インクジェットプリンタの2004年冬商戦が始まる。プリンタメーカー各社は新製品を10月上旬から順次発売。セイコーエプソンとキヤノンの2強が冬商戦で販売台数シェア50%以上と強気の姿勢を崩していない。個人向けプリンタは、年賀状などハガキを作成するためにプリンタを購入したユーザーが多く、こうした需要の買い替えを促すことが急務。各社とも、家庭でのデジカメ写真出力を積極的に訴えていくことで、何としてでも販売増につなげる意向だ。(佐相彰彦●取材/文)
ホームフォトプリント促進で販売増なるか
■2強ともに50%以上のシェア目標、トップ争いに拍車がかかる インクジェットプリンタの新製品が各プリンタメーカーから10月上旬以降順次発売となり、冬商戦が幕を開ける。プリンタ市場でトップシェア争いを繰り広げているセイコーエプソンとキヤノンは、両社ともに冬商戦で販売台数シェア50%以上と、お互いに一歩も譲らない2強激突の目標を掲げている。
セイコーエプソンでは、「今年度(05年3月期)上半期のインクジェットプリンタ市場は、前年同期比10%減と低迷した。冬商戦で市場を前年同期以上に拡大させる」(エプソン販売の真道昌良社長)として、同社のシェアアップが市場拡大につながると訴える。キヤノンは夏商戦を終えた時点で、「トップシェアを維持している」(キヤノン販売の村瀬治男社長)と強調。「冬商戦でもシェアを伸ばし、7年ぶりに年間トップシェアを狙う」と意欲を見せる。
両社の冬商戦向け製品ラインアップ数は、セイコーエプソンが14機種、キヤノンが12機種。セイコーエプソンの草間三郎社長は、「過去に類を見ないラインアップ数で勝負する。何としてでも国内シェアを確保する」と、ラインアップの拡大で数量を稼ぎ、上期の落ち込みを取り戻す。一方のキヤノンは、昨年の冬商戦と比べ5機種増やしたことになり、「デジタルフォト分野でナンバーワンを目指す」(キヤノンの清水勝一・取締役インクジェット事業本部長)体制を敷いた。
複合機市場でセイコーエプソンやキヤノンの2強に引けをとらないシェアを確保している日本ヒューレット・パッカード(日本HP)も一層のシェア拡大を狙う。「複合機市場で30%台のシェアをキープし、インクジェットプリンタ全体で20%弱を獲得する」(前田悦也・イメージング・プリンティング事業統括マーケティング本部長)と鼻息が荒い。
■販売増を達成するポイントは、ダイレクトプリンタと複合機 各社がインクジェットプリンタの拡販でポイントを置いているのは、家庭でのデジタル写真の出力のニーズに応え、機能をアップしていくことだ。
セイコーエプソンでは、今年春にダイレクトフォトプリント専用のコンパクトプリンタ「カラリオミー」を投入したことで、「パソコンを介さずに写真が手軽に出力できることを訴えていけば、主婦層など新規ユーザーを開拓できることが分かった」(セイコーエプソンの草間社長)とし、「冬商戦でもダイレクトフォトに拍車をかける」(同)という方針に沿った製品を揃えた。新製品では、画像の確認と印刷の設定が行えるプレビューモニタを標準搭載したダイレクトプリンタ「PM-D770」を発売する。特徴は、操作パネルでプリントしたい画像と枚数を選択できる「印刷開始」ボタンの搭載だ。
キヤノンでは、全機種に高密度ヘッド技術「FINE(フルフォトグラフィー・インクジェット・ノズル・エンジニアリング)」による高速・高画質プリントを採用したほか、11機種にダイレクトプリントの業界標準規格「ピクトブリッジ」を搭載した。「銀塩カメラをはじめ、デジタルカメラで撮影した写真のプリントを写真店などに依頼するユーザーを取り込む」(キヤノン販売の村瀬社長)ことで拡販を目指す。
また、各社とも複合機の拡販も引き続き力を入れるテーマ。セイコーエプソンは、「複合機市場は、夏商戦の時点で個人向けプリンタ全体の30%近くまで達している。これが年末には45%まで伸びるだろう」(エプソン販売の真道社長)とみており、昨年1機種だった複合機のラインアップを3機種に増やした。
日本HPでも、「買い替えユーザーはプリンタに付加価値を求めており、複合機を購入する傾向にある。複合機の販売に専念する」(前田本部長)と複合機中心の事業展開を継続する。
インクジェットプリンタ市場は、すでに成熟傾向にあるといわれている。ユーザーの多くは、年賀状の作成を主目的に購入しているのも事実で、こうしたユーザーに対して買い替えを促していくことが販売増のカギ。デジタルカメラやカメラ付き携帯電話、デジタルビデオカメラなどの普及が進み、簡単な画像印刷を切り口にしていくことが需要の掘り起こしにつながる、というのが各社の見解だ。複合機に関しては、付加価値を高め、年賀状シーズン以外でも活用するメリットを見い出せれば、ユーザーは買い替えるようになるだろう。
機能面では、高画質の写真を美しく印刷できることや、簡単操作を徹底したことが冬商戦のトレンド。あとは、需要が集中する年末に向け、店頭プロモーションなどでユーザーの買い替え意欲を刺激できるかどうかが勝負になってくる。
 | パソコンショップ、複合機に期待 | | | パソコン専門店や家電量販店の多くが冬商戦での売上増への期待の1つに複合機を挙げている。「画質が単機能プリンタと遜色なくなってきており、ユーザーは、1台でプリンタをはじめ、スキャナやコピー、ファクスとして使えることに利便性を感じている」と見ている。 あるショップでは、「単機能プリンタは低価格製品が売れ筋になっており、利益確保が難しい」という。そのためにも複合機に寄せる期待は大きく、各プリンタメーカーが複合機に力を入れるのもうなづける。 BCNランキングによれば、今年8月における複合機の販売は、台数ベースで前年同月比28%増、金額ベースで同15%増と好調。同月のメーカー別でみると、セイコーエプソンが台数で同94%増、金額で同129%増と台数・金額ともに増加した。日本HPは、台数で同11%増とアップしたものの、金額で同8%減。キヤノンは、台数で同1%増と若干増加し、金額で同25%減と落ち込んでいる。 | |