設立50周年を迎えたアイオーデータ。液晶ディスプレイは「BCN AWARD」で10年連続の全国販売台数第1位、累計出荷は2000万台を超えた。部材のほとんどを海外に頼るこの分野で、日本のメーカーであることの価値は何か。アイオーデータ 第1事業部の北川典明・副部長と金田誠一・副部長(兼開発1課課長)、開発1課の有江奈緒子・リーダー、企画1課の駒井千恵・チーフリーダー、第3事業部企画3課の森田祥二郎・課長に話を聞いた。
(左から)アイオーデータ
第1事業部 企画1課 チーフリーダー 駒井千恵
アイオーデータ
第1事業部 副部長 北川典明
アイオーデータ
第1事業部 開発1課 リーダー ハードウェア担当 有江奈緒子
アイオーデータ
第1事業部 副部長 兼 開発1課 課長 金田誠一
日本の売れ筋に合わせる。100SKUで細かなニーズに対応
──アイオーデータの液晶ディスプレイは「BCN AWARD」で10年連続の全国販売台数第1位です。選ばれ続けている理由はどこにあるとお考えでしょうか。
北川 幅広いお客様に製品をお届けできていることが大きいと思います。カタログに載っているものだけで約100SKU(Stock Keeping Unit:在庫管理上の最小の品目単位)あり、さまざまなサイズや解像度、リフレッシュレートなどから選択可能です。家電量販店やECサイトだけでなく、法人向けのSIer経由など販売チャネルも広く、用途では法人が6割ほどを占めます。
もう一つは、日本市場に的を絞ってきたことです。競合の多くは世界共通で売れる製品に力を入れる傾向があります。画面サイズなら世界の売れ筋は23.8型、次いで27型です。一方、日本では21.5型にも根強い需要があり、そうした違いに合わせたラインアップを心掛けています。
日本にエンジニアを抱えているからこそ、 設計や生産を改善していける
──液晶ディスプレイの企画開発において、アイオーデータの強みは何だとお考えですか。
金田 今のディスプレイは、サプライチェーンのほぼすべてが台湾や中国にあります。そこで生まれた製品を日本向けにローカライズし、法規制に合わせて販売するだけでも、事業としては成立可能です。
ただ、それだけでは日本のお客様の期待に十分に応えるのは難しい。数々の経験を通じて、身をもってそう感じてきました。当社には企画・開発・評価を担うエンジニアが数十名います。日本で企画し、日本で検証し、いざとなれば自ら設計もできる。その体制を維持していることこそが、当社の強みです。
故障率を下げるため高信頼の部品を使い、設計上のマージンを取れば、その分はコストに跳ね返ります。「高価かつ高品質」「安価だが品質も値段相応」のどちらかに振るのは比較的簡単ですが、その間にある「リーズナブルな価格だが期待以上に満足いただける品質」とはどのレベルなのかを見つけることがとても難しい。それでも、数千台、数万台の出荷規模では分からないことが、数を重ねると見えてきます。当社の体制であるからこそ、すぐに設計や生産に反映できるのです。
主力シリーズを刷新。 ペーパースリットは金型の工夫から
──8月26日には主力の「LCD-Aシリーズ」(以下、Aシリーズ)をフルリニューアルされました。当シリーズの位置付けと、今回のこだわりをお聞かせください。
北川 Aシリーズは当社のディスプレイ販売数において中核を担う最廉価のスタンダードモデルです。価格の制約の中で、品質とコストを高い水準でバランスさせています。
多くの販売実績を誇る主力モデルの「LCD-Aシリーズ」
駒井 「安定供給」と「お求めやすい価格」は外せない条件です。その中で、お客様に最も近い立場からどう寄り添うかを考えました。
今回は、昨今進んでいるオフィスのフリーアドレス化を踏まえた工夫を入れました。高さを変えられるフリースタイルスタンドモデルを追加し、ノートPCを下に置いて目線の移動を少なくすることで疲れを軽減し、省スペースにも設置可能です。スタンドネックには、ミニPCを取り付け可能な機構を盛り込んでいます。リフレッシュレートは100Hzに高めました。
もう一つは、ディスプレイ上部に名刺や行き先を記した紙を差せる「ペーパースリット機構」です。フリーアドレスのオフィスでは「誰がどこに座っているか分かりにくい」というお声があり、その解決策として設けました。狭額縁ディスプレイはフレーム部分に紙を貼れないので、その代わりにと考えたものです。金型に溝を設けるシンプルな構造のため、価格への影響も最小限に抑えました。私たち自身も同じフリーアドレス環境で働いているからこそ、このアイデアを出せました。
メモなどを挟める「ペーパースリット機構(特許出願中)」
本体も必要以上に薄くしていません。その代わり背面の持ち手で、画面に触れずに安全に設置できます。
──同日発表のディスプレイ設定アプリ「MoniSet」には、どういった特徴がありますか。
