通信関連機器の大手メーカー、米アバイア(ドナルド・K・ピーターソン会長兼CEO)がIPテレフォニービジネスの拡大に乗り出した。IP電話機をはじめとしたハードウェアの拡販だけでなく、アプリケーションソフトウェアの開発を主軸に置き、IP電話端末で業務効率化を図るインテリジェント・コミュニケーションズを目的としたシステム提供に力を注いでいる。アプリケーション開発では自社製のハードに加え、他社製品との互換性を追求。同社を中心としたマルチベンダー化の推進で、IPテレフォニー分野で主導権を握ることが最大の狙いだ。(佐相彰彦●取材/文)
マルチベンダー化を推進
■ビジネスコミュニケーション戦略を加速
米アバイアは、IPテレフォニー分野のビジネスを手がけるうえで「ビジネス・コミュニケーションズ・アプリケーションズ」というコンセプトを今年5月から新しく掲げた。このコンセプトは、ビジネスプロセスのなかにコミュニケーションを入れ、社内業務の効率を高める「インテリジェント・コミュニケーションズ」を提供していくというもの。これまで力を入れてきたIP電話機などハードウェアの販売は継続するが、今後はIP関連のハードウェアに搭載するアプリケーションソフトウェアの開発に力を入れていく。同社では研究開発費の90%をソフトウェア開発に充てているという。
同社がソフトウェアビジネスに力を入れるのは、ハードウェアビジネスが必ずしも業績を伸ばすわけではないと確信したためだ。通信関連機器市場ではIP電話ビジネスが主流となりつつあり、参入企業が増えている。しかも低価格化を武器にシェアを高めようとするメーカーが次々と出てきており、競争が一段と激化しているのだ。

ルータやスイッチなどで世界トップのシスコシステムズは、シスコ製ハードウェアだけで顧客ニーズに合ったIPシステムを構築できることを打ち出し、IPテレフォニー市場でシェアを高めることに躍起になっている。
そこでドナルド・K・ピーターソン会長兼CEOは、「シスコとは異なったビジネスを行う」と、競合他社との差別化を明確にしていくことがビジネス拡大にとって最善の策と判断した。同社では、IPテレフォニー分野のアプリケーションソフトおよびサービス市場が平均で年率20%で成長し、2006年に300億ドル(約3兆2000億円)規模に拡大すると試算。この市場で20%以上のシェア確保を見込んでおり、ソフトサービスの強化でマーケットの主導権を握る考えだ。
■パートナーとのアライアンスを強化 ソフトウェアビジネスでは、「当社のハードウェアだけでIPテレフォニーのソリューションを提供することは考えていない。他社のハードウェアとの互換性を追求するマルチベンダー化の推進がビジネス拡大のキーポイントになる」(ピーターソン会長兼CEO)とみている。IPテレフォニー分野で核となるアプリケーションを開発し、各システム案件に応じてハードウェアを含めたシステムの構築や、ソフトウェアだけを提供するといったビジネスを手がけていく。

具体的には、システムインテグレータ(SI)との協業で顧客ニーズに合ったIPシステムを構築していくほか、同社が開発したソフトウェアの他社製通信関連機器への搭載など、これまで競合していたメーカーとの提携も視野に入れている。このため、同社はヒューレット・パッカード(HP)やIBM、エクストリームなどとのアライアンスを強化。このほどジュニパーネットワークスと開発面でのアライアンスに加えて営業面でも協業し新しいマーケットを開拓していく戦略的提携も結んだ。
米ラスベガスに4月末にオープンしたホテル「ウィン・ラスベガス」へのIPテレフォニーシステムの納入は、エクストリームなど複数ベンダーとのアライアンスで実現したという。ピーターソン会長兼CEOは、「マルチベンダー化の推進という点では、シスコ製ハードウェアに当社のソフトウェアを搭載することもあり得る」とアピールする。
■アジア地域のシェア拡大を狙う
地域戦略では、「米国以外では年率2ケタ成長を遂げている。この成長率は一段と高まっていく」(ピーターソン会長兼CEO)と、グローバルビジネスを加速する考えだ。なかでもアジア地域については、「これまでの顧客は大規模なコールセンターが中心だったが、アプリケーションソフトの開発を強化することで一般企業を新規顧客として獲得できる環境が整った」(マーク・レイ・アジアパシフィックプレジデント)と自信をみせる。
日本に関しては、「チャレンジする市場」(レイ・アジアパシフィックプレジデント)という。世界の主要地域のIPテレフォニー市場では20%以上のシェアを維持しているが、日本市場ではNECや沖電気工業、富士通など国内ベンダーが強く他の地域に比べシェアが低い。しかし、「飛躍的に伸びる可能性が高い地域。パートナーの開拓でビジネス領域を広げていく」と意欲を燃やしている。