ソフトバンクBB(孫正義社長)は、サーバーから、さまざまなアプリケーションを必要に応じてネットワークで配信する米ソフトリシティ(ハリー・ルーダCEO)のソフト「ソフトグリッド・プラットフォーム(ソフトグリッド)」を“武器”にソリューション販売を軌道に乗せようとしている。
「ソフトグリッド」と「メタフレーム」とは相乗り
■IT運用・管理時間を3分の1に 国内でのソフトグリッドソフトの知名度はゼロに等しいが、同社がこの製品にかける期待はきわめて高い。
サーバー側にあるアプリケーションをクライアントパソコン(クライアントPC)で利用するシステムとしては、シトリックス・システムズの「メタフレーム」やマイクロソフトの「ターミナルサービス」が国内にはある。
こうした先行製品とソフトグリッドの違いはどこにあるのか。
簡単に説明すると、メタフレームなどがサーバー側でアプリケーションを実行した画面情報だけをクライアントPCに配信するのに対し、ソフトグリッドはアプリケーションのプログラムコードをクライアントPCに配信し、クライアントPC側でアプリケーションを実行する。これにより、サーバー側の負担を軽減させているのが大きな相違点である。
このため、ソフトグリッドの場合は、100%キャッシュした場合、サーバー側との通信が切断してもクライアントPCでアプリケーションを稼動できるのも特徴の1つとなる。
ソフトグリッドは、1台のサーバーに複数のクライアント端末がネットワークを通じ同時接続と処理を行える「ターミナルサーバー」上にもアプリケーションを配信できる。この点、メタフレームなどと競合しそうだが、「ユーザーの利用ニーズにより、使い分けや連携ができる」(片山弘一・流通事業統括BBソリューション推進部部長)として、競合する場面は少ないという。
その理由は、「クライアントPC側にデータを置き、ローカル上でアプリケーションを実行したい場合はソフトグリッドが適している。一方、データなどをクライアントPC上に置きたくない場合はメタフレームで配信すればよい。状況に応じて、両ソフトを連携させることで相乗効果を発揮できる」(片山部長)と説明している。
事実、米ソフトリシティは、米シトリックス・システムズと戦略的なパートナー関係にあり、サーバー・ベースド・コンピューティング市場を共同で開拓している。
ソフトグリッドの導入企業は、米国を中心に欧州12か国で大企業200社以上におよぶ。また、SAPやオラクル、シーベル、アドビシステムズ、マイクロソフトなど、海外の主要な業務ソフトについては動作確認を終えている。このため、さほど手を加えず、既存のシステム環境で導入できるメリットがある。
ソフトバンクBBによると、10個のアプリケーションを1000台のクライアントPCで利用した場合の事例として、IT運用・管理にかかる時間を従来の3分の1に削減できたという。 「クライアントPCの台数が多いほど、その効果は大きい」(片山部長)。
ソフトグリッドはサーバーと20クライアントPC分のライセンス、アプリケーションをパッケージ化するための「シーケンサー」を付けたスターターパック(250万円)を3月に発売。当面は、大企業や官公庁、病院などへの拡販を進めるが、ASP(アプリケーションの期間貸し)サービス(価格は未定)での提供を検討しており、中堅・中小企業への販売も視野に入れている。まずは3月の出荷開始から1年間で100社に導入し、売上高3億円を目指す。
当然、ソフトバンクBBでは、もっと大きな“土壌”を狙っており、次段階でのASPサービスやセット販売などを進めることで、「複合販売による相乗効果」(溝口泰雄・流通事業統括統括担当)を、かなり大きく見積もっている。
また、ソフトグリッドの国内でのブランド定着を図るため、ソフトリシティの日本法人設立も念頭に入れている。「現時点で出資などは未定」(溝口統括担当)だが、製品のローカライズ(日本語化)やマーケティング、顧客サポートなどの充実を図る方針だ。
溝口統括担当は、「ソフトリシティ事業は、是が非でも軌道に乗せたい」としており、創立以来の流通卸事業の法人向けビジネスを安定成長させるために、ソフトリシティ事業を「コア事業の1つ」と位置付けているようだ。(企画編集取材班)
富士通ビジネスシステムの本江泰彦・システム本部
ITソリューション統括部システム技術部長の話
クライント環境の標準化や企業の多様なアプリケーション要求に応えるソリューションとして、あるいはIT運用・管理コストを低減するものとしてソフトグリッドは強力な“武器”となる。当社ソリューションへの組み込みを前提にすでに製品評価を開始している。