NEC(矢野薫社長)は、ITプラットフォーム事業の拡大に本腰を入れ始めた。IT
プラットフォームBU(ビジネスユニット)内に今年度(2008年3月期)下期から、ストレージ、ブレード型サーバー、シンクライアントの3製品を網羅する横断的な組織「営業推進グループ」を新設した。PCサーバーやクライアント端末を中心にビジネスを手がける「クライアント・サーバ販売推進本部」内にはブレード型サーバーとシンクライアントに特化した専門チームも設置している。これらの専門チームと、ストレージを主力事業のひとつに位置づける「ITプラットフォーム販売推進本部」との連携を強化し、「09年度までに1500億円程度を上乗せする」というITプラットフォーム事業で掲げる売上目標の確実な達成を目指す。
09年度に1500億円の上乗せ見込む

「営業推進グループ」の人員は30人弱。製品横断の組織を設置した理由について、丸山好一・執行役員常務(ITプラットフォームビジネスユニット担当)は「PCサーバーが国内市場でトップシェアを堅持している。ストレージも、製品面で競争力が出てきた。当社製品のサーバーにユーザーが多いことを生かしながらストレージの拡販が図れる。その逆も可能」と語る。連携強化が事業拡大につながると判断したわけだ。
クライアント・サーバ販売推進本部内には、「SIGMABLADE推進チーム」と「シンクライアント推進センター」を設置。同販売推進本部の浅賀博行グループマネージャーがSIGMABLADE推進チームリーダーを、石垣博崇本部長代理がシンクライアント推進センター長をそれぞれ兼務している。人員は、2つの専門チームを合わせて35人程度を配置した。こうした専門チームを設置することで、ストレージを担当するITプラットフォーム販売推進本部と密な連携を図っていく。
NECが狙うのは、「リアルITプラットフォーム」の提供によるITプラットフォーム事業の拡大。ブレードシステム「SIGMABLADE(シグマブレード)」とストレージの「iStorage(アイストレージ)」、仮想PC型シンクライアント「VirtualPCCenter(バーチャルピイシイセンター)」、管理ソフトウェア「SigmaSystemCenter(シグマシステムセンター)」などの組み合わせで“システム統合ソリューション”の実現に力を注いでいる。これにより、ITプラットフォーム事業の売上高を「09年度には1500億円程度を上乗せする」ことを目指している。
直近の製品強化については、次世代グリッドストレージ「iStorage HS」シリーズを11月に市場投入。同シリーズは、無停止で容量や性能を拡張可能な「自動最適構成」、容量効率の大幅な向上で低コスト化が図れる「重複排除」、高信頼性や耐同時障害性を追求した「分散冗長配置」などにより、テープドライブと同程度の価格帯でディスク並みの性能を実現している。海外市場では、「HYDRAstor(ハイドラ)」のブランド名で先行販売しており、「実績が出ている」という。また、ストレージ機器メーカーのEMCとの提携で進めている共同開発が「来年早々には実を結ぶ」と製品化を示唆。ローエンドモデルの市場投入でSMB(中堅・中小企業)への導入を促していく。
同社はブレードサーバーの出荷台数で昨年、国内シェアトップを獲得。最近発売した100V電源対応の「SIGMABLADE-M100V電源セットモデル」を武器にSMBを開拓し、シェア拡大に弾みをつけている。シンクライアントでは、セキュリティ機能を強化。デスクトップ型「US110」とモバイルノート型「US60」の販売開始でシンクライアント需要の拡大につなげる。
NEC ストレージで巻き返す!
売り上げ30%増へ
NECがストレージ製品を事業拡大の柱に据えているのは、ITプラットフォーム分野の業績不振が背景にある。
ITプラットフォームの売上高は、昨年度(2007年3月期)が6514億円(前年度比4.7%減)と伸び悩んだ。今年度に入ってからも、第1四半期が1114億円(8.9%減)と落ち込んでいる。そのため、上期は「よくても前年同期並み」(丸山好一執行役員常務)と認める。しかし、「ストレージを中心に主力製品は前年同期を上回っている」という。順調な製品を組み合わせて、「ソリューション提案していくことで事業拡大につなげる」としている。
加えて、「ストレージとブレード型サーバー、シンクライアントなどを組み合わせたシステム提供にニーズが高まっている。これは、ユーザー企業と販売代理店ともに求めていることだ」と強調。ITプラットフォーム販売推進本部内に営業推進グループを設置したのは、「当社のなかで主力に位置づけている製品を横断的に把握する組織が必要」と判断したことによる。
また、「海外市場での事業を拡大していく。競争力のある製品はストレージ」と自信をみせている。すでに海外で先行販売した「コンドル」や「ハイドラ」は、「コスト面からも世界で通用している」という。海外でNECのブランド力を高めるためにもストレージが重要というわけだ。
さらに、「ストレージは収益性が高い。いかに利益を拡大できるかがカギになる」とみている。ストレージの拡販に本腰を入れたことで、いかに利益を増やせるか。ストレージを中心とした製品・サービスを提供拡大できるかどうかで、ITプラットフォーム事業の真価が問われることになりそうだ。