OKIデータ(杉本晴重・社長CEO)は国内の新規市場を開拓するため、「特定用途」ごとに製品、販売、パートナーを組み合わせて一貫したビジネスモデルを構築する「ソリューション・マネージャー」を配置した。同社は一般OAを除く特定用途に限った「バーティカル市場」の売上高のうち、POPとDTP分野が約8割を占めている。ただ、ラベル印刷など、競合他社が進出を強化している分野の割合が少ないことから、販売プロセスを明確にして売上高を伸ばす戦略を講じる。シングルプリンタを主力製品にするプリンタ販売会社は、一般OA向け印刷ボリュームが減るなかで特定用途向けの拡大策を打ち始めており、市場での競争が激化しそうだ。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
第3、第4の市場開拓へ
■「想定市場」の商流プラン作成 OKIデータは自社プリンタと特定用途の印刷機器やソリューションを融合した「顧客親密モデル」を構築するため、4月から「ソリューション・マネージャー」を配置。同マネージャーは、事業性の高そうな特定用途の「想定市場」を探し、この領域を攻略するために技術面で協力関係が必要となるアライアンスパートナーと、ここで仕上げたソリューションを販売する販売パートナーを開拓する。事業策定から市場開拓するための販売面まで一貫した商流プランをつくり営業部隊へ指示を出す。
例えば、同社が提携するスウェーデンのANOTO(アノト)社がもつデジタルペンで専用紙に書いた文字や画像をパソコンなどに転送できる特殊技術と自社プリンタを融合し、医療や学習塾、介護などの特定用途向けの市場を開拓する。この際に技術面で大日本印刷とビジネスモデルを構築し、同社や医療分野に強みをもつ東芝などを介して販売していく。OKIデータでは、こうしたソリューションの候補として、ANOTOのほかに小売業やセキュリティ、CAD、マネージドプリントサービスなどをあげ、各ソリューションに同マネージャーを配置する計画だ。
従来もこうした特殊技術を活用して「面白いという段階まで作り上げたソリューションはあった」(藤井武夫・国内営業本部プリンティング・ソリューション推進部長)が、「販売パートナーを含めた販売プロセスを構築するまでには至らなかった」(舘守・執行役員国内営業本部長)ことから、改めて販売パートナーとの連携をいままで以上に強化することになった。
■シングル機販社の競争激化 同社の「中期経営計画」(4月7日号で既報)では、2010年度(11年3月期)までに売上高を07年度見通しの241億円から350億円にまで引き上げ、営業利益70億円(07年度分は未公表)を達成目標に掲げている。「POP・DTPに次ぐ第3、第4の柱となるソリューションを構築する」(舘執行役員)ことで、達成は可能とみている。第3、第4のソリューションは全体の売上高の12%(42億円)が目標だ。
シングルプリンタを主力にするエプソン販売やコニカミノルタプリンティングソリューションズ、カシオ計算機、ブラザー販売などプリンタ販売会社の市場は、一般OA市場が個人情報保護法やドキュメントの電子化が進展し印刷ボリュームが減ったり、シングル機をMFPで代替する動きが鮮明化していることなどの煽りを受けて縮小している。このため各社は、新たな印刷ボリュームを求めて特定用途向けの市場開拓を本格化している。
この影響で、ラベル印刷などの機器やドライバをもつメーカーや特殊な印刷技術をもつ印刷業者との連携が進み、各社の獲得合戦が激しくなっている。新規性のあるソリューションに加え、特定用途に影響力のある販売パートナーを獲得して、企画から販売までを一貫して検討する動きは、OKIデータ以外でも強まりそうだ。