Linux OSメーカーがSMB(中堅・中小企業)向けビジネスの強化に踏み出した。新しい製品・サービスの提供やライセンス制度の改善、販売代理店に対する支援プログラムの追加など、各社とも新戦略を相次ぎ打ち出している。既存事業に加えて新しい成長路線を敷くことが狙いだ。
新しい成長路線を構築
ターボリナックスは、SMB向けにシンクライアントをベースとした製品・サービスを近く提供する。ソフトや端末が高コストであることや、外出先でログインできないといったシンクライアント導入の大きな壁になっていた課題を払拭したと強調する。200ユーザーの利用で端末を含めた1システムの価格を500万円程度に設定。外部からのログインは、OSをはじめパソコン環境の持ち運びが可能な製品「wizpy(ウィズピー)」で、今年5月から販売を開始した企業向けセキュアクライアントシリーズと組み合わせることで可能となる。矢野広一社長兼CEOは、「今年度(2007年12月期)までに1000クライアント規模の達成を目標として拡販を図っていく」としている。
ミラクル・リナックスでは、新ライセンスとして「パッケージライセンス」を今年9月からメニュー化する。同社のOSと、サーバーやソフトウェアなどをパッケージで販売するSIerやISVに対して提供するもので、これまでライセンスOSに含まれていたサポート料金を取り除いた。これにより、販売代理店はLinuxOS搭載のアプライアンス製品をユーザー企業に低価格で提供できるようになる。佐藤武社長は、「今年度(08年5月期)までに20種類のパッケージ製品をラインアップとして揃えたい」考え。
レッドハットは、中小規模のSIerやソフトウェア販社向けの支援プログラム「Red Hat Ready Business Partner(レッドハット・レディ・ビジネス・パートナー)」を7月から提供している。「SMBへのソリューション提供には、SIerやリセラーなどとパートナーシップを深めることが重要となる。新プログラムの策定で、新しい販売代理店を確保する」(藤田祐治社長)。同プログラムの参加企業として、今年度(08年2月期)までに50社を獲得する方針だ。
LinuxOSメーカーがSMB向け事業の強化に乗り出しているのは、「大企業を顧客対象としたビジネスでは、大手SIerとのパートナーシップ強化でミッションクリティカル分野のシステム案件が増えるという効果が出ている。ユーザー企業の増加に向け、SMBを開拓することが重要と判断した」(レッドハットの藤田社長)ためだ。「ウェブサーバーなどインターネットのインフラでは、LinuxOSが主流になった。次のステップとして、基幹業務サーバーでLinuxOSの採用を加速できる」(ミラクル・リナックスの佐藤社長)との見方もある。また、「シンクライアントソリューションを提供すれば、ユーザー企業がWindows対応のアプリケーションを使わなくなるとは考えていない。しかし、サーバーへのアクセスでアプリケーションを使うという意識が高まれば、将来的にはOSにこだわらないようになるだろう。ユーザー企業が用途に応じてWindowsやLinuxを選択できる環境を整えていきたい」(ターボリナックスの矢野社長)意向もある。
各社とも、WindowsからLinuxへの移行を促すことを狙って新戦略を打ち出したといえる。マイクロソフトがSMB開拓に苦戦していることを背景に、事業拡大のチャンスと捉えているともみることができる。