富士通系の主要SI販社が、富士通から「販売報奨金制度」の撤廃を打診されているようだ。本紙が該当販社に取材して明らかになった。富士通は、自社製ハード／ソフトをSI販社が販売した場合、その販売額の数％を「販売報奨金」として販社に支払っている。販社はこれを完全撤廃することを打診され、その代わりにプロモーション費用の増額など複数の代替案を示された。販社はこの案に反発。交渉は難航しており結論はまだ出ていないが、富士通と系列SI販社の協業体制に影響が出そうだ。

富士通から撤廃の打診受ける
SMB市場の勢力図変わる可能性も

　販売報奨金制度とは、メーカーが販売会社やディーラーに対し、自社製品の取扱量の増大を促すために実施するものだ。富士通以外にもほかのコンピュータメーカーや事務機メーカーなど複数のベンダーがこの制度を実施しており、一般的な営業戦略の1つだ。

　富士通系のSI販社は、四半期ごとなどの期間内に販売報奨金の対象となる商品を、あらかじめ設定された金額以上を販売すれば、その販売額の数％を手にしていた。対象製品はPCから周辺機器、サーバー、ミドルウェアやパッケージソフトまで幅広い。昨年4月からは「PC」「サーバー」「その他」で製品を分け、それぞれで販売額が設定される仕組みとなっている。該当販社のうちの1社は、「年間100億円販売して、5000－6000万円を販売報奨金として受け取っていた」と説明する。

　今回、「販売報奨金制度」の撤廃を打診されたのは、中堅・中小企業（SMB）をメインターゲットに置く富士通系SI販社5社程度とみられる。なかには、富士通が出資している企業や上場会社が含まれている。富士通は、この販売報奨金制度を完全撤廃して、代わりにプロモーション費用の増額や特定商談が発生した場合に値引き額を富士通が負担するなどの新制度に置き換えるプランを提示したもようだ。

　打診を受けた販社はほぼすべて、この計画に反発し、再度検討するよう要求。その後、練り直された代替案で数回の交渉があり、該当販社と富士通の担当者が集まった会議も開かれたが、現在でも結論に関する富士通からの連絡はないという（2月18日時点）。富士通が最初に打診したのは昨年秋。それから半年間にわたって話し合いが続けられており、ある販社は、「2月下旬に結論が出て、何かしらの報告があるはず」と答えている。

　報奨金撤廃を打診されたのは、富士通のSMB戦略を担う中核的メンバーだ。富士通系製品でのみビジネス展開する販社はないものの、富士通製品の比率が圧倒的に高い。

　該当販社は、「以前に比べて販売報奨金のパーセンテージは小さくなっているものの、もしなくなれば獲得利益面でのインパクトは大きい。とくに、サーバーやPCなどのハード販売事業は利幅が薄い商材になり、利益を捻出するために（販売報奨金は）非常に大きな材料になっている」と語る。営業担当者のモチベーションの低下など、販売報奨金制度がなくなることによる悪影響を懸念している。この販社は結論次第で、富士通製品以外の調達を増やすことも検討するという。また、「結論がどう出るにせよ、信頼関係の面で、少なからず協業関係に影響が出るのは必至だろう」との声も出ている。

　この動きをすでに察知してか、競合のコンピュータメーカーでは、他社の販社を取り込もうとする動きが、水面下ですでに始まっている。

　富士通は今後、新プランを推進するか、それとも従来制度を維持継続するか。同制度の動向は、製品ジャンルを問わずシェアに影響をおよぼし、SMB市場での勢力図争いに大きな変化を与える可能性がある。