駒井 MoniSetはAシリーズに限らず、当社製ディスプレイの多くのモデルに対応します。ディスプレイ本体の設定やWindowsの設定をアプリ上に登録しておけば、その日利用する座席でも、すぐに同じ設定に切り替えられます。会議室で画面を共有する場合にも、時間をロスせずに会議を始められます。
接続するモニターが変わるたび繰り返していた設定変更のストレス。
MoniSetを使えば、いつもの設定を保存し、スムーズに作業を再開できる。
「アイオーデータらしさ」を6つの言葉に。 安心感を言語化する
──液晶ディスプレイは「アイオーデータらしさ」が最もよく表れている製品と伺っています。具体的にはどのような点でしょうか。
有江 今回、当社らしさとは何かを言葉にするため、あらためて当社の製品を振り返りました。そして、確かさ・優しさ・易しさ・親しさ・多様さ・今らしさ、この6点がそろってアイオーデータらしい「安心感」になると整理しました。
使う人に「安心感」をお届けする、アイオーデータのディスプレイ
「確かさ」は品質です。回路設計はもちろん、ボタンやスタンドの耐久性まで考えています。湿度の高い場所での長期使用や、毎日電源を切って帰る使い方も想定しました。
「優しさ」は使う人への配慮です。ペーパースリット機構や背面の持ち手のように、必須ではないけれど付いていると嬉しい機能を具体化しています。
「易しさ」は使いやすさです。設定メニューに手を入れ、モデルによってはリモコンも添付。設置が簡単なスタンドのワンタッチ取り付け対応モデルもあります。
「親しさ」はお客様との距離です。国内のイベントなどで企画や開発の担当者も直接お話を伺い、声を仕様に反映しています。
「多様さ」は組み合わせの幅です。STB(セットトップボックス)やスタンド、ネットワーク製品もそろえ、自社製品同士の互換性を確認したうえでソリューションとしてご提案できます。
「今らしさ」は時代への追随です。新Aシリーズは今のデスク環境になじむシンプルなデザインで、ゲーミング向けではMini LEDや有機ELも取り入れています。
液晶ディスプレイは「このメーカーの機種でなければ」という決め手が見えにくい製品かもしれません。それでも選ばれ続けるために、当社ならではの要素を増やして、「これはアイオーデータだな」と言っていただけるようにしたいですね。
表示から運用まで一括で。 サイネージは2万3000台規模の導入実績あり
──「多様さ」ではサイネージも挙げられています。STBを含めたソリューションでの強みをお聞かせください。
金田 ディスプレイ、STB、管理システムの3点セットでサイネージ環境をまとめてお届けする戦略を掲げています。ライトな用途ならメディアプレーヤー機能を搭載したディスプレイ単体でも完結し、最小限のコストで始めることが可能ですし、そこからのステップアップとしてSTBとコンテンツ管理を組み合わせた本格的なサイネージにも対応します。
大量導入では、行政機関で約9000台、コンビニエンスストアチェーンで約2万3000台といった実績があります。後者は店内の商品以外の外部の広告も流す媒体で、画面が出なければ広告のビジネスモデルが成り立ちません。24時間365日対応の保守体制を、信頼できるパートナーも交えて組み上げました。
──STBや管理システムには、どういった特徴があるのでしょうか。
森田 STBは20年ほど前から取り扱っており、2015年頃から広告用途が広がりました。
管理システムは、無償でプリインストールされる「IDM」(アイオーデータ・デバイス・マネージャー)と、有償オプションの「IDMサイネージ+」があります。IDMはデバイス情報の取得や死活監視に対応します。IDMサイネージ+ではデバイスログの取得やスケジュールでの制御などのより高度なデバイス管理を実現可能です。
無意識に使えて、不満がない。 その「あたりまえ」を守る
──日本の市場と向き合い続けてこられた企業として、これからどのような価値を提供していく考えでしょうか。
金田 当社はメーカーです。この20年、PCやテレビ、ディスプレイと、ものづくりの多くが海外に移りましたが、当社はここ日本でメーカーとしてあり続けています。そこに存在するのは「誇り」です。サプライチェーンは海外に頼っていますが、エンジニアを抱え、日本のお客様に最も近い立ち位置で、その声に応えられるものづくりを、これからも変わらずに行っていきます。
ディスプレイは、無意識にお使いいただいて「何の不満もない」状態が最高だと考えています。特別に素晴らしいと感じられるよりも、不満がない。その「あたりまえ」を大切にしていきたいです。
北川 オフィスワーカーなら、1日のうちディスプレイに向き合う時間が最も長いことも多いはずです。「疲れにくいように」「不便を和らげるように」と常に考えています。国内メーカーとして365日対応のサポート体制も用意しました。「あたりまえ」を真摯に届け続けることが、私たちらしさだと思います。