日本情報技術取引所(JIET、二上秀昭理事長)の関西本部(4月5日までは関西支部)では、活動の幅を広げる各種イベントが盛んだ。技術教育に加え、大学生を対象にした企業説明会などを実施している。会員数は現在151社。松本十成本部長は、「関西本部の会員数を早く200-300社にしたい」と、JIETの拡大に向け積極的に貢献していく方針だ。松本本部長に関西地区のIT事情や本部の運営方針などを聞いた。
――関西本部が設立された経緯と、JIETとの関わりのいきさつを教えてください。
松本 関西本部は、今年10月で発足7周年を迎えます。現在、同本部の会員数は151社。私自身は関西本部を開設する準備段階の「プレ商談会」から参加し、当時から幹事を務め、昨年4月に支部長(現・本部長)に就任しました。
――関西本部は、活動の充実に熱心に取り組んでいるようですが。 松本 JIETの各本部・支部で「商談会」前に行われる講演会を初めて開始したのは関西本部です。この方式は全国に波及しました。JIETの活動を充実させることに今も熱心な拠点で、新しい企画・イベントを次々に打ち出しています。
例えば、「商談会」以外には、会員企業を対象に技術教育を行う「フォーラム」を開催しています。希望する各企業の参加者に対しては、JavaやC言語の教育を専門教育機関に委託して行っています。また、今年は若干趣向を変え、テクニカルなコンピュータ関係の教育だけでなく、財務・経理など社会人として必要な教養を身につける講座を充実させる予定です。
――会員の集客・入会を促す活動が活発なのですね。 松本 会員に対して、会費に見合うメリットを享受してもらうために、さまざまに趣向を凝らしているのです。技術教育は有償ですが、企画で儲けることを考えていませんし、実際に収支はとんとんです。
今春は、関西本部主催で、新卒の学生が会員企業に入るための「企業説明会」を関西の大学で実施しました。今回は5大学で説明会を開催しました。また、1か所に集めて会員企業がブースを開く形式による「合同説明会」も実施していますが、これらの活動は、会員にメリットを感じてもらういい機会になっています。
――ところで、関西地区は、全国に比べ景気が悪いといわれます。IT関連の案件に関して状況はどうですか。 松本 意外に思われますが、一口にいうと、仕事が大量にある一方で、IT人材が足りない状態です。私自身も在籍のインテグレートトータルシステムで営業本部長を担当していますので、リアルに状況が分かるのですが、昨夏から今年3月にかけて、極度にIT人材が不足しました。JIETの「商談会」でも、案件に対して、IT人材がなかなか充足しませんでした。
関西地区は、電子・電機業やハイテク業、製造業が多く、昨年、IT産業が好調だった影響が色濃く出ていました。デジタルカメラや携帯電話機に組み込む制御ソフトウェアなどに関する案件が多く、特にJava言語のスキルをもつ技術者が不足しました。
――松本本部長が在籍する会社でも、案件は増えているのですか。 松本 当社はソフトハウスで業務系や制御系の技術者集団です。現在は、ユーザー企業に赴き常駐型でJava言語による業務系のウェブ開発などの案件が大半を占めます。ここにきて、携帯電話機や車載機器に関連する制御系のソフト開発なども増えています。
――JIETの各本部・支部では、「商談会」以外で横のつながりが深まっていると聞きますが。 松本 JIETの「商談会」に参加して案件を持ち帰るだけがJIETのメリットではありません。最近は冗談でJIETの場を“出会い系サイト”と呼んでいます。関西本部だけでなく、JIETの会員は中小企業が多く、1社で多様なIT人材を確保するには限界があります。
これらの会員企業間で人脈(出会い)をつくる場としてJIETを利用して欲しいのです。そのため、関西本部では、先ほどのような特色ある活動だけでなく、懇親会など交流の場を積極的に実施しているのです。
関西本部では、オフィシャルな「商談会」だけでなく、懇親会のような場で、名刺交換から商談につながるケースが多くあるようです。
――では、JIETの活動に関する今後の課題は何でしょうか。 松本 まだまだですが、JIETを存在感のある集団にしたいと考えています。それには、“数は力”で、関西本部としても早いうちに会員を200-300社に拡大して、JIET全体の会員増に貢献したいと思います。
ただ、関西本部は会員数がここしばらく伸び悩んでいますので、魅力ある活動を今後も追及する必要があります。「商談会」以外のフォーラムなどの独自企画で、ある程度、JIETの魅力を引き出せていると思いますが、各会員のビジネスに直接役立つために、案件とIT人材を上手く結びつけ商談の成約率を上げることが重要でしょう。
そのため商談会が近づくと、中小の我々は助け合うことが必要。気後れせずに案件を出してくださいと会員企業にハッパをかけるようなこともしています。
――最後にJIET全体に対する感想を述べてください。 松本 JIETのような仲立ちの機能をもつ集団は、よりスキルにマッチした仕事を探す場として、社会的な要請に応えています。JIETはNPO(特定非営利活動団体)化を目指していますが、活動自体がすでにNPOの目的に合致していると思います。
JIETの理事らが言うように、「下請け構造」を無くすこともそうですが、需要と供給を結びつける機会を生み出す「商談会」などの活動は社会貢献そのものだと思います。
【PROFILE】
1945年、京都市生まれ。59歳。京都大学工学部大学院卒。70年、住友金属工業に入社し、和歌山県の同社製鉄所で生産管理のシステム開発を担当。88年、大阪本社に戻り、数理技術に関わり、新事業の開拓に従事。91年、情報システム子会社、住友金属システムソリューションズ(現・キヤノンシステムソリューションズ)に出向して、ソフトウェア開発に携わる。02年9月、インテグレートトータルシステムに転職し、現職の執行役員営業本部長を務める。