企業がAI活用を加速させていくためには、社内に散在するデータを整理し、そこから必要な情報のみを抽出して、高品質な基盤を構築しなくてはならない。しかし、多くの企業がそこに苦戦している。その状況を踏まえマクニカは、DSPM(Data Security Posture Management:データセキュリティ態勢管理)ソリューション「DataXray」を活用した、データセキュリティを伴うデータ整備を提案している。同社の技術・営業担当者たちに、DataXrayが提供する価値と、SIerやリセラーがビジネスにつなげていくためのシナリオを聞いた。
(左から)
マクニカ
ネットワークス カンパニー セキュリティソリューション技術統括部
第4技術部長
根塚昭憲
ネットワークス カンパニー セキュリティソリューション技術統括部
第4技術部 第1課
瀧沢慶彦
ネットワークス カンパニー セキュリティソリューション営業統括部
プロダクト第3営業部 第1課長代理
松居遼
ネットワークス カンパニー セキュリティソリューション技術統括部
第4技術部 第2課
浅見駿
DSPMのデータ分類機能をAI基盤整備に活用
――DataXrayとはどのような製品でしょうか。着目した理由とあわせてお教えください。
根塚 この数年、新たなセキュリティ対策手法としてゼロトラストが定着し、企業にはSSE/SASEやEDRといった、データを保管する経路や場所を監視する製品が導入されてきました。一方、データそのものを守る対策は不十分であり、そこに適した製品としてDSPMのDataXrayに着目したのが発端です。
現在はクラウドやSaaSにデータを置く流れが定着し、オンプレミスのファイルサーバーも含めてさまざまな場所にデータが分散しています。データセキュリティの出発点は、守るべきデータの可視化です。ところが、そこに手が回っていない企業が大半です。
DataXrayは日本語で書かれた非構造化データのファイルの中身まで読み取り、高精度に分類できる数少ない製品です。世界では政府・公共系、金融系を中心に多くの導入実績を誇ります。
――それがなぜAI活用の際にも有効なのでしょうか。
根塚 AIにデータを読み込ませる際には、取り込んでよいものと除外すべきものを仕分けし、ノイズや重複も取り除いて、AIが正しく使えるように整理する必要があります。AI活用がうまくいかない場合、ここに原因があることが多いです。そこで当社は、「データを発見し、中身を理解して、正確に分類する」というDataXrayの強みを踏まえ、DataXrayを「AI活用の土台となるデータ分類・整備基盤」として提案しています。
企業やシステムがAIを活用するために必要な「AI-readyデータ」を準備するためには、データをAIが扱える形に整えたり、欠損や重複などを抑えたり、データ利用の同意を得たり、法律やライセンスを確認したりする必要がある。
正しいデータを正しく使うための環境整備が必要
――社内のWord・ExcelやPDFといった非構造化データについて、どこにどのようなファイルがあるか把握しきれていない企業が多いと言われます。そうした状態のまま生成AIやRAGにデータを読み込ませると、どのような問題が起きますか。
松居 AIが「データを正しく使えない」「回答を間違える」という2つの問題が起きます。BARCの2026年の非構造化データに関する調査によると、70%の企業は、自社が持っている非構造化データの半分も見つけられていません。つまり、必要なときに必要な情報を探し出せない状態です。AI活用の成否を左右するのはAIそのものではなく、その基盤となるデータです。重複したデータや古いデータ、事実と異なる情報が整理されないままAIに送り込まれると、AIが不適切な情報を参照して誤った回答を出力し続けてしまいます。また、データの権限が適切に設定されていないと、機密情報を一般従業員が参照できてしまい、それを外部に公開してしまう「オーバーシェアリング」のリスクも生じます。
BARC調査_非構造化データの把握状況
出典:BARC Harnessing Unstructured Data for AI Innovation, 2026, Figs. 15 & 16. Study co-sponsored by Ohalo
――日本企業のAI利活用レベルはどの程度の段階にあるのでしょうか。
松居 AI活用の成熟度を示す考え方として、東京大学・松尾豊教授が提唱する「AX(AIトランスフォーメーション)5ステップ」があります。既存の生成AIツールを活用するAX1から、社内データを活用しAIエージェントなどで業務効率化を図るAX2、業務プロセス全体をAIで刷新するAX3、独自にAIモデルを開発するAX4を経て、業界単位のAI基盤を開発するAX5に至ります。AIが競争力の源泉となるのは、中堅中小企業だとAX2とAX3、大企業ではAX4からとされます。しかし、多くの日本企業がAX1の「生成AIの導入」までは達成したものの、AX2の手前で足踏みしている状態と我々は考えています。AIに接続すべきデータが整理できていなければ、データ連携統合は進みません。まずはそこを着実に行うことが求められています。
データを発見し、生成AI機能で自動分類
――DataXrayはデータの整理を効果的に進めるためのソリューションですが、機能面についてご説明ください。
浅見 DataXrayは、大きく3つの機能を有しています。1つめは「データの発見」です。オンプレミスのファイルサーバーやクラウド、SaaSのストレージにある大量の非構造化データを、エージェントレスでスキャンして見つけます。その際、当該ファイルをいつ誰が作成したかという情報も取得します。
