電子交換機)のシステム導入案件だけでは「大きな利益にはならない」という意見で一致する。IP電話システムの構築はネットワーク構築事業の1つに過ぎない。ハードウェアの単価も下がっているだけに、市場が急速に拡大しても利益には大きく貢献しないというわけだ。
大塚商会の高井良英・企業通信システム営業部販売1課課長は、「IP電話システム構築で浮いたユーザーの費用をどうやって他のシステム案件に結び付けていくかがポイント。(IP電話は)あくまでユーザーに入り込むきっかけに過ぎない」と話す。
4月からIP電話構築サービスをスタートさせる日本事務器(NJC)では、「電話がIP化されれば、ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客情報管理)と連携するシステムの提案ができる。コンピュータとネットワークを融合させる格好の商材がIP電話。顧客のBPR(業務改革)にまで踏み込み、大規模なシステム構築案件につなげることができる」(田中啓一常務取締役)と、IP電話事業が社内情報システムの大改革に発展する可能性を否定しない。
NJCは、IP電話構築サービス開始に向けて、昨年1月からIP電話事業準備室を設けて本格的な準備に着手。約2億8000万円の投資と1年3か月もの時間をかけて提供体制を整えた。その背景には、需要急拡大の市場環境に単純に目をつけただけではなく、「もともとコンピュータシステムの構築事業が主体で、ネットワークのインテグレーションは弱かった。しかし、IP電話がネットワークとコンピュータの境目を取り払うのは確実。IP電話を含めたネットワーク構築も強くならなければ、コア事業であるERPなどの業務アプリケーション事業でも生き残れない」(田中常務)との判断がある。
大塚商会の世間瀬秀行・マーケティング本部ブロードバンド販売推進部シニアコンサルタントも、「IP電話で儲けるためには、コンピュータとネットワーク双方の知識が必要。高度なコンサルティング能力も大事。簡単に扱える商材ではない」と、技術レベルの低いインテグレータでは太刀打ちできない特別な分野だとする。
PBXを中心に通信機器関連商社として成長してきたサンテレホンでも、IP電話のニーズに対応するために必死だ。今年1月には、本格的にIP-PBXを中心としたIP電話関連の専門部署を設置した。佐藤秀和・情報通信部本社営業部営業八課課長は、「IP-PBXの需要が急拡大しているなかで、これまでの商材や技術レベルでは対応できない部分もある。パートナーも含めスキルアップを図っていかなければならない」とバックヤードでのスキルアップを急いでいる。
「コンピュータとネットワークの両方の技術を持たなければシステム構築案件を受注することができない時代がもう目の前にきている」(NECの津田芳明執行役員常務)。IP電話がコンピュータとネットワークの融合を実現する商材だとすれば、それをキャッチアップできないITベンダーに生き残りの途はないと言えるだろう。
IP電話需要の拡大がシステムインテグレータを変えるかもしれない。企業が通信コスト削減のためにIP電話を導入するケースが増えている。しかし、システムインテグレータにとっては、IP電話のインテグレーションだけでは「ビジネスとして旨みはない」という。とはいえ、IP電話システムをきっかけにして、大規模なシステム構築へ顧客を引き寄せるためのトリガーになる可能性もある。そのIP電話をどのように基幹業務システムの中に取り込んでいくのか、ネットワークとコンピュータ双方の高度な技術力が求められている。
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