その他
キヤノンMJ アルゴ21に次ぐSIer買収加速か?
2007/06/04 21:10
週刊BCN 2007年06月04日vol.1189掲載
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ、村瀬治男社長)は5月17日、開発系SIerであるアルゴ21(太田清史社長)に対する友好的なTOB(株式公開買い付け)で、同社を子会社化する(5月28日付「SIerの憂鬱」で既報)。キヤノンMJは「ITS(ITソリューション)3000億円計画」を掲げ、主力事務機器を中核にしたITSを急拡大するため、M&Aを積極化している。アルゴ21の買収により、同社が得意とする金融や公共関連市場の拡大を狙う。すでに、製薬子会社のM&Aで医療業に進出済みで、この先、ドキュメントが大量発生する業界に対応していくために、さらなるSIerの買収が予想される。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
文書が大量発生する業界を“的”に
ITソリューション3000億円目指す
■3月の蝶理に続きM&Aを
村瀬社長は昨年5月、本紙のインタビューに「ITS3000億円は、コツコツ積み上げるだけで達成できない」と、M&Aを積極化すると示唆していた。その言葉通り、今年3月に通信分野を得意とする蝶理情報システム(現・キヤノンソフト情報システム)を傘下に収め、その2か月後に“独立系SIerの雄”と呼ばれるアルゴ21を手中に入れる。
キヤノンMJの昨年度(2006年12月期)連結売上高は8671億円。このうち、ITSは1418億円を占める。5月16日に開いた記者会見では、これを09年度までに1900億円に拡大するとの目標を示した。しかし、「ITソリューション業界で確固たる地位を築く」(村瀬社長)ために、野村総合研究所や日本ユニシス、伊藤忠テクノソリューションズなど「第2グループ」と肩を並べるための目標値、売上高3000億円にするには、かなりの高速巡航が必要になる。
昨年までの主な買収事案としては、03年に住友金属システムソリューションズ(現社名はキヤノンシステムソリューションズ・略称CSOL)を子会社化。翌年、CSOLはSAPジャパンと業務提携し、製造、流通、金融など向けの基幹系システム分野を強化した。さらに、06年にはCSOLがアステラス製薬の情報システム子会社、FMSを買収し、医療ソリューションの拡大に着手している。
アルゴ21は、今回のTOBに同意している。買い付け上限を設けていないため、上場廃止してキヤノンMJの子会社になることは確実だ。キヤノンMJは、08年をめどにCSOLと事業統合する方針。CSOLは金融のうち銀行業に強みをもつが、野村証券と関連が深いアルゴ21が得意とする証券業や損保業向けのシステム構築力を手にすることで、新たな顧客開拓を狙うことができそうだ。
■プリンタを軸とする市場に注力
キヤノンMJがビジネス市場で主力とするプリンタやデジタル複合機(MFP)販売では、単なる“箱売り”にとどまらず、ユーザー企業の要望に応じ、セキュリティや内部統制上の文書管理、ネットワーク環境などを効果的に構築することが必須だ。
昨年7月には、印刷会社や大企業内のオンデマンドプリントを担うデジタル商業印刷機「imagePRESS」を自社開発し、富士ゼロックスの牙城である「高速基幹プリンタ市場」にも参入した。これら基幹プリンタは、サーバーやERP(統合基幹業務システム)の導入、受託ソフト開発など基幹システムのノウハウが必要になる。このため、内部で不足する開発リソースを得るため、M&Aなどを積極化していると推測できる。
ここまでの買収で、金融と医療業界向けの顧客基盤を得ることはできそう。キヤノンMJが元々得意としていたキヤノン製品の製造工場など向けの生産工程自動化「ファクトリーオートメーション(FA)」分野ではこの先、組み込みソフト開発の大量発生が予想される。ここでも、アルゴ21の組み込み開発技術や人員が生かされ、相乗効果を図れそうである。
村瀬社長は記者会見で、記者に今後のM&Aの有無を問われて、「あるかもしれないし、ないかもしれない」と、将来的なM&Aを否定していない。ITS3000億円を目指し、今後もドキュメントが大量発生する業界に顧客基盤をもつSIerを買収し、リコーや富士ゼロックスの追随を許さない体制を築こうとしているようだ。
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ、村瀬治男社長)は5月17日、開発系SIerであるアルゴ21(太田清史社長)に対する友好的なTOB(株式公開買い付け)で、同社を子会社化する(5月28日付「SIerの憂鬱」で既報)。キヤノンMJは「ITS(ITソリューション)3000億円計画」を掲げ、主力事務機器を中核にしたITSを急拡大するため、M&Aを積極化している。アルゴ21の買収により、同社が得意とする金融や公共関連市場の拡大を狙う。すでに、製薬子会社のM&Aで医療業に進出済みで、この先、ドキュメントが大量発生する業界に対応していくために、さらなるSIerの買収が予想される。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
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