IEEE802に準拠したイーサネット規格の標準化団体「イーサネットアライアンス」は、ネットワーク機器メーカー各社が100ギガビットイーサネット対応の製品開発に意欲的であることを明らかにした。NTTの“NGN構想”など世界各国の通信事業者が進める次世代通信網の構築ニーズに対応するため。通信事業者によるネットワークリプレースを促すことにより、高速イーサネット製品の需要をさらに掘り起こしていく狙いがある。
通信事業者のニーズに対応
映像/音声のIP化狙う
「イーサネットアライアンス」は、2006年1月に米国で設立された団体。シスコシステムズやファウンドリーネットワークス、エクストリームネットワークス、ノーテルネットワークス、スリーコムなど大手スイッチメーカーが名を連ねるほか、インテルやサン・マイクロシステムズなども加盟している。新しいイーサネット技術の検証などにより、ネットワーク機器市場の拡大を促すことを目的としている。また、イーサネット技術そのものを成長させる活動も積極的に展開している。
取り組みの1つとして進めているのがイーサネットの高速化。100ギガビット対応の製品開発を各メーカーに促しており、同団体では技術の支援や検証を進めている。ボード・ディレクターを務めるヴァル・オリヴァ氏(米ファウンドリーネットワークス)は、「100ギガビットに対応するには多くの課題がある。しかし、メーカーはいずれも、高速化を実現しなければならないことを認識している。2010年までには各メーカーが100ギガビットに対応した製品を市場投入できる状況にしたい」との考えを示す。
現在、市場では10ギガビット対応のスイッチが出回り始めたばかり。100ギガビットを視野に入れているのは、「通信事業者をはじめとしたサービスプロバイダによるネットワークのリプレースを活発にする」ことが狙い。世界各国では、大手通信事業者が新しいネットワークサービスの提供に向け、次世代通信網の構築を進めようとしている。しかし、思惑通りに運んでいないのが実情。回線提供とアプリケーションを組み合わせた新しいサービスを意識しているためだ。大手コンテンツプロバイダが通信事業者の構築したネットワークの利用でビジネスを拡大している一方、通信事業者が大規模なネットワークリプレースを行っても、既存の回線提供だけでは採算が合わない。「コンテンツプロバイダのサービスを奪うというわけではないが、通信事業者にとっては次世代通信網で何としてでもビジネス領域を広げたいと考えている」。こうした状況のなか、メーカーの立場としては高速ネットワーク対応の製品開発が可能なことをアピールする必要があるとの判断だ。
また、通信事業者のリプレースが進むことで、法人向け事業の拡大にも効果が出てくるという。法人市場で10ギガビット以上のスイッチ需要が主流になれば、映像や音声のIP化が一段と進むとの見方が有力だ。しかし、「思ったよりも映像のIP化を実現したソリューションに対する需要が伸びていない」状況にある。
通信事業者が次世代通信網で映像や音声、業務関連などのアプリケーションサービスを提供するようになれば、そのサービスを受けるユーザー企業にとってもネットワーク環境の高速化を図らなければならないケースが出てくる。つまり、メーカー側にすれば、10ギガビット対応のスイッチを拡販できる環境が生まれるわけで、100ギガビットの開発は将来をにらんだ布石となる。