ソフト開発のNTTデータイントラマート（中山義人社長）は、SaaS対応のアプリケーション基盤を来年度第1四半期（2008年4－6月期）をめどに投入する。これまでウェブを活用したASPサービスの構築は可能だったが、SOA（サービス指向アーキテクチャ）に基づくソフトウェアのサービス化であるSaaSには十分に対応できていなかった。SOAを全面的に採用することでSaaS構築を大幅に簡素化する。今、多くのSIerが自社業務アプリケーションのSaaS化を検討していることから、SIerのSaaS事業の拡大を後押しする好材料になりそうだ。（安藤章司●取材／文）

SIerのSOA化を後押し

■ASP方式から脱却

　SaaSへの対応は、来年春を予定している主力製品のアプリケーション基盤「intra－mart（イントラマート）」のメジャーバージョンアップの際に行う。個々のアプリケーションを“サービス”として結合するSOA方式を全面的に採用することにより、インターネット上のさまざまなアプリケーション（＝サービス）と容易に連携できるようにする。

　顧客企業において、親会社の業務アプリケーションを複数の子会社と共有して使うケースはあった。だが、子会社単位で画面まわりなどを個別にカスタマイズすることは従来のASP方式の構造上、難しかった。同一アプリケーションを離れた場所から共有するとともに、カスタマイズによる最適化の需要は根強くあったものの、結果的に親会社も子会社も同じ操作画面を使わざるを得ない課題が残っていた。

　次期メジャーバージョンアップでは、アプリケーションのインターフェース（API）を公開することで、インターネット上のさまざまなサービスと連携できるようにする。先の親子会社で業務システムを共有する事例では、子会社は自ら必要とする業務アプリケーションサービスだけを採り入れ、自分に必要のないサービスは操作画面から削除するなどのカスタマイズが容易にできるようになる。

■SaaSでシェア拡大

　グループ会社内で使うだけでなく、intra－martのビジネスパートナーであるSIerが開発する業務アプリケーションのSOA化、SaaS化にもプラスに働く。　ソフトウェアをSaaS方式で販売するセールスフォース・ドットコムやネットスイートが急成長するなど、SaaS需要は急速に拡大。多くのSIerが自らSaaSビジネスに乗り出す準備を進めている。このタイミングでSaaS対応のアプリケーション基盤を投入することで「シェア拡大を目指す」（中山社長）考えだ。

　intra－martは、全国に90社近いビジネスパートナーを抱え、これまで1700社余りの顧客企業に納入してきた実績を持つ。SIerやISVが持つ業務アプリケーションを次期バージョンのintra－mart上へ移植し、SaaS型のオンデマンドサービスを始めるケースが増える可能性もある。intra－martの開発に当たっては、従来からオープンソースソフト（OSS）を巧みに利用することで、競合するアプリケーション基盤よりも価格を抑えてシェアを伸ばしてきた。今後は、SIerやISVのSaaSビジネスを後押しするといった、より高い付加価値を武器にビジネスを優位に進める。

　アプリケーション基盤の国内市場規模は、SOAやSaaS化の需要拡大を受けて、4年後の2011年には昨年比で25％増の約550億円規模に成長するとの見方もある。市場拡大の波に乗ることでビジネスを拡大させる。ビジネスパートナーの数は、今年度（08年3月期）通期で新たに10社増える見通しであるなど販売体制も拡大している。また、今年6月、新規株式公開を果たしてからは、知名度や信用力が大幅に向上。新規顧客からの引き合いが前年同期比で約2.5倍に増えた。

　こうした追い風もあり、今年度の売上高（非連結）は前年度比23.3％増の25億円を予測。今回のSOA、SaaS対応の次期バージョンは、来年度下期頃から本格的に売り上げに結びつくとみており、2年後の2009年度の売上高は今年度見通しの約2倍に相当する50億円を目指す。