大手SIerの富士ソフト（野澤宏会長兼社長）は組み込みソフト用ミドルウェアのパッケージ化に力を入れる。ライセンス収入に加えて最終製品の販売台数に応じたロイヤリティ（使用料）を得ることを目指す。従来の受託開発型では一過性の売り上げしか得られず、案件の規模や数に大きな影響を受けるデメリットがあった。パッケージ化によって他社との差別化を図るとともに、収益の安定化を図る。

　同社では、主力の携帯電話や今後本格的な普及が見込まれる地上デジタルテレビ（DTV）放送対応のテレビ受像機用のミドルウェアパッケージを先行的に開発している。

　携帯電話では米クアルコムのチップセットをベースとしたミドルウェアをメインとして、ワンセグ放送やカメラなど携帯電話に求められる主要な機能をカバーできるよう開発を進める。DTV関連では、「すでに主要メーカーから引き合いが急増」（三本幸司・取締役）しており、早ければ年内にもロイヤリティ収入を見込む。

　以前、独自に開発した携帯電話向けの日本語変換ソフトでロイヤリティ契約をメーカーと結んだ実績があるものの、DTV関連では今回が実質初めてになる見通し。携帯電話でも中核的なミドルウェア領域でロイヤリティ収入が得られるよう開発や営業に力を入れる方針だ。

　組み込みソフト分野では、これまで受託開発がメインだったが、市場が成熟するなどして新規開発案件が減少局面に差しかかると、ビジネスに打撃を受けることになりかねない。今のうちからオリジナルのミドルウェアをベースに展開することで、収益の安定化を図るのが狙いだ。メーカーからみれば、既存のミドルウェアを活用することで開発期間の短縮やコスト削減につながるメリットがある。

　富士ソフトでは、携帯電話用のミドルウェアを「FSMobile」、DTV用を「FSDTV」などと名づけて拡販に取り組んでいる。今年6月には携帯電話などのワンセグ放送受信用モジュールを製品化し、デジタルカメラやカーナビ、電子辞書など表示画面を備えた電子機器向けに売り込みを始めるなど製品ラインナップを強化。将来的には、こうしたミドルウェア製品の海外展開も視野に入れる。