その他
10秒前に大地震を知ったら? 「緊急地震速報」ビジネスが急拡大
2007/04/23 14:53
週刊BCN 2007年04月23日vol.1184掲載
気象庁が昨年8月に特定領域で提供を開始した「緊急地震速報」関連のITビジネスが注目されている。地震の初期微動を感知して揺れまでの到達時間や震度を知らせる同庁の仕組みを利用して、速報データをオフィスなどに情報配信する受信装置や通信関連のシステムサービスの提供が増加中。大地震発生まで「10秒あれば大半の命は助かる」といわれているが、地震がくることを数秒から数十秒前に知る装置があれば、生産ラインやエレベーターの制御、避難などの早期対応ができ、より安全な対策が打てる。9月からは一般家庭への提供も始まる。速報とIT機器、ネットワーク環境などを組み入れたソリューション展開が急拡大しそうだ。(谷畑良胤(本紙副編集長)●取材/文)
受信装置とネット事業が花開く
■避難する“余裕”を生み出す
3月25日に石川県能登を襲った「能登半島地震」では、気象庁が初めて「緊急地震速報」を出した。地震直下の輪島市では揺れた後の通報だったが、震度6弱を観測した能登町では大きな揺れがくる5秒前に知らせが届いた。遠く、東京・大田区役所が減災を目的に設置した3 Soft ジャパンの緊急地震速報受信装置「デジタルなまず」(下図内の写真)は、「震度2まであと80秒」と速報を発報した。
3 Soft ジャパンのこの装置は、受信した気象庁の速報を基に、予想到着秒数と予想震度を瞬時に計算し、音声と電光掲示板で知らせる。設置場所の北緯と東経を入力しておけば正確な速報を得ることができる。気象庁の同速報は、こうした装置がなければ「関東地方に強い揺れがくる」程度の曖昧な情報しか得ることができない。
「デジタルなまず」は、沖電気工業の半導体工場や東京・足立区の千住小学校、小田急電鉄のほか、東京・立川市の医療センターなどに約1000台を販売した。多くのオフィスや事業所にある書棚やパソコンなどは、大地震の際に人身への危険物となる恐れがある。工場や倉庫、工事現場など危険個所でも、危険に晒される前にこうした装置を使い、日頃から逃げる訓練をすることで減災につながる可能性が高い。
気象庁の「緊急地震速報」は、日本全国に合計1000台以上設置した高性能地震計で、発生直後の初期微動を「気象業務支援センター」で算出。データ配信サービス事業者に伝え、ネットワーク経由で「デジタルなまず」などの装置に伝達する。
■市場規模は年間3000億円
ネットワーク機器メーカーのコレガは、3 Soft ジャパンと提携し、「当社のファイアウォールなどネットワーク機器と組み合わせ販売や、一部ネットワークのポートを開く必要があり、設置事業も手がける。また、携帯電話向けのマルチキャスト配信、地震時のサーバー保護などに関するサービスを始める」(加藤彰社長)予定だ。
3 Soft ジャパンの片桐隆夫・営業部長代理は「これまでの地震対策は、地震発生後の復旧を目的にした『備蓄型』だった。しかし、当社の装置を使い何秒前から地震到達を知る環境にあれば、例えばこの装置と連動してサーバーの安全対策を講じるなど、さまざまなソリューション展開が考えられる」と、一般家庭向けの配信が始まることもあり、複数の販社と提携して今後1年間で2万5000-3万台を販売することを目標にしている。
このほか、NTT東日本がIPテレビ電話に速報を配信するサービスを始めたほか、三菱スペース・ソフトウェアとJFEシステムズが共同開発して端末の販売を開始したり、宇宙通信が衛星通信を利用して速報データを顧客の受信機に配信するサービスを始めるなど、参入IT企業が相次いでいる。「緊急地震速報」の市場規模は、年間3000億円以上との予測もあり、一般家庭への配信を契機に、関連ビジネスが一斉に花開きそうだ。
気象庁が昨年8月に特定領域で提供を開始した「緊急地震速報」関連のITビジネスが注目されている。地震の初期微動を感知して揺れまでの到達時間や震度を知らせる同庁の仕組みを利用して、速報データをオフィスなどに情報配信する受信装置や通信関連のシステムサービスの提供が増加中。大地震発生まで「10秒あれば大半の命は助かる」といわれているが、地震がくることを数秒から数十秒前に知る装置があれば、生産ラインやエレベーターの制御、避難などの早期対応ができ、より安全な対策が打てる。9月からは一般家庭への提供も始まる。速報とIT機器、ネットワーク環境などを組み入れたソリューション展開が急拡大しそうだ。(谷畑良胤(本紙副編集長)●取材/文)
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