その他
経産省、「情報経済・産業ビジョン」発表
2005/05/23 15:00
週刊BCN 2005年05月23日vol.1089掲載
次期IT国家戦略の策定作業スタート
IT戦略本部も新体制へ
2006年に向けて次期IT国家戦略の策定作業がスタートする。昨年12月に公表された総務省の「u-Japan政策」に続いて、経済産業省の「情報経済・産業ビジョン」が4月27日に公表され、次期IT国家戦略のベースとなる政策が出揃ってきた。政府のIT戦略本部も、民間有識者の本部員を全面的に入れ替えて、中村邦夫・松下電器産業社長、鈴木敏文・イトーヨーカ堂会長、中村維夫・NTTドコモ社長などを加えた新体制が、今月30日には開かれる予定のIT戦略本部会合で発足。先に経産省が打ち出した「プラットフォーム・ビジネス」の形成や、総務省が目指す「ユビキタスネットワーク」の実現などをキーワードに、次期戦略の骨格が構築されていくとみられる。(千葉利宏(ジャーナリスト)●取材/文)
■4つの分野でITの活用状況を評価「プラットフォーム」の考え方を提唱
01年1月にスタートしたe-Japan戦略も、03年7月に策定されたe-Japan戦略IIを経て大詰めを迎えている。「05年に世界最先端のIT国家を目指す」との目標に向け、今年2月に「IT政策パッケージ-2005」を打ち出しスパートをかけているところだ。
その一方で、06年以降の次期IT国家戦略についても、新メンバーを加えたIT戦略本部で議論が本格化。スケジュールはまだ明らかになっていないが、8月の来年度予算概算要求を経て、年内にも新戦略が策定されるものとみられる。
果たして次期IT国家戦略では何を目指すのか。その企画・立案に生かそうと、経産省が産業構造審議会情報経済分科会で検討を進めてきたのが、「情報経済・産業ビジョン-IT化の第2ステージ『プラットフォーム・ビジネス』の形成と5つの戦略-」だ。情報経済分科会としては、02年3月の「第三次提言-ネットワークの創造的再構築」以来、3年振りの政策提言である。
ビジョンでは、生活、ビジネス、行政、社会的課題(環境問題や少子高齢化・ニート対策など)の4分野でITの活用状況を評価した。e-Japan戦略Iで進めてきたITインフラ整備によってインターネットの世帯普及率88%、パソコンの世帯普及率も65%に達し、ITが「便利な道具」として活躍を始めている。しかし、生活や仕事のスタイルや業務方法自体を大きく変えたり、競争力・課題解決力の向上をもたらしているとは言い難い。かつて産業革命が蒸気機関の発明・普及によって利用する産業の技術革新につながり(第1ステージ)、さらに大きな社会変革をもたらした(第2ステージ)ように、「IT革命」を第2ステージへ進化させていくための戦略が必要になってきている、との認識だ。
携帯電話、パソコン、インターネットなどを使って、新たなイノベーションや価値を生み出していくには何が必要か。そこで登場するのが「プラットフォーム」の考え方だ。インターネット上での認証、課金・決済、権利処理などの機能を持ったサービスを提供するための共通統合事業基盤である。
例えば、音楽ダウンロードサービスも、A社とB社で方式や端末が異なり、決済も別々で行うのでは不便だが、A社、B社両方のサービスが利用できる“共通基盤性”のあるプラットフォームがあれば利便性は一気に高まる。音楽ランキング情報サービスでチェックした楽曲を、A社、B社など横断的に検索してダウンロードし、決済も共通化できるなど、プラットフォームそのものに“機能統合性”があるとさらに便利だ。
加えてプラットフォームには、新しいサービスを提供する事業者の新規参入を受け入れる“オープン性”と、次世代の端末や技術にも対応できる“進化の可能性”も求められる。
■情報家電のネットワーク化で検討会6月中には中間報告のとりまとめへ
問題は、こうしたプラットフォームをどのように形成していくかである。これまではNTTドコモなど通信事業者自らがiモードサービスなどのプラットフォームを提供したり、パソコン分野では、CPUがインテル、OSはマイクロソフトが共通技術基盤になったりと、特定企業がサービスや商品を囲い込む形で提供しているケースも多かった。しかし、今後求められるプラットフォームは、医療・介護分野や金融・保険分野といった広範囲な領域をカバーして「ライフ・ソリューション・サービス」を提供することが可能なもので、誰もが手軽に利用できることも重要だ。
プラットフォームをオープンにして無料にすれば、一気に普及するだろうが、ビジネスとして成り立たない。特定企業を利する仕組みだったり、使用料が高かったりすると、他社がなかなか採用してくれずに普及が進まない。電子タグが普及すれば利便性が高まることは誰もが理解しても、誰が普及させるかという問題をなかなかクリアできていないのが現状である。
ビジョンでは、当面6つのプラットフォーム・ビジネスを形成することを提言した。情報家電をネットワーク化してインターネットを通じた映像配信などの各種サービスを実現する「デジタル・ホーム構想」、携帯端末と電子タグ、ICカードなどの自動認識技術を組み合わせて各種サービスを提供する「モバイル・マルチユース構想」、自動車をデジタルネット端末化する「デジタル・モービル構想」、電子カルテやレセプト(保険診療報酬請求)情報などの医療関連情報をつなぐ「医療情報共有構想」、防犯・防災などの情報を含めた生活インフラサービスをワンストップで提供する「デジタル・コミュニティ構想」、誰もが好きな時間に好きな教育が受けられる環境を整備する「e-Learning構想」――で、これらを形成していくために政府が積極的に旗振り役を果たしていく必要があるというのである。
まず、総務省と経産省が共同で「情報家電ネットワーク化に関する検討会」を18日からスタート。6月中にも中間とりまとめを行う予定で、デジタル・ホーム構想の実現に向けて動き出す。残る構想についても、「今年度中に準備できたものから具体的に公募等を開始し、プロジェクトを立ち上げる」(村上敬亮・経済産業省情報政策課ユニット課長補佐)考えだ。
IT戦略本部の新メンバーには、インターネットバンキングなど金融にも積極的な鈴木イトーヨーカ堂会長、モノづくりの観点から中小企業ネットワークに取り組む上野保・東成エレクトロビーム社長、三鷹ネットワーク大学の設立を進める清原慶子・三鷹市長などが加わり、ITベンダーとしては評価専門調査会座長の庄山悦彦・日立製作所社長も加わる。次期IT国家戦略は、より利用者の視点に踏み込んだ内容となる可能性が高そうだ。
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