メガヒットした「iPhone 3G」。米アップルが世界21か国で同時発売したこのモバイル端末は、発売後3日間で100万台を出荷した。初代機に比べ71日も早い到達だ。この人気端末、注目しているのはコンシューマだけではない。ビジネスアプリベンダーが動き始めているのだ。(木村剛士●取材/文)
業務アプリベンダーが続々対応表明
「iPhone 3G」は、直感操作のタッチパネルや「iPod」内蔵など、多数のエンターテインメント機能を備えている。だが、実はビジネス用端末としての機能も、前モデル以上に充実している。企業が生産性向上や業務効率化のために、「iPhone」を使う──。ビジネスアプリベンダーはそれを期待し、準備し始めたのだ。
ビジネス用途に適した機能は「Microsoft Exchange ActiveSync」やVPN(仮想私設網)のサポートなどがある。いずれも企業からの要望に応えた機能・技術だ。加えて、「App Store」がある。これは「iPhone」で動作する有償・無償アプリのポータルで、アプリベンダーが容易にソフトを開発・販売できる仕組みが備わっており、すでに約900本のアプリがある(7月下旬時点)。
アップルはソフト開発ツールキット(SDK)を無償公開しており、開発者はこれを使い、自由に価格を決めて「App Store」で販売できる。その価格の約70%が開発者の売り上げとなる仕組みだ。ソフトベンダーは自社商品の販売インフラが増えるわけだし、たとえ無償提供だとしても、「iPhone」サポートが付加価値になり、サーバーやPC向けソフトの販売に弾みがつく可能性もある。SDKは、6月下旬段階ですでに25万本がダウンロードされた。
米オラクルはBI機能の対応アプリを「App Store」に用意した。日本オラクルの西脇資哲・製品戦略統括本部製品戦略担当シニアディレクターは、「端末を問わずソフトを利用できるようにするのがオラクルの基本戦略。対応はその一環だが、『iPhone』は操作性などあらゆる面でほかとは違う革新的な機器」と絶賛する。米オラクルはCRM、SFAでも対応を表明、日本でも順次展開する。
ドリーム・アーツも自社製品の「iPhone」対応を決めた。オラクルとは違うアプローチで、「iPhone」搭載のWebブラウザ「Safari」にグループウェアを対応させる。同社はPDAや携帯電話といったモバイル機器でグループウェアを利用できるライセンスをオプションで販売しており、全顧客の40%がこのオプションユーザー。比率が高いだけにユーザー企業の「iPhone」導入に備える。Web型DBや営業支援システムなども商品化しており、「これらへの対応も検討する」(垣内廉史・製品開発本部副本部長)と前向きだ。この2社以外にも、ネットスイートなどが対応を決めている。
米国では医薬品メーカーの米ジェネンテックが、新モデル発売を契機に3000台を新規導入する。米通信機器大手がグローバルレベルで導入する計画もあり、法人需要は上々だ。空前のヒット商品は、業務アプリベンダーのビジネスチャンスも創造しようとしている。