地方のソフト開発会社活用
「品質、価格の面でメリットあり」の声
ソフトの開発コスト削減を狙いに、地方のソフト開発会社を外注先として活用する動きが目立ってきた。大手や中堅のITベンダーは、コスト削減施策の筆頭としてオフショア開発を始めたが、開発文化の違いから再開発などの余分な費用が発生し、「思うようにコスト削減できない」という声も少なくない。オフショア開発に代わり、首都圏よりも技術者単価の安い地方のソフト開発会社に目を着けているITベンダーが増えている。「日本の商習慣や開発文化を熟知している地方の開発会社の方が中国やインドなど海外のソフト開発会社よりも使いやすい」という本音が聞かれ始めた。(木村剛士●取材/文)
■開発文化や商習慣が違う海外、無視できない通信費や出張費 「地方のソフト開発会社の現状を知りたい」──。ある中堅システムインテグレータの事業企画部長は、切実にこう話す。
この企業は、開発コストの削減を目的に、約5年前に中国に拠点を設けてオフショア開発を始めた。しかし、「開発文化や商習慣の違いから、スムーズに開発できず、再開発などの余分なコストがかかっている。通信費や出張費も軽視できる金額ではない」と問題が続出。「日本の開発者よりも安価な中国技術者を活用しているにも関わらず、思うようにコストが削減できていない」と嘆く。
顧客からの低価格要求は依然強く、システムインテグレータやソフト開発会社にとって、ソフト開発コストの低減は最大の課題だ。大手や中堅のシステムインテグレータとソフト開発会社は、その解決策としてオフショア開発を始めた。中国の開発者1人あたりの人月単価は、日本の開発者に比べ約3分の1が相場。
だが、ノウハウ不足から再開発など想定外のコストが発生するなど、当初予測していた数字よりもコストがかかることが多い。また、日本語に精通した「ブリッジSE」の単価は1人月100万円とも言われており、日本の技術者を使うよりもコスト高になるケースもある。
富士通システムソリューションズ(Fsol)もオフショア開発を活用するが、「始めた時は、なかなかオフショア開発のコストメリットを享受できず、1-2年は我慢した」(秦聖五社長)という。
そこで、中国やインドのソフト開発会社ではなく、首都圏のソフト開発会社よりも開発者の人月単価が安い地方のソフト開発会社に目を向け始める企業が増えている。特に中堅のシステムインテグレータやソフト開発会社は、外注先としてオフショア開発だけでなく、地方のソフト開発会社も活用していこうとしており、そのための調査や地方のソフト開発会社とのパイプ作りを模索している。
■開発者単価は20-30万円「引き合いは昨年から急増」 中堅システムインテグレータのアイエックス・ナレッジ(IKI、安藤文男社長)は昨年9月、北海道と首都圏で事業展開する北洋情報システム(HIS)と提携した。IKIの札幌センターをHISに移管するとともに、IKIが9月末までにHISに20%資本参加した。
この提携の目的について安藤社長は、「地方のソフト開発スキルは低くない。オフショア開発は言葉の問題や品質の問題がつきまとうが、地方のソフト会社を活用することでその問題も解消され、開発コストを抑えて品質も高めることができる」と話している。
IKIは北海道から九州まで6か所の地方開発センターを有していた。このうち札幌センターはHISに移管されたが、地方拠点については同様の展開を進める考えも持っているようだ。「地方のシステムインテグレータと提携することで、首都圏のビジネスを委託することもできる」(安藤社長)と、IKIだけでなく提携先にもメリットが大きいと主張する。
実際、「地方のソフト開発会社への引き合いは昨年から急増している」と話すのは、日本情報技術取引所(JIET)の二上秀明理事長。JIETは大手ITベンダーからソフト開発案件を集め、その開発案件を中小のソフト開発企業に紹介しており、会員企業は1000社以上に達する。扱う案件数は、「常時2000件を超える」(二上理事長)としており、地方のソフト開発会社を活用する機運は高まっている。
二上理事長は、「東京のソフト開発会社より地方のソフト会社は平均で20-30万円程度、開発者の単価が低い。中国よりも若干高いが、再開発や出張費などのオフショア開発特有のコストを加えれば、中国と地方のソフト開発会社は変わらない」と強調する。加えて、「中国人向けの仕様書作成などの手間が省けることを考えれば、地方のソフト開発会社を使う方がメリットはある」。日本特有の開発文化のなかで、地方のソフト企業を使うことは無用なトラブルを回避することにもなる。
ある地方のシステムインテグレータの首脳は、「首都圏のソフト開発会社からの委託が増えている。東京からUターン希望で地元出身のシステムエンジニア(SE)を採用したものの、東京の大手の開発プロジェクトに参加するため、再び上京してもらった。そういうケースは少なくない」という。
オフショア開発によるコスト削減が予想以上に進まないなか、新たな外注先として浮上してきた地方のソフト開発会社。「オフショア開発よりも地方のソフト開発会社を使う方が品質、価格の面でメリットはある」と活用を検討し始めた企業が徐々に増えつつある。
 | 依然変わらない首都圏への案件集中 | | | | | 経済産業省の調べによると、2004年のソフト産業の都道府県別売上高でトップは東京で、約8兆1460億円。次いで神奈川(約1兆8000億円)、大阪(約9440億円)と続く。東京と神奈川の売上高を足すと、国内売上高の約70%にもおよぶ。首都圏にソフト開発案件が、集中している状況は依然変わっていない。 オフショア開発の代わりに、地方のソフト開発会社を活用する動きが |  | 高まれば、東京に開発案件が集まっていることで、「地方のソフト開発会社が育たない」という慢性的な日本のソフト産業の課題を解決することにもつながる。 ただ、地方のソフト開発会社によれば、「東京から来る開発案件のレベルについていくのが大変」との声もあり、地方のソフト開発にとっては、人材教育の強化や、優秀な人材の確保がさらに求められるようになる。 | | |