その他
富士通、米シスコシステムズと提携 日立とNECの共同出資会社も始動
2004/12/13 15:00
週刊BCN 2004年12月13日vol.1068掲載
富士通(黒川博昭社長)はこのほど、基幹系ルータ・スイッチ分野で米シスコシステムズ(ジョン・チェンバーズ社長兼CEO)との提携を発表した。日立製作所(庄山悦彦社長)とNEC(金杉明信社長)が同分野の事業強化を狙いに、共同出資で設立したアラクサラネットワークス(和田宏行社長)も10月1日から事業を開始している。基幹系ルータやスイッチで出遅れていた国内大手通信機器ベンダーが、事業の存続、拡大に乗り出し、「富士通・シスコシステムズ」vs「アラクサラネットワークス」の競争が出現する。テーマは、基幹系ルータ・スイッチのユーザーとなる通信事業者に向けた「品質」の向上だ。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
基幹系ルータ・スイッチ市場で競争激化
■来年春には第1弾製品発売
富士通とシスコシステムズの提携は、シスコのハイエンドルータ向けOS「IOS-XR」の開発に富士通が加わり、共同開発するとともに、それを搭載した機器については「Fujitsu-Cisco」ブランドで富士通が国内の通信事業者向けに販売する。第1弾の製品を来年の春には投入する予定だ。
シスコのチェンバーズ社長兼CEOは、「日本はブロードバンドの普及が進んでいる。その市場で事業拡大を図るために、日本企業である富士通との提携を選択した。シスコにとってこのような提携は初めてだ」と語る。
ブロードバンドの普及が早い日本で、基幹系ルータやスイッチの需要は拡大する。シスコは、富士通との提携により「品質の向上」を重視していることを挙げる。シスコは日本に品質センターを置き、クオリティの維持・向上を図ってきた。しかし、大手の通信事業者は、通信をストップさせないために常に高い品質レベルを要求してくる。大手通信事業者をターゲットとし、確実に受注するためにも、技術的にも人間関係でも富士通のノウハウを注ぎ込む考えだ。
米シスコのマイク・ボルピ上級副社長兼ルーティングテクノロジーグループジェネラルマネージャは、「富士通との提携で3つのタスクフォースを設ける。共同品質チーム、製品企画を行うプログラムオフィス、そして共同開発チームの3つだ」とし、日本の通信事業者や企業ユーザーに向けて品質重視を真っ先に挙げた。
通信事業者向けに高い品質レベルを達成していくことは、アラクサラネットワークスも同様だ。安定した通信品質を保証するために、同社が掲げたのは「ギャランティードネットワーク実現のためのギャランティードプロダクト」(和田アラクサラネットワークス社長)。
和田社長は、日立とNECが合弁事業を選択した背景に、「日本の通信機器大手は、LANが社内だけでなく広く通信インフラとなることに気がつかなかった。日立もNECもその他企業も完全に出遅れた」と語る。シスコやジュニパーネットワークスが台頭してくるなか、「失われた10年」の中でもがいていたという。
■経産省、約23億円の予算盛り込む
その復権をかけて、日立とNECが共同事業化して開発スタッフを集中し、基幹系ルータ・スイッチでの失地回復を図る。「ギャランティードプロダクト」という自負も、両親会社がこれまで通信事業者向けに機器を供給してきたという「技術と品質の高さ」という裏づけに支えられているからだ。
経済産業省は、2004年度予算に「次世代高速通信機器開発プロジェクト」として23億3000万円の予算を盛り込んだ。この受け皿となるのがアラクサラネットワークスだ。ブロードバンドネットワークが普及しながらも、シスコをはじめとした海外勢が占める市場で、日本企業の活力アップを支援する政策で、業界関係者の一部では「シスコつぶし」と言われた。政府予算を導入することで、「国策会社と言われれば、そういう面もある」と和田社長も認めざるを得ない。
シスコ日本法人の黒澤保樹社長は、「(提携発表前に)パートナー企業には富士通との提携を話してある。品質が向上することは結構なこと、という評価だ」と語り、パートナーの中には富士通と競合する企業もあるが、「性能、品質が高い機器をパートナーも求めている。それが富士通のブランドであってもかまわない。企業のブランドでの枠組みや系列というのは過去の話だ」と、富士通のノウハウも得ることがシスコにも確実にプラスになるとする。
基幹系ルータで日本企業のシェアを高めようと手を組んだ日立とNEC。そして圧倒的な世界シェアを持つシスコとの提携を選択した富士通。ブロードバンドネットワークの普及で、この2グループの鍔迫り合いが本格化することになる。
富士通(黒川博昭社長)はこのほど、基幹系ルータ・スイッチ分野で米シスコシステムズ(ジョン・チェンバーズ社長兼CEO)との提携を発表した。日立製作所(庄山悦彦社長)とNEC(金杉明信社長)が同分野の事業強化を狙いに、共同出資で設立したアラクサラネットワークス(和田宏行社長)も10月1日から事業を開始している。基幹系ルータやスイッチで出遅れていた国内大手通信機器ベンダーが、事業の存続、拡大に乗り出し、「富士通・シスコシステムズ」vs「アラクサラネットワークス」の競争が出現する。テーマは、基幹系ルータ・スイッチのユーザーとなる通信事業者に向けた「品質」の向上だ。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
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