カラー印刷速度の高速化が後押し
中小は、より顕在化
■順調に推移するカラー化率 70%を目指すメーカーも プリンタ系事務機メーカーのデジタル複合機(MFP)出荷台数に占めるカラー化率は、単機能プリンタに比べて進んでいる。リコーは今年度(2007年3月期)上期で、カラーMFPの出荷台数が初めて全体の50%を超えた。他社に先駆け昨年末から順次、「カラー印刷速度を高速化した『imagio MPCシリーズ』6機種を一新してきた」(武田健一・商品計画室室長)ことが奏功し、垂直に近い立ち上がりをみせた。下期には、カラー化率が60%に達する見込みだ。
キヤノンMJは、2月にモノクロMFPの新商品「SateraMFシリーズ」4機種を発売したため、「上期(1-6月)はモノクロ販売を推進した」(岩屋猛・ビジネスドキュメント機器商品企画部部長)という。この影響で上期はMFPのカラー化率が40%程度に落ち着いた。ただ、5-9月にかけて、印刷速度を上げたカラーMFPを順次発売し、「上期(1-6月)にカラーMFPをすべて揃える計画が若干遅れたが、7-9月の実績は、MFP出荷の50%がカラー化した。上期全体で『カウンター機』だけでは、60%に達した」と満足気な様子だ。
富士ゼロックスは、01年度(02年3月期)から、MFPの出荷台数に占めるカラー化率を60%に高める戦略を進めてきた。この目標値は、「今年度(07年3月期)中に、ほぼ達成する」(岡崎宏晃・販売本部マーケティング部部長)見通しだ。
同社では、2-3年後にMFPのカラー化率が70%程度にまで上昇するとみている。「企業内のドキュメントはカラー化が進展。(カラー化率70%に向け)極端な障害はない」(岡崎部長)と、全国34か所に展開する自社の「販売会社」に加え、最近では基幹システムを構築するSIerと連携した拡販を強化している。11月初旬には「情報セキュリティ」対応のカラー中高速機の製品群を強化。「企業サイドから出た要望を取り入れた」と、新たな市場を開拓する。
プリンタ系事務機メーカーのカラーMFPは、今年に入り急速に需要が増した。各社は、モノクロに比べ高価な交換トナーやコピーチャージなどの単価アップにつながり、業績を大幅に押し上げることに成功した。だが、一部にはMFPの価格競争が始まり、単価下落を懸念するメーカーもある。
どのメーカーが価格競争を仕掛けているのか、リコー、キヤノンMJ、富士ゼロックスの大手3社からは、言質が取れていない。キヤノンMJの岩屋部長は「年度末に向けて民需ではカラーMFP販売で攻勢をかける」というものの、官公庁向けでは「アグレッシブにならない」と、官公庁向けの営業を見直すことを示唆する。理由は、入札価格が低く「価格がこれ以上下落すれば、保守などでの訪問回数が減り、サービス低下を招く恐れがある」ためだ。
■印刷速度の競争ステージに突入 毎分40枚が標準に  |
ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)が集計した今年上期(1-6月)の事務機械出荷統計によると、国内外の総出荷金額は前年同期比99.4%とマイナスとなった。他品目が減少するなか、複写機・複合機は、0.2ポイント増加した。 このうち、国内複写機・複合機の出荷台数は、アナログ機が2万8010台(前年同期比81.1%)、デジタル機が17万5607台(同76.5%)と、いずれも減少した。その一方で、フルカラー機は14万8769台で、121.2%と成長している。全体に占めるフルカラーの割合は、約42%になっている。大手3社のMFPカラー化率は60%に迫る勢い。単機能機に比べ、MFPが先行してカラー化率の進展ぶりを示している。 | | | |
大手3社の最新カラーMFPは、以前に比べ印刷速度を高速化しているのが特徴。平均のカラー出力は毎分「40枚」の時代に突入した。
富士ゼロックスが、11月初旬に出した「ApeosPort─II」と「DocuCentre─II」の両シリーズは、A4ヨコでカラー毎分50枚を実現した。富士ゼロックスは「これまで、高速出力の上位機種がなく苦戦する場面もあったが、これにセキュリティ機能を強化することで、需要を拡大できる」(岡崎部長)と、リコーやキヤノンMJのMFPから買い換え需要を掘り起こす。
リコーは、印刷速度の高速化に加え、定着部に「カラーQSU(IH定着方式)」を搭載して、カラーのウォームアップタイムを約29秒程度に短縮した。従来機に比べ、3分の1で高速立ち上げできるため「ICカードをMFPにかざし、個人の印刷だけを出力する際に待機時間が減り、使い勝手を高めた」(武田室長)と、基本機能の改善を訴求することで、出荷増につながっているという。これと同様の機能は、キヤノンMJの新商品にも「カラーオンデマンド定着方式」として搭載されている。
大手3社は今年に入り、印刷速度や印刷サイズ、内部統制などに対応した「セキュリティ機能」などを比較して、自社商品に不足していた部分を補う商品ラインアップを揃えている。リコーの武田室長は「最近は、電子ファイルをMFPで取り込み、これを部門にあるカラーの単機能プリンタで出力する使い方も出てきた」と、サーバーやストレージ機能などを持つカラーMFPを導入することで、プリンタ市場のパイが拡大しているようだ。
一方、プリンタ系で4サイクルエンジンのカラーMFP「Offirioシリーズ」を出すエプソン販売の上期(4-9月)は、全体で前年同期比150%と伸びた。新規にMFPを導入する企業は3割、モノクロの買い換えのうちの3割がカラーを選択するという。「当社が主力とする中小企業のほうが、中堅大企業に比べ、カラー化ニーズが顕在化している」(織戸司郎・商品企画部部長)とみている。
だが、「販売会社にラインアップが徹底されず、建築業などで取りこぼしがあった。型番を統一する予定で、再度、ラインアップを告知していく」(同)と、大手3社などの中小企業向け商品に対抗していく。下期は、カラーMFPの出荷台数を前年同期に比べ20%程度伸ばす計画だ。
カラーMFPが企業内に浸透することで、セキュリティ機能や文書管理など新たな付加価値を追加するチャンスが生まれている。国内MFP市場は成熟し、企業内のMFPもマルチベンダー化している。こうした付加価値を提案することで、他社のMFPを自社商品に入れ替え、単独メーカーの統一規格でプリンタを運用する企業を増やそうとしており、「刈り取り合戦」が激化することが予想される。