その他
存在感増すクライアント専用端末 セキュリティ対策強化が後押し
2005/05/30 15:00
週刊BCN 2005年05月30日vol.1090掲載
セキュリティ機能の強化に主眼を置いたクライアントコンピュータが注目を集めている。日立製作所が今年1月、他社に先駆けてハードディスクドライブ(HDD)を搭載しないクライアント端末を発表。この動きを競合他社は“静観”していたが、最近になって日本ヒューレット・パッカード(日本HP)やNECなどがこれに追随。“HDDレス”などの専用端末を使ったクライアント向けセキュリティソリューションが続々と登場している。ユーザーも、従来はTCO(システム総保有コスト)削減やクライアントの管理簡素化を目的に導入してきたが、セキュリティ対策強化を狙いに導入するケースも出てきている。(木村剛士●取材/文)
日立に続き日本HP、NECも参入
■「パソコンではダメだ」
昨年3月と8月、顧客情報の流出が発覚したアッカ・ネットワークス。同社のCSO(チーフセキュリティオフィサー)として、情報セキュリティ対策の陣頭指揮を執る中木正司取締役は、パソコンに代わりシンクライアントを部門限定で、まずは約30台導入することを決めた。「社内システムだけでなく、モバイルコンピュータからの情報漏えい防止も強化するため」(中木取締役)には、パソコンよりもシンクライアントの方が効果的だと判断した。
シンクライアント向けソフト開発・販売のきっとエーエスピー(きっとASP)では、「これまではTCO削減のために導入する企業が多かったが、昨秋からセキュリティ対策として導入するケースも増えている」(きっとASPの松田利夫社長)と需要の強さを実感。ビジネス拡大に手応えを感じている。
相次ぐ個人情報漏えい事件・事故の発生と、4月1日に完全施行された「個人情報保護法」は、企業の情報セキュリティ投資を後押ししている。そのなかでも、各社員が持つクライアントコンピュータのセキュリティを重視する企業が増えている。
従来は、個人認証やデータの暗号化ソフトなどをパソコンに導入するのがクライアント向けセキュリティ対策のメインだったが、最近になってシンクライアントなどの専用端末を導入・検討するユーザーが増えている。NTTデータの顧客情報漏えい事件に代表されるように、情報漏えいの原因が、モバイルパソコンの盗難・紛失であるケースが珍しくないからだ。クライアントにデータやアプリケーション自体を持たせないことで情報流出を防ごうとする動きが高まっている。このことが、「パソコンではダメだ」という風潮を引き起こしているわけだ。
ITベンダーの動きも活発だ。大手ITベンダーのクライアント向けセキュリティソリューションが揃い始めている。今年1月3日、日立製作所がHDDを持たないクライアント端末「セキュリティPC」を発表。これに続いて、日本HPは4月7日に同じくHDDを格納しないシンクライアントを販売開始。NECも「クライアント統合ソリューション」を4月25日に発売し、セキュリティ対策強化をコンセプトの1つに置いている。日立はラインアップの拡充を進め、今年度(2006年3月期)で「セキュリティPCの3万台出荷、HDDレスの専用端末市場で10%のシェア確保」(古川一夫・情報・通信グループグループ長&CEO)を目指す。古川グループ長&CEOは、「ブローバンドの定額制、常時接続が当たり前になり、シンクライアントを使うネットワークインフラが整った。セキュリティ確保と運用費削減の2つの観点から考えると必ず、センター集中型の方向に向かう」と自信を示している。
NECの平智徳・マーケティング推進本部(プラットフォームソリューション企画部)マネージャーは、「発表直後、60-70社の企業から引き合いがあった。予想以上の反響だった」としており、問い合わせに対応するために組織の拡充を急いでいる。3年後には「クライアント統合ソリューション」全体で1000億円のビジネスに成長させる考えだ。
■既存システムからの移行が課題
ただ、一方で専用端末に関心を示さないITベンダーもいる。
中小企業のシステム構築に強い日本事務器(NJC)の平山宏・セキュリティ対策推進部部長は、「新端末は特定の大手企業には引き合いがあるかもしれないが、中小企業には向かないだろう。投資の抑制が続くなか、従来のクライアント/サーバー(C/S)システムを抜本的に変えるような提案は受け入れられにくい」と説明。また、「現在の業務に支障をきたすようなセキュリティソリューションも、ユーザーは二の足を踏む」と、ログ監視や資産管理など社員の現在の業務に支障がない製品・サービスが人気だという。
NECは、「クライアント統合ソリューション」のメニューを3つ用意している。これは、ユーザーが新たなクライアント環境に移行する際に、柔軟に対応できるようにするため」(平マネージャー)だ。実際、アッカ・ネットワークスの中木取締役は、シンクライアントや専用端末選定の際に、「従来のシステムからいかに容易に移行できるかを重要視した」と話している。
専用端末を用いたセキュリティソリューションが複数社から登場したことで、クライアントコンピュータ環境の見直しを検討する企業は今後増える可能性はある。だが、現在の情報システムではパソコンの存在はまだまだ大きい。専用端末のメリットを感じていても、専用端末への移行を踏みとどまるユーザーも多いだろう。パソコンから専用端末に置き換えるためには、現在のシステムからの移行をいかに簡素に、そして迅速に行うことができるかが焦点となりそうだ。
セキュリティ機能の強化に主眼を置いたクライアントコンピュータが注目を集めている。日立製作所が今年1月、他社に先駆けてハードディスクドライブ(HDD)を搭載しないクライアント端末を発表。この動きを競合他社は“静観”していたが、最近になって日本ヒューレット・パッカード(日本HP)やNECなどがこれに追随。“HDDレス”などの専用端末を使ったクライアント向けセキュリティソリューションが続々と登場している。ユーザーも、従来はTCO(システム総保有コスト)削減やクライアントの管理簡素化を目的に導入してきたが、セキュリティ対策強化を狙いに導入するケースも出てきている。(木村剛士●取材/文)
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