景気拡大と情報化投資の回復を受けて、IT産業は新たな成長のステップに立とうとしている。 経済産業省によれば、情報サービス業の7月の売上高は、前年同月比3.5%増で7か月連続の増加。うち主力の「受注ソフトウェア」は同6.1%増で15か月連続の増加、「システムインテグレーション」は同9.1%増と、いずれも力強い成長が続いている。
活発な情報投資の背後にある技術革新の流れは、ユーザーのシステム環境を一新させるだけでなく、システム産業のあり方にも、大きな変化をもたらそうとしている。レガシーからオープンへの本格的な移行、NGNに代表される新しいIPソリューションの拡大、そしてソフトのサービス形態や開発手法に至るまで、これまでの技術蓄積やビジネスモデルでは対応できない急激な変化が足もとに迫りつつある。
技術の進化は成長をもたらす。同時に、成長の波は産業構造を揺り動かし、激しい淘汰と再編の引き金ともなる。生き残るためには何が必要になるのか。本紙では、5年後のIT産業を語るうえで欠かせない5つの「地殻変動」をキーワードに、今号から3回連続で新しい産業の姿を特集する。
創刊25周年を迎えて

──パソコン産業の黎明期に立ち会えた喜びと、
支えてくださった読者の方々への感謝を込めて──
株式会社BCN社長 奥田喜久男
■最初の読者は最高の師 1981年10月15日に
第1号を発刊。「僕が第1号読者だ」といって購読料を手渡してくれた人がいる。その小林一作さん(情報科学研究所)は3年前に亡くなった。最初の出会いは71年だった。記者一年生のときに、まったく、わけの分からないコンピュータの知識を得るために購入した本が『情報選択の技術』(日経新書)、69年の初版だった。その後、著者の小林さんに会って直に話を聞いた。ずいぶんお酒の好きな方で、ご相伴にあずかった。会えば酒盛りであった。
小林さんの著書と言動から得たものは、過去から明日への時の継続と、人間と他のものとのインターフェースがその論点の中心になる、ということだ。「これは情報処理の世界においても例外ではない」と力説しておられた。アルコールが入っているから、語気は一段と鋭い。だが、コンピュータの知識を学びたいと願う側にとっては雲をつかむような話ばかりで、ただ徳利の数だけが増えた。
私にとっての幸運が訪れた。値段の高い大型コンピュータの次に、オフコンが誕生した。中小企業でも導入できる価格だ。このクラスのコンピュータがますます盛んになった。大型コンピュータとオフコンの機能は基本的に同じだ。しかし、販売形態が違う。それまでのコンピュータはメーカーが直接、売っていた。オフコンはメーカー以外の第三者が販売する製品として市場が拡大した。日本全国のオフコン代理店を取材してわが国のコンピュータの普及状況を“五感”で感じ取った。
■秋葉原で目撃したマイコンの衝撃 さらに幸運がやってきた。パソコンの誕生だ。ある日、秋葉原に立ち寄ったらオフコンとまったく機能が同じで、価格は格段に安いコンピュータが店頭に並んでいるのが目に飛び込んできた。当時はマイコンとも呼ばれていたものだ。20代の若者でも買える値段だ。「日本中の人がパソコンを買うとしたら…」。その規模に驚いた。代理店販売のスケールは巨大だ。
その感動をもとに
『週刊BCN』は誕生した。日本全国の市場をもってわが国のパソコン市場と成す。47都道府県を10回巡った。数値の定量情報によって徹底して市場規模を把握した。数値にこだわり続けて25年、製品販売の格付け
「BCNランキング」はこうして生まれた。当時、年間400億円の産業が4兆円に達して、成熟期を迎えた。技術は携帯電話や家電とインターネットの融合を生み、デジタル市場は爆発的に拡大した。
■次なる25年に向けて 「技術は市場を創造します。市場の成長は社会の原動力となります」 。BCNはモノ作りの夢を育む人たちを応援します。過去から明日へ、人間と他のものとのインターフェースを論点として。 『週刊BCN』は次の25年に向け、新たなスタートを切ります。その第1号をここにお届けします。