その他
企業向けIP電話 2005“普及元年”に
2005/01/03 15:00
週刊BCN 2005年01月03日vol.1070掲載
回復してきたIT投資。だが、顧客からの低価格化要求は依然厳しく、価格競争に左右されない高付加価値商品・サービスの提供が2005年も重点テーマとなる。その筆頭ソリューションとしてこれまで注目を集めながらも、まだまだ潜在需要が眠るとされる企業向けIP電話を今年、「普及元年」と位置付けるITベンダーは多い。ビジネス拡大のカギは、単なる電話のIP化にとどまらず、ネットワークの再構築や情報システムの拡充にまで踏み込めるかどうか──。各社の腕の見せ所でもある。今年はIP電話関連ソリューション需要の奪い合いが本格化するとともに、独自提案力の優劣がビジネスを大きく左右しそうだ。
情報システム再構築のチャンス
総務省の調べによると、03年末時点で、全社または部門でIP電話を導入した企業はわずか11.1%。だが、「導入していないが予定はある」との回答は42.7%にも膨れ上がる。低コストを謳い文句に、ここ数年IP電話のメリットが叫ばれてきたが、実際に導入に至ったケースはまだ少ないのが実態だ。それだけに今年、IP電話サービスと付随するソリューションを重点ビジネス分野に据えるITベンダーは多い。
日立製作所は昨年12月、情報と通信の融合ソリューション「コミュニマックス」のメニューを拡充し、本格的に売り込むラインアップを揃えた。林雅博・執行役システムソリューション部門CEOは、「IP電話の導入率はまだ1割程度。潜在需要は大きいだけに、攻略しない手はない」と語る。
NECの津田芳明・執行役員常務も、「IP電話は、これまでは一般家庭向けが中心だった。だが、今後は企業向けに本格的に普及すると捉えている。今年は企業向けが一般家庭向けを超える勢いで普及する」との見方を示す。情報と通信の融合ソリューション「ユニバージュ」関連で、06年度(07年3月期)には売り上げ3000億円を見込む。
ネットワーク構築に強い日本コムシスの島田博文社長も、「電話のIP化に伴う関連ビジネスは、今後の中核」と捉え、特定のスキルを備えたIP関連技術者の数を昨年度(04年3月期)末実績に対し、今年度末までに2倍に増やす計画を打ち出し、育成を急いでいる。
ITシステムで情報と通信の垣根がなくなりつつあるなか、IP電話はまさに情報と通信を結ぶ格好の製品・サービス。引き合いも強いだけに、ベンダー側の意欲は高まるばかりだ。
その一方で、単なる電話のIP化だけではビジネスメリットは少ないとの見方も強い。IP電話サービスは、IP-PBX(IPを用いた構内交換機)のアウトソーシングサービス「IPセントレックス」が軸となるが、それだけでは「差別化要素がなく、価格競争に巻き込まれる」と、NJCネットコミュニケーションズの田中啓一社長は警戒感を示す。
NECの津田常務は、「電話のIP化だけを提案する時代は終わった。電話のIP化に伴う付加価値が差別化ポイントになる」と説明。大塚商会の大塚裕司社長は、「ファクシミリなどの通信料金が定額化でき、無駄なコストを減らせることを訴え、浮いた費用で次のITインフラ投資に結びつける提案を行っている」と語る。
富士通ビジネスシステム(FJB)の鈴木勲社長も同様に、「〝電話代が安くなります〟というコストメリットの訴求がこれまで大半だった。だが、それではベンダーとしてビジネスメリットは薄い。これからは、業務アプリケーションと連携させることで発生するシステムの拡充提案が、ビジネスを拡大するうえで重要であり、他社との差別化になる」と強調する。
すでにグループウェアとIP電話システムを連携させ、ブラウザから電話をかける機能を付加したり、グループウェアに登録しているスケジュール情報と連動して、電話の転送先を変更するといった付加機能を持つソリューションが続々とメニュー化されている。
また、第3世代携帯電話と無線LANシステムを組み合わせ、社内ではIP網を使ったIP電話、社外では携帯電話として利用するソリューションも登場。ITリテラシーの高い顧客からは、「業務アプリケーションとの連携で新たなコミュニケーションシステムを作って欲しいとの要望も出ている」(FJBの鈴木社長)という。
電話のIP化による通信トラフィック量の増加に備えたネットワークの効率化・再構築、業務アプリケーションとの連携による情報システムの再構築案件に結び付けることができるかが、IP電話関連ビジネスの今後の焦点となる。また、「IP電話は全く新しい概念なので、中堅・中小企業(SMB)には浸透しにくい」(NECネクサソリューションズの松本秀雄社長)といった点をいかに克服するかもカギとなる。
関心の高さだけが目立ち、実際の導入にはあまり至っていないIP電話。これをどう実需に結びつけ高付加価値ビジネスに育てるか。IP電話の「普及元年」となりそうな今年、各社のIP電話関連ビジネスの行方にも差が出てきそうだ。
回復してきたIT投資。だが、顧客からの低価格化要求は依然厳しく、価格競争に左右されない高付加価値商品・サービスの提供が2005年も重点テーマとなる。その筆頭ソリューションとしてこれまで注目を集めながらも、まだまだ潜在需要が眠るとされる企業向けIP電話を今年、「普及元年」と位置付けるITベンダーは多い。ビジネス拡大のカギは、単なる電話のIP化にとどまらず、ネットワークの再構築や情報システムの拡充にまで踏み込めるかどうか──。各社の腕の見せ所でもある。今年はIP電話関連ソリューション需要の奪い合いが本格化するとともに、独自提案力の優劣がビジネスを大きく左右しそうだ。
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…