マイクロソフト(ダレン・ヒューストン社長)は、中小企業のIT利用を促進するマーケティング活動「IT推進全国会」を強化する。全国会に参加するITコーディネータやシステムインテグレータ(SI)、ITトレーナーなどビジネスパートナーの役割分担を明確化し、従来よりも密接に連携することで、中小企業のIT化需要の創出を狙う。マイクロソフトが9月15日、ビジネスパートナー向けに東京都内で開いたセミナーを取材した。(安藤章司●取材/文)
ビジネスパートナーとの連携強化を推進
■4つのフェーズでIT化
IT推進全国会の活動では、中小企業のIT化のフェーズを4つに分けて捉えている。最初の段階は、ITの必要性に気づいてもらう「啓発」のフェーズ。次に、ITの必要性に気づいた企業が具体的な検討を行うのに欠かせない「相談」のフェーズ。3つ目に、実際にシステムを「導入」するフェーズ。最後は、導入したシステムを「活用」するためのトレーニングのフェーズへと中小企業を導いていくことで、ITの利用を促進していく。
「啓発」、「相談」、「導入」、「活用」のそれぞれのフェーズで、専門的なノウハウを持つビジネスパートナーの役割を明確化し、さらにビジネスパートナー同士の連携を強化することで、中小企業のIT化を加速させる。これまでは、役割分担が明確になっていないケースもあり、フェーズ間の境界がぼやけ気味になることもあった。これからは専門特化したノウハウを持つパートナー同士が連携することで、各フェーズで最適なサービスや商品を供給していく体制を築く。
■会計士、税理士なども参加
現在、IT推進全国会には、ITコーディネータの資格を持つ公認会計士、税理士らで組織する「会計人ITコーディネーターによる全国IT推進研究会」(全国IT推進研究会、古川茂会長=健全経営サポートセンター社長、古川会計事務所所長)や、SI、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)などITの専門家らが参加する「スマートビジネスパートナー」組織、ウィンドウズやオフィス製品などの活用方法のトレーニングを専門とする「マイクロソフトオフィシャルトレーニングスクール(MOTS)」などが参加している。
全国IT推進研究会は、「啓発」、「相談」などのフェーズに強く、スマートビジネスパートナーは「導入」に強い。導入後の「活用」フェーズに入るとMOTSのメンバーが活躍するなど、それぞれのフェーズに最適なビジネスパートナーを割り当てることで、中小企業が「ITを活用した経営革新を行いやすい」(森上寿生・マイクロソフト業務執行役員ゼネラルビジネス本部長)環境整備に力を入れる。

フェーズごとに担当するビジネスパートナーが異なるケースが多くなると予想されるため、ビジネスパートナー間の連携をより密接にする。その手段の1つとして会員制のコミュニティサービス「SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)」と日記形式のホームページ「ブログ」の機能を組み合わせたビジネスパートナー間の情報交換サイトを、今年11月をめどに開設する。たとえば、啓発、相談を行った全国IT推進研究会のメンバーが、実際のシステム導入のフェーズに移行するタイミングでスマートビジネスパートナーのメンバーに案件を引き継ぐ際に、コミュニケーションの場として情報交換サイトが活用される見通しだ。
全国IT推進研究会とスマートビジネスパートナーなど、パートナー同士の密接な連携が求められることついて全国IT推進研究会の会長で税理士の古川氏は、「医師と薬剤師」の関係に似ていると話す。中小企業と顧問契約を結んでいる会計士や税理士は、地域に密着した“開業医”のような存在で、顧問先(地域の患者)からさまざまな相談が寄せられる。ある統計によれば、中小企業経営者が経営に関する相談先として会計士、税理士を選ぶ比率は7割にも達し、実際に「経営から人生相談まで幅広い相談を受ける」(古川会長)など、顧問先との深い信頼関係の上に成立すると語る。

会計士と税理士は毎月のように顧問先の財務諸表に目を通したり、経営者の話を聞いたりする機会がある。こうした“問診”を通じて「環境適応障害や特定取引先への依存症、自社の強み欠乏症、社員の組織沈滞感などさまざまな症状が読み取れる」(同)と、マネジメントのプロフェッショナルだけに判ることも少なくないという。症状の中にはITの活用が有効な治療法になるケースがあり、解決策としてITを“処方”すると決まれば、“薬剤師”に相当するスマートビジネスパートナーのメンバーに処方内容を伝え、システムの導入フェーズへと進む。
■啓発から活用まで「一貫した支援」
全国IT推進研究会では、ITの活用が有用だと判断したケースについて、スマートビジネスパートナーへと引き継ぎ、さらに導入が終わった後は、MOTSのメンバーによるIT活用トレーニングへと円滑に引き継いでいく。こうすることで、啓発から活用まで専門的なノウハウを持ったメンバーによる「一貫した支援」(石澤一良・マイクロソフトゼネラルビジネス本部IT推進統括部統括部長)を行う。スマートビジネスパートナーのメンバーでSIの佐々木茂則・協立情報通信社長は、IT活用が必要だと判断された中小企業の「受け皿になる」と、全国会の仕組みの中における役割を積極的に果たしていく考えを示す。
IT推進全国会のメンバーは、全国約200社・団体だが、今後はさらに参加するメンバーを増やしていく予定だ。マイクロソフトは、全国会とは別に、マイクロソフト製品の知識や技術を持つパートナーを認定する「認定パートナー制度」があり、この認定パートナーの中から、マイクロソフトの中小企業市場の開拓戦略「全国IT推進計画」に賛同するパートナーを募っていく。

全国会の活動はこれまで日本独自のものだったが、その取り組みがマイクロソフト米本社から高く評価され、来年1月には「グローバルなマーケティング活動」(石澤統括部長)として格上げされる。
日本独自の活動がグローバル規模で展開されることが決まったことで、全国会に参加するビジネスパートナーは、マイクロソフトを中心とした支援体制が、従来にも増して強化されるものと期待を寄せている。