オービックビジネスコンサルタント(OBC、和田成史社長)は、年商300億円以上の企業での利用を視野に入れたERP(統合基幹業務システム)「奉行V(ぶぎょうブイ)ERPシリーズ」を10月に発売する。マイクロソフトの次世代開発環境「C#」を活用した64ビットネイティブ製品だ。将来的には、既存の下位製品を同じ開発ベースに統一する。中小企業向けにはSaaS(Software as a Service)型でも提供を検討している。「奉行シリーズ」を活用して親会社から子会社まで同一データベースで一貫した管理が可能になる。企業グループ全体での内部統制強化の要求が高まるなかで、同社製品がERP市場の急先鋒として浮上しそうだ。
将来的にはSaaS型提供

「奉行V ERPシリーズ」は、中堅・中小企業向けの「奉行シリーズ」で最上位版になる。会計、人事・給与、販売管理に加え、内部統制に対応した統合運用管理ツール「OBC Management Studio」がラインアップされた。従来は、カスタマイズで対応してきた会計のセグメント管理や販売管理のロット管理などを、専用オプションとしてパッケージ化して提供。手組み開発部分を減らして納期を短期化する。
これまでの最上位版「奉行新ERP」などの導入・開発では、要求レベルが年々高まり、カスタマイズ内容が複雑化する傾向にあった。このため「対象の企業規模が大きくなるにつれて、『奉行新ERP』などのカスタマイズに限界が出てきた」(中山茂・常務取締役)と、2001年からこれまでに開発費100億円を投じ、拡張性の高い「C#」プロトコルで、パフォーマンスと拡張性の高い上位製品として開発を進めてきた。
「奉行V ERPシリーズ」は、マイクロソフトから業務ソフトウェアで国内初、世界でも2例だけの「Certified for Windows Vistaロゴ」を取得した。
開発環境では、他社製品との接続性やツールの拡充性を高める仕組みにしているのが特徴。データベース構造やAPI、開発技術環境、開発ツール(SDK)などを公開、業種向けシステムを提供するSIerやISVなどのパートナーとシステム提供で役割分担し、システム構築の生産効率を上げる取り組みを本格化する。
さらに、税制改正や辞書プログラムなどを搭載してインターネット経由で最新システムにアップデートできるコア技術を採用したほか、XML/XBRL、NGNへの対応やインポート・エクスポートAPIを公開するなど、最新技術を採用。国内で広がりを見せるSaaS/ASP型など、将来的なソフト提供にも対応できる仕組みにした。これまで最上位版は「新ERP」と表記してきた。パッケージを組み合わせ統合型にしていた製品群であったからだ。新シリーズからは「新」を削除し、本格的なERPであることを打ち出している。

従来の「奉行シリーズ」は、商品コードが13桁までの対応だったが、「奉行V ERPシリーズ」は、20桁まで可能になり、32ビットと64ビットの両モードに同時対応しているため、「親会社から子会社まで奉行シリーズで一貫したシステムが構築できる」(和田社長)という強みをもっている。
J-SOX法施行を来年4月に控えるなど、企業監査が厳格になる傾向が強まり、グループ会社全体で一貫したシステムへの要求が高まっている。これまでは、親会社にSAPなどのERPを導入し、関連会社に国産ERPなどを採用する中堅・大企業が目立っていた。世界展開する国内企業ならともかく、国内中堅・大手企業では、奉行シリーズでグループ全体を予算や規模に応じ、クライアント/サーバー型やシェアードサービス型、Windows/ウェブフォーム型、将来的にSaaS/ASP型などで、一貫した財務・会計、販売管理などのシステムを自在に構築できそうだ。国産ERPの競合ベンダーが戦略転換を迫られる可能性は高い。