2つめは「自動分類」です。契約書や請求書、顧客・個人情報をファイルの中身から判別して分類します。生成AIで中身を理解するため、従来のように人が確認しなくても自動的にタグ付けができます。
そして3つめは「保護・統制」です。例えばDLP(Data Loss Prevention:データ損失防止)製品「Microsoft Purview」と連携し、DataXrayが自動分類した各データのカテゴリ情報をPurviewの秘密度ラベルに反映させることで、データを保護しガバナンスをかけられます。
他のDSPMベンダーだとDSPMとDLPをまとめて1つのカテゴリとして扱うケースもありますが、当社はDSPMとDLPを分けて考えています。情報の在りかを見える化するデータセキュリティの入口部分がDSPMで、見えた情報の持ち出しに制御をかけるのがDLPです。
DataXrayが非構造化データを可視化し、AI-readyデータの準備をサポートする。
――ファイルの中身を見分ける際に生成AIを活用しているとのことですが、分類方法をお教えください。
瀧沢 DataXrayのデータ分類方法は3種類あります。1つめは、正規表現や辞書ベースのパターン認識など、文字の一致に基づく従来型の方法です。2つめが、生成AI機能を使うものです。自然言語で作成した定義ルールに則って、AIが文書の内容を読み取り、契約書、見積書など文書そのものを分類します。その際、分類だけでなくファイル内にどんな情報が入っているのかを具体的に抽出し、人名や電話番号など個人情報が含まれていることも可視化します。最後の3つめは、それらをまとめて社外秘か部外秘か公開可能かを判定し、ラベルを付与して分類する方法です。
――企業がDataXrayを導入しデータを可視化・分類する際にはどのような手順を踏むのでしょうか。
瀧沢 前提として、どの情報を機密として扱うかを社内で定義しておく必要があります。そのうえで「契約書は社外秘として扱う」「個人情報が入っているものは公開しない」などのルールを、DataXrayの「Extractor」というツールで自然言語のプロンプトとして指定し、分類していきます。
また、「Workflow」機能によって、複数の処理を段階的に組み合わせることも可能です。例えば契約書から個人情報を抽出したい場合は、ステップ1で契約書を見つけ、ステップ2で個人名や住所、電話番号といった契約元・契約先の情報を抽出する処理を組みます。これによりデータを自動で選別し、「AIに何を読ませるべきか」の管理が可能になります。
既存商材・技術の価値を高める4つのシナリオ
――これからDataXrayをどのように市場に展開していきますか。
松居 現在4つのシナリオを用意しています。
1つめは、「生成AIソリューションベンダーの差別化支援」です。
生成AIソリューション単体では、機能面での差別化が難しいケースがあるかもしれません。そこでDataXrayを組み込むことで、「適切な情報を参照できる生成AI」や「機密データを分類・保護したうえで活用できる生成AI」として提案できるようになります。これにより、生成AIソリューションベンダーは、単なる生成AIの提供にとどまらず、情報ガバナンスやセキュリティまで含めた提案が可能になります。
2つめは、「セキュリティソリューションリセラーの差別化支援」です。
SIEM/UEBAや内部不正対策ソリューションにDataXrayを組み合わせることで、機密データの所在や利用状況を可視化できます。これにより、従来のログ分析や不正検知だけでは見えにくかったデータリスクへの対応を支援し、リセラーの提案価値向上や差別化につなげることができます。
3つめは、「RAG構築サービスの付加価値向上」です。
企業でRAGを導入する際には、参照データの整理や分類が回答精度を左右する重要な要素となります。DataXrayを活用することで、RAGに取り込むデータの棚卸しや分類を効率化・高度化できます。そのため、SIerやコンサルティング会社は、RAG構築に加え、データ整備サービスまで含めた提案が可能になります。当社としても、RAG構築の知見を持つSIerやコンサルティング会社との協業を推進していきたいと考えています。
4つめは、「文書管理システムの高度化支援」です。
従来の文書管理システムでも、OCRによる文字認識は可能です。しかし、認識後の文書分類や管理には手作業が残るケースも少なくありません。DataXrayを組み合わせることで、文書内容に応じた自動分類が可能となり、文書管理の効率化と精度向上を実現できます。これにより、文書管理システムベンダーや販売パートナーは、ソリューション価値の向上を図ることができます。
――最後に、AI活用支援やセキュリティ提案に取り組むBCN読者へのメッセージをお願いします。
根塚 DataXrayは社内の情報の在りかを可視化するデータセキュリティ製品ですが、AI活用の加速でより大きな意味を持つようになりました。AI活用のキーワードである「AI-readyデータ」、つまりAIに取り込むデータを用意していくうえでも、今後AIエージェントの活用を進めていくうえでも、DataXrayは最適な仕組みを備えています。ビジネスの視点では、DataXrayは新しいカテゴリの製品であり、パートナーの皆さまが提供されているソリューションやサービスの価値をさらに高める可能性を持っています。また、その活用領域の広がりに伴い、パートナー企業やエンドユーザーの皆さまとともに新たなユースケースを創出し、さまざまな企業との協業機会も広がりつつあります。DataXrayを活用した新たな取り組みやお客様への提案にご興味がありましたら、ぜひお気軽にお声がけください。