岐阜県大垣市にあるソフトウェア産業の集積地「ソフトピアジャパン」。首都圏に人材が偏りがちな状況下、岐阜県を中心としたITベンチャーの育成と支援に力を注ぐ。IT産業のなかでも一層盛り上がりを見せる情報セキュリティ分野に、ソフトピアジャパンも注目している。ソフトピアジャパンが新たに始めたイベント「リサーチパークDAY」でも、今回はセキュリティ分野にスポットを当てビジネスの可能性をアピール。“ソフトピアジャパン発”のユニークなセキュリティ製品・サービスも続々と登場している。(木村剛士●取材/文)

ベンチャー企業育成を強調
■展示・商談会に82企業・団体が参加 ソフトピアジャパンは昨年11月下旬、IT製品・サービスの展示および商談イベント「マルチメディア&VRメッセぎふ2004」を開催した。
参加企業にはNECや富士通、日立製作所などの大手ITベンダーが名を連ねたが、大半はソフトピアジャパンの会員企業をはじめとした地元企業。ソフトピアジャパンの敷地内に立つセンタービルを主な展示会場として、合計82企業・団体が参加した。
ソリューションエリアやネットワークエリア、ソフトピアベンチャーエリアなど、11の分野に分かれて各社の製品・サービス内容を展示。「エンドユーザーに自社の製品をアピールするだけでなく、出展企業同士がコミュニケーションを図り、新たなビジネスチャンスを探る場としても機能している。特に地元のITベンチャーにとっては、大手ITベンダーの担当者とビジネスの話ができる格好の場」(ソフトピアジャパン担当者)という。
「マルチメディア&VRメッセぎふ2004」のテーマは、「進化するITビジネスと情報セキュリティ」。情報漏えい事件・事故の頻発や、今年4月に「個人情報保護法」施行が迫っている状況とあって、セキュリティに対する関心はやはり高い。11分野のなかでも、情報セキュリティエリアに出展する企業は最も多い18企業だった。
ソフトピアジャパンでは、同時開催イベントとして、「リサーチパークDAY2004」を開催。「情報セキュリティを生かす」をテーマに、情報セキュリティ対策の強化がもたらす新たな社会とビジネスについて、ソフトピアジャパンの会員企業など4社のセキュリティベンチャーのトップが登場し、セキュリティ市場の状況と自社製品・サービスの強みをアピールした。
■“岐阜発”でビジネスチャンス生かす
モデレーターを務めたソフトピアジャパンの丹羽義典CIOは、「情報セキュリティの確保はIT産業の中で最も期待できる。首都圏だけでなく、各地域のソフトベンダーからも優秀なソフトが開発されており、大きなビジネスチャンスを迎えている」と述べ、講演を行う4社の強みと優位性を話した。
また、セキュリティ対策についてサイバーソリューションズのキニ・グレン・マンスフィールド社長が講演した。同社は、容易な設定で社内のイントラネットを監視できるIDS(不正侵入検知システム)を開発したセキュリティベンダー。セキュリティ対策は、顧客の規模を問わず必要なことに着目し、中小企業でも扱えるように複雑な知識を必要としないアプライアンス型IDSの販売事業をメインとしている。マンスフィールド社長は、「企業内システムから情報の持ち出しが横行している。最も監視しなければならないのは社内のイントラネット」とIDSの必要性を強調する。同社は、97年設立のITベンチャーだが、「中小企業にも扱いやすいIDS」というニッチな市場で、存在感を示している。
一方、コンサルティングやセキュリティ人材育成事業など、幅広いサービス事業を手がけるエスアイディーシーのユニークな事業の1つが、セキュリティ情報の配信サービス。
■中小企業への浸透はこれから
同サービスは、セキュリティベンダーが配信する膨大な情報の分かりにくさに目を着け、ベンダーから発信される情報を分かりやすく編集して提供する。そのほかにもセキュリティ対策方法やセキュリティ管理者のスキルアップのための情報提供などを加えている。里吉昌博・エスアイディーシー社長は、「情報を得るだけでなく、企業のセキュリティ対策とスキル向上に役立つ情報提供」が評判を得ていると強調していた。
情報セキュリティの必要性が叫ばれて久しいが、対策を講じているのは大企業が中心で、中小企業まではなかなか浸透しないのが実情。セキュリティに“完全”はなく、ニーズは多様化し、さまざまな製品・サービスの創出が見込める。
外資系や大手ソフト開発会社が市場を牛耳るソフト産業のなかで、セキュリティはソフト開発ベンチャーが活躍できる場が多い。IT産業の育成拠点としてベンチャー企業育成に力を入れているソフトピアジャパンも、セキュリティ分野での起業に期待している様子だった。