日本ヒューレット・パッカード(日本HP、小田晋吾社長)はブレードサーバーの出荷台数を今年度(2007年10月期)倍増させる。高度な開発技術が求められるブレードサーバーの出荷を増やすことで、シェア争いで火花を散らすNECやデルなどライバル企業に差をつける戦略だ。ブレードサーバーはまだ引き合いが増え始めた段階で、本格的な“実需”はこれから。大きな伸びが期待される需要の立ち上がりを的確に捉えられるかどうかが勝負の分かれ目になりそうだ。
シェア争いで優位狙う
昨年度(06年10月期)、日本HPのPCサーバーの出荷台数は約25%増と市場の伸びを大幅に上回る実績だった。今年度も同様の高い伸びを目指し、なかでもブレードサーバーは倍増させる。昨年度、PCサーバー全体に占めるブレードサーバーの構成比率は約8%だったが、今年度は15%を見込む。母数が小さいだけに、PCサーバー全体の伸び率を大幅に上回る見通しだ。
ブレードサーバーは従来のタワー型やラックマウント型のサーバーに比べて集積度が高く、高度な技術が求められる。サーバー統合やオンデマンドサービスなどでの需要が多いことから仮想化技術などミドルウェアの開発も欠かせない。付加価値を生む余地が多く粗利が大きいことが魅力だ。
ベンダーによっては、ブレードサーバーの開発競争から取り残されることも予想されるだけに、日本HPではこの分野でいち早くシェアを固め、PCサーバー市場での競争を優位に進める構え。
ブレードサーバーを巡っては、タワー型に比べて割高なことや導入実績がまだ少ないなどの理由で、業界全体が模様眺めの様子だった。だがユーザーから見れば他のタイプに比べて保守運用の効率がよく、拡張性も格段に高い。こうしたメリットがあることから「今年はブレードサーバーの本格普及が見込める」(上原宏・エンタープライズストレージ・サーバ統括本部インダストリースタンダードサーバ製品本部本部長)と予測。引き合いが大きいことを受けて強気の出荷目標を掲げた。
中期的には2010年10月期でブレードサーバー25%、タワー型25%、主力のラックマウント型50%のPCサーバー出荷台数全体の構成比をイメージする。伸び率が最も大きいのはブレードサーバー、次がラックマウント型。市場全体でみれば台数ベースで毎年1-2%ずつ縮小すると予測されるタワー型も伸ばす。
日本HPはこれまでタワー型に弱く、台数シェアは10%ほどしかない。見方を変えれば「他社攻略の余地は十分にある」(橘一徳・エンタープライズストレージ・サーバ統括本部インダストリースタンダードサーバ製品本部ビジネスプランニング部部長)と前向きだ。今年3月下旬までタワー型の売れ筋2機種をそれぞれ2007台限定で半額にする販促活動を展開するなどテコ入れに余念がない。
PCサーバー市場でトップに立つためにはラックマウント型やタワー型で確実にシェアを取ると同時に、伸びが大きいブレードサーバーで何としても勝たなければならない。NECや富士通、デルなど競合他社もブレードサーバーの動きに神経を尖らせる。様子見だったユーザーが今年一気に購入へと動く“本格需要”が到来する可能性は十分にある。日本HPはブレードサーバーの需要拡大で弾みをつけることで、PCサーバー市場トップシェアに迫る考えだ。
●PCサーバー市場の動向
国内PCサーバー市場は今年度(07年3月期)過去最高の60万台の出荷台数に達する勢い。前年度比十数%増の伸び率となる見通し。06年度上期(06年4-9月期)のベンダー別出荷台数シェアではトップのNECが優勢。日本HPはデルと激しい2位争いを展開している。07年度も同様の伸びが見込まれており、上位争いがより激しさを増すのは必至だ。