内部統制関連のIT需要が、今年4月以降強まるとの声が高まっている。2007年にIT特需を生むと期待された内部統制は、「金融商品取引法(金商法)」の本格適用が始まる4月以降のほうが、07年よりもIT需要を引き出すというのだ。「金商法」対象企業の内部統制の仕組み構築は、予想以上に遅れ、効率化するためのIT投資も先送りになっていたからだ。運用が始まって気づいた不十分さを、ITで解決しようとの動きも顕在化するとの見解も出てきた。業界が期待していた時期(07年)より遅れて、“本物の”内部統制ビジネスが動き出す可能性がある。
先送りされたIT投資が顕在化 07年超える需要が4月以降に

内部統制の仕組み構築と報告を義務付けた「金融商品取引法(金商法)」が成立した2006年6月以降、IT業界はこの仕組みを確立するためのITツール導入や、情報システムの再構築案件が増えるとみていた。「金商法」の本格適用は今年4月からで、その直前年となる07年は「“内部統制特需”の年」と、多くのIT業界関係者が口を揃えていた。しかし、この期待は裏切られることとなった。同法の対象となる上場企業の対応が、予想以上に遅れているからだ。
連結会計システムの開発・販売を行い、約500社の顧客を有するディーバが「内部統制報告制度」関連で07年11月から12月にかけて調査したレポートによると、連結決算業務に関して「対応完了」と回答した企業はわずか3%で、四半期報告制度に「対応完了」と答えたのは5%という結果が232社からの回答で分かった。ディーバでは、「適用直前の現在でも、対象企業は試行錯誤の状態。順調に進んでいるとは言い難い」と分析している。
取り組みが順調に進んでいた企業でも07年は、IT導入前の業務洗い出しとフローの見直し、組織の整備などに終始し、仕組みの効率化をサポートするIT化まで頭がまわっていないケースがある。大塚商会の大塚裕司社長は、「07年は、内部統制の仕組みづくりのためのコンサルティングサービス需要はあったものの、情報システム関連投資が特需的に高まった状況ではなかった」と説明する。
さらに、今後は「同法適用後は、早急な対応が求められるため、これまでと比較すれば短期間での情報システム稼働を求められるのではないか」ともみている。シマンテックの木村裕之社長も、「07年よりも08年がニーズの本番になるだろう」と読んでいる。企業の対策が遅れて、それに引っ張られるようにして先送りになっていたIT投資にようやく火がつくというわけだ。
加えて、需要を押し上げる理由がもう1つある。それは、準備を終えた対象企業の内部統制の不十分さが顕在化すること。大塚商会の向川博英・技術本部コンサル推進グループ部長は、「適用期間に入り、内部統制報告に必要な文書化3点セット(業務記述書、業務フローチャート、リスクコントロールマトリックス)に問題が出て、管理体制の不十分さに気づく企業が出てくるはず。その問題を解決しようと、ITツールを導入する機運が高まるだろう」と説明する。
文書化から運用評価、不備の改善までを支援するツールを販売する三菱電機インフォメーションシステムズの大庭和人・内部統制推進プロジェクト次長・営業グループマネージャーは、「対象企業の多くは、基本対策の文書化までは手がけてきたが、有効性評価まで考えが及んでいない。運用・改善提案までをカバーするツールの需要は高まるはず」と予測している。
同法の対象となる企業の対策遅れに引っ張られる形で先送りになった内部統制関連のIT投資は、07年にはさほど生まれなかったというのが業界の共通見解。ただ、仕組みの確立・運用においてITは必須となる。本物の内部統制需要が今年4月から顕在化し、湿り気味だったITビジネスの火勢が強まりそうだ。