リコー（桜井正光社長）は、05年度初頭に掲げた3か年計画「第15次中期経営計画」の進捗状況を発表した。07年度に売上高が2兆3000億円、営業利益は2350億円、最終利益で1370億円を掲げており、売上高と営業利益に関しては現状よりも2倍程度の伸び率を維持しなければクリアできない計画だ。1年目の今年度が計画達成のカギとされたが、通期業績予想を下方修正するなど厳しい現実に直面している。果たして、中期経営計画の達成はできるのか。（佐相彰彦●取材／文）

ハイエンド市場への食い込みがカギに

■05年度は基盤作りを徹底

　今年度通期の業績予想は、売上高で1兆9100億円（前年度比5.3％増）、営業利益で1530億円（同12.9％増）、最終利益で970億円（同16.7％増）を見込んでいる。「今年度目標は達成できる」（桜井社長）と断言するが、営業利益は期初発表の1650億円を今年1月末に下方修正している。

　下方修正の理由は、「成長路線の確立に向けた基盤作りに徹したため」という。今年度は、販売会社の統括体制整備や開発拠点の統合、国内外サービス体制の強化により、「商品、販売、サービスそれぞれの面からオフィス事業の収益力を強化する体制が整った」としている。

　商品差別化に向けた技術力については、「キーパーツの内部開発・内製化で、他社を先行する商品開発ができる」。開発面では、単に“作る”のではなく、顧客ニーズに合わせた製品を“創る”方式の定着で、高品質・高信頼性を確保。生産面では、コストを2分の1に削減する生産方式の確立や、装置・設備の内製化技術でブラックボックス化を可能とした。

　製品面では、ハイエンドプリンタで高PV（プリントボリューム）市場に本格参入したほか、ローエンドプリンタで商品ラインアップや販売チャネルを強化。これまで得意としていた一般オフィス向け市場に加え、データセンターやコピーショップ向けのハイエンド市場、小規模オフィス向けのローエンド市場を開拓する基盤が整った。

　システムの提案では、「販売や開発で明確なソリューションを提案する。ワールドワイドでは、大型案件を徐々に獲得している。これまで受注してきた案件をベースに世界で通用するようなソリューションを確立する」としている。

　こうした基盤作りは、「06年度から確実に効果を発揮する」と言い切る。「今年度はソリューションや高付加価値製品を提供する準備が進んだものの、効果発揮のタイムラグが発生した」というわけだ。

■新規分野での拡販に取り組む

　中期計画を達成するためには、売上高が年率10％程度の成長、営業利益で年率20％程度の伸びを維持しなければならない。現状の伸び率と比べ2倍近い引き上げが必要だ。

　この強気な計画について、山中行彦・総合経営企画部コーポレートコミュニケーションセンターIR部長は、「直販を中心とした販売やサポート体制を築き上げてきた当社にとって今の市場環境はビジネスチャンスが多い。中期経営計画を達成する要因はある」と強調する。

　成長の核に位置づけているハイエンド製品やローエンド製品についても、同社が得意とする一般オフィス向け複合機（MFP）販売のノウハウで拡販できるという。山中部長は、「ハイエンド市場では、オープン化やネットワーク化のニーズが高まり、基幹専用プリンタのダウンサイジング現象が起こっている。これは競合にとっては逆風だが、一般オフィス向けの販売ノウハウをもつ当社にとっては追い風で、新規のハイエンドユーザーに入り込める余地が大きい。一方、ローエンド市場については、競争が激しいものの、市場規模が大きいため需要はまだまだ眠っている。商品ラインアップの増加や販売チャネルの強化で十分に戦える」と言い切る。

　収益エンジンである一般オフィス向けMFPの販売で、今までと同程度の伸び率を維持し、成長の核となるハイエンド製品やローエンド製品を拡販していく。この戦略が上手く発揮できるかが、中期経営計画の達成を左右するといえる。