マイクロソフト（ダレン・ヒューストン社長）は中小企業のIT化支援を強化する。2003年以降途絶えていた全国キャラバン用の車両も復活させる。米本社からスティーブ・バルマーCEOも駆けつけ中小企業市場の深耕の重要性を訴えた。ITコーディネータ協会や全国建設産業団体連合会、日本商工会議所など12団体で構成する任意団体「IT経営キャラバン隊」（関隆明会長＝ITコーディネータ協会会長）も発足。マイクロソフトと連携して“国民的な運動”に盛り上げていく方針だ。（安藤章司●取材／文）

ITコーディネータ協会など12団体と連携

■「全国IT推進計画2007」始動　中だるみ状態から脱却する

　中小企業のIT化支援施策の名称は「全国IT推進計画2007」。スティーブ・バルマーCEOは11月6日、「事業者の大多数を占める中小企業はITを十分活用できていない」と、ITベンダーにとってのビジネスチャンスが埋もれていることを強調した。

　マイクロソフトの全国IT推進計画はIT社会の実現を目指した国のe－Japan計画と歩調を合わせて01年10月にスタート。今年で6年目になる。02－03年にかけて大型トレーラーで列島を縦断する「マイクロソフトIT体験キャラバン」を実施して盛り上がったが、その後は「目立った活動ができなかった」（眞柄泰利・執行役専務ゼネラルビジネス担当）と中だるみ状態だった。

　中小企業向けのボリュームライセンスの売上高は年率20－30％で伸びているといい、この分野での業績のよさが逆に全国IT推進計画の失速を招いた。しかし「日本の中小企業のIT活用度合いは欧米に比べて遅れている」（バルマーCEO）現状があり、ここに追加的なマーケティング投資をすることでビジネスをさらに伸ばせると判断した。

■新製品の売り込み狙う　国民運動にまで盛り上げたい

　全国IT推進計画に参加する約500社の販売パートナーからも「何か行動を起こしてほしいという声が高まっていた」（眞柄専務）。次期OSのビスタや新しいオフィスシリーズ、業務ソフトのダイナミクスなど新製品が続々と登場する今のタイミングで大々的なキャンペーンを展開。新規導入やバージョンアップ需要を取り込む狙いもある。

　米本社による日本市場への投資拡大の決定を受けて営業拠点も増やす。98年以来、地方拠点の増設はなく、「大企業市場への進出に力を入れていた5－6年前は地方拠点を減らすという話も出ていた」ほどだが、来年末までに4拠点増やし、計11拠点体制にする。

　今後1年間でマイクロソフトのバスは全国200か所を行脚し、3万人の参加を目指す。IT経営キャラバン隊は期間内に200回のイベント開催を予定している。ただ、3年前の大型トレーラーに比べて今回のバスはずいぶん小振りである。「前回は田舎の細い道で脱輪するし、駐車場が確保できず、雪にも難渋した」経験からフットワークのいい小型バスにした。セミナーは大型テントを使う。

　キャラバン用の専用バスは今回2台用意する。1台はマイクロソフトの全国行脚「全国IT実践キャラバン2007」で使い、もう1台はITコーディネータ協会など12団体で構成する「IT経営キャラバン隊」で使う。IT経営キャラバン隊の関会長は「国民運動レベルの活動」にしていくと意気込む。

　全国IT推進計画は「最低でもあと5年は続ける」（眞柄専務）と01年のスタートから10年にわたる長期計画にすると話す。地域に密着して産官学連携や産業振興などを通じて信頼を醸成し、500社からなる販売パートナーが潤う基盤をどこまでつくれるかが成否のカギを握る。