OKIデータ(杉本晴重・社長CEO)の中国北京にあるプリンタ販売子会社、日沖商業(北京)有限公司(遠藤治彦・董事長=会長)が中国内で販売するプリンタ売上高の9割はドットインパクトプリンタ(SIDM)が占める。しかし、SIDMは「本体売り切りで、アフターがない」(遠藤会長)ことから収益力を高めるサプライ品の販売などが伴わない。日沖では、サプライ品を伸ばせるカラーLED(発光ダイオード)の販売力強化が最大の課題となっている。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
SIDMではサプライを稼げず
ページプリンタの拡販に難題
中国のビジネス向けカラーページプリンタ市場には、HP(ヒューレットパッカード)という大きな壁が立ちはだかる。HPは中国で市場の7割(金額ベース)を占有する独占企業だ。「中国のカラーページプリンタ市場は、シングルの16枚機が売れ筋。それ以下のプリンタを含め、低価格競争が続いている」状況で、遠藤会長はまず、OKIデータのカラーLEDプリンタが得意とするプリントショップや写真DPE向けに注目する。
半年ほど前の2007年11月には、SIDMでも提携する方正世紀とカラーLEDプリンタの販売でも手を組むことができた。方正は1000社以上の販売店網を抱える。特に、プリントショップや写真DPEショップ、デジタル印刷業向けに実績があり、「当社の中位クラスのプリンタ販売を加速するのに有力なディストリビュータだ」(遠藤会長)と、これが市場を切り開くための端緒となったという。
一方で遠藤会長は、「ローエンドできちんと他社と戦える製品がない」として、製品ラインアップに問題点があると打ち明ける。この課題は、いち早く日本の本社に伝えられ、杉本社長CEOは「ローエンドで収益を生み出す製品を揃える」と、中国市場だけを意識した発言ではないものの、即断で対応を決めた。
プリント枚数を稼げるデジタル複合機(MFP)の販売では現在、ある有力ディストリビュータと「共同市場調査」を開始した段階だ。実は中国企業は、ページプリンタなど高速印刷機を持たない傾向が強い。ページプリンタの市場開拓を本格化するうえで、綿密な市場調査が欠かせないのだ。例えば、中国政府が出す「政府通達文書」は、厳重なセキュリティが必要で、中国国旗の星マークを鮮明に出すことが求められるため、OKIデータのカラーLEDプリンタに注目が集まっているという。
その前段階として今年3月、北京市内に3か所のプリントショップを開設した。東京の大手町にあたるビジネス街の一角に店舗を構える「図文快印」には複数台のプリンタが並び、企業からの注文に応じている。このショップを企画した日沖のプロダクトマーケティングに所属する羊柳・チームリーダーは「小さい企業ほどプリンタを買わず、ショップで大量印刷する。サプライ品の売り上げを伸ばすうえで、このビジネスモデルは浸透するはず」と、自信をみせる。
日沖が苦労する市場開拓にみられるように、「市場が大きいから」と安易に進出すると痛い目に遭う。現地の環境を綿密に調べ、地道な取り組みがなければ開拓はできないのだ。(おわり)