ストレージ管理ソフト大手のベリタスソフトウェア(ゲイリー・ブルーム会長兼社長兼CEO)は、4月25日から28日まで、米サンフランシスコ(カリフォルニア州)のモスコーン・コンベンション・センターで同社の技術を紹介するテクノロジーカンファレンス「ベリタスビジョン2005」を開催した。8回目であり今回が最後となるカンファレンス。今年の目玉は、バックアップデータ管理ソフト「ネットバックアップ」とアーカイブソフト「エンタープライズボルト」の最新バージョンの発表だ。企業にセキュアなバックアップソリューションを提供するという同社の姿勢を訴求するイベントとなった。(大石浩祐●取材/文)
データバックアップと管理コスト削減に貢献
■04年、過去最高の出荷本数を記録 「ユーティリティコンピューティングによって、企業のコスト削減と事業の発展の両方が実現する」。
イベント初日の基調講演で、ゲイリー・ブルーム会長兼社長兼CEOは力強く切り出した。ユーティリティコンピューティングとは、ベリタスソフトウェアが2003年から提唱している同社のIT戦略。顧客企業にITサービスを電気や水道のように“必要な時に必要なだけ”提供し、企業のシステムコスト削減を図るというもの。
ブルーム会長は、この戦略に基づいた同社の04年の活動を総括。「04年のベリタス製品の出荷本数は過去最高を記録した。これによって、ユーティリティコンピューティングにおいて市場でのリーディングカンパニーという地位を維持し続けている」とした。
また、ユーティリティコンピューティングが今後目指すべきものとして、「ストレージ、サーバー管理、データ管理、アプリケーション管理などを1つずつ積み上げていくことによって、より低コストでITを柔軟に運用していくこと」と話した。
■最新バージョン2製品をリリース
今回のイベントでは、バックアップデータ管理ソフト「ベリタスネットバックアップ6.0」とアーカイブソフト「ベリタスエンタープライズボルト6.0」という2つの最新バージョンを発表した。
ネットバックアップは、データのバックパップと復元を一元管理するソフトウェア。バージョン6.0では、ネットワークアプライアンス製ストレージやマイクロソフトエクスチェンジなどのシステムに対応。UNIXやLinuxに加えてウィンドウズでもデータのバックアップと復元が可能になった。
スコット・コシューク・プロダクトマーケティングマネージャーは、「バージョン6.0には、これまでオプション販売していた管理レポートツールを標準搭載した。これはウェブベース管理ツールで、バックアップ業務全体を1つの管理画面操作で閲覧できる。これによって、日々のバックアップ業務が大幅に簡素化される」と、そのメリットを話した。
一方、ベリタスエンタープライズボルト6.0は、電子メールなどを保存・管理するアーカイブソフトの最新版。
現在、米証券取引委員会(SEC)の規定や米国企業改革法などにより、米国内で活動する企業は電子メールなどの電子文書の保存・管理が求められている。また、電子メールが裁判で証拠として採用されるケースも増えていることから、企業活動における電子文書を保存・管理するアーカイブソフトの需要が高まっている。
エンタープライズボルト6.0では、新たにロータスノーツ/ドミノに対応。ベリタスソフトウェアによると、ロータス製品は主に大企業で導入が進んでいることから、バージョン6.0の対象ユーザー企業は2倍以上になるとしている。
■6月にはシマンテックと合併 ベリタスソフトウェアは昨年12月、セキュリティソフト大手のシマンテックと全株式交換による合併を発表した。ベリタスソフトウェア自身によるイベント「ベリタスビジョン」は今回が最後となる。イベントに集まったパートナー、ユーザー企業、報道関係者の関心も、ベリタスソフトウェアとシマンテックとの合併話に集まった。
ベリタスソフトウェアのブルーム会長も、「シマンテックとの合併は非常にエキサイティング」としたうえで、「セキュリティ分野は今後ますます重要になってくる。しかもシマンテックが持っている技術の付加価値は高い。ベリタスとシマンテックが1つの会社になることで、ITインフラのリーディングカンパニーが誕生する」と、事業領域の拡大をアピール。
もっとも、合併後の具体的なビジョン、戦略については、「SECの規定により、事前に公開できる情報には限りがある」(ブルーム会長)として多くを語ることはなかった。
いずれにしても、今年6月の合併に向けた作業は「着実に進んでいる」(ベリタス関係者)という。報道関係者向け懇親会では、ベリタスソフトウェアのフィル・ナッシュ・アナリスト担当部長が「来年は“シマンテックビジョン2006”でお会いしましょう」と笑顔で挨拶した。
過去7回を数えた「ベリタスビジョン」の最後は、ストレージ管理市場でのリーディングカンパニーからシマンテックとの合併による総合ITインフラ企業への飛躍を印象づけた今回のイベントだった。