国内のサプライチェーンマネジメント(SCM)で電子タグの実用化がますます現実味を帯びてきた。家電業界では、昨年実施したUHF帯を使った電子タグの実証実験の結果を踏まえ、メーカー各社が集まって2004年度(04年4月-05年3月)中にSCMにおける電子タグ活用の業界標準を構築し、来年度早々に実稼働に入ろうとしている。総務省がUHF帯の無線免許交付について、05年春に規制緩和の方向を示しているためで、加えて、国際的にはISO(国際標準化機構)とEPCグローバルが互いに推進しているUHF帯の通信プロトコルの統一化を図ることや、経済産業省がISOにコード体系統一化案を申請したなどの動きがあることが要因だ。
UHF帯が最有力

家電業界では、部品メーカーから物流、家電セットメーカー、物流、小売、消費者、回収、リサイクルに至るまでの商品経路で電子タグが活用できるような体制を整えた。家電製品協会が主体となり、各メーカーが家電製品のライフサイクルで電子タグが有効に活用されるためのビジョンを検討しており、今年度中に業界標準のビジョンを策定する。そのビジョンをベースとして、来年度以降に各企業が新しいSCM構築に乗り出すことになる。
これまで、完成品である家電機器のSCMだけが対象だったが、部品のSCMを含めた統合的なSCMの実現に向け、今年度から電子情報技術産業協会(JEITA)の中で電子部品情報システムを運営する「ECセンター」も電子タグ活用に向けた活動に参画している。
さまざまな実証実験にアドバイザーなどで参加している東芝社会ネットワークインフラ社の宮下正・システムコンポーネンツ事業部システムコンポーネンツ企画部企画・業務担当参事は、「電子タグのプロジェクトが業界あげての取り組みになった」と実用化に向けて、足並みが揃ってきたとしている。
SCMで活用する電子タグはUHF帯になる可能性が高い。家電業界が昨年度末に実施した実証実験では、物流で100%に近い読取率、棚卸作業で電子タグが裏側に貼付されていても読み取れることが判明した。また、店頭に設置した1.6メートル幅の防犯ゲートを「小走り」に相当する時速8キロメートルで通過しても防犯ブザーが作動した。
現在、国内でUHF帯での電子タグによるSCMが普及していないのは、総務省が電子タグの使用に不可欠な無線免許を交付していないため。国内では、UHF帯が携帯電話に割り当てるためだけの帯域になっており、そのほかでは無線免許を取得できない制度になっている。しかし、家電業界を含め各業界が実施した実証実験の成果を精査し、総務省では来年春をめどに規制緩和を計画しているという。
また、国際的な動きではISOとEPCグローバルで、UHF帯における通信プロトコルの統一化を図る動きが進んでいる。来年春には、国際標準の規格が決定する予定だ。電子タグ用の商品コードに関しては、経産省がコード体系の統一化案をISOに提案しており、こちらも来年春にISO標準として確定する見込みになっている。
経産省では、「国際標準化と価格低減の2点に課題を絞り込み、戦略的に電子タグ関連の政策を進める。今後も最大限のバックアップを図っていきたい」(山崎剛・商務情報政策局情報経済課係長)意向。今後は、電子タグをベースとした新しいビジネスモデルの構築が活発化することになるだろう。