Computexでのトレンド商品は会場をちょっと回ってみれば分かる。今年の要注目商品はPDAと超小型ノートPCの中間に位置づけられる、車載(モバイル)を考慮したPCであろう。こうした傾向をつかむのは極めて重要である。試作品ならともかく、すでにかなりの資本を投じて製品化しているので、売れなかったでは済まされない。このためトレンドづくりに始まり、かなりな大仕掛けで製品販売を企画している。この製品は半年後から1年後にはほぼ間違いなく日本で販売が開始されると思ってよい。
一方で、Computexでは衰退していく製品も敏感に嗅ぎ分けることができる。毎年連続して参加していると、「昨年はあれほど見かけたのに今年は…」と感じる製品がある。最近ではPLC(高速電力線通信)がそれで、昨年の段階で大幅に展示が減っていた。案の定、昨年後半には日本市場から姿を消している。
回を重ねると、トレンドも分かるようになってくる。例えばSwitchの場合、Giga対応の程度や光に関するプラグ関連の変化は出展品に明確に現れているので、見逃してはならない。
話は少し横道にそれるが、台湾系の企業は中国本土に多くの工場を有している関係で、表面的にはライバルでも深層な部分では意外なほどコネクションが強い。中国の新年(春節)などに招かれて名刺交換をすると、招待客のなかにライバル企業の社長の顔があり、にこやかに歓談しているシーンを見かける。彼らは時と場合によっては大同団結し、難局に立ち向かう術を心得ているようだ。

近年、彼らの一番の関心事項は中国政府の台湾に対する政策である。中国政府は台湾を外国扱いせず、「省」とみなしており、労働法等の適用が諸外国とは一線を画す展開となっている。このため、台湾資本は緊密な情報交換はもちろん、一枚岩での対応を余儀なくされているが、この事情は時には製品ラインアップにも影響を与えることもある。例えば、製造元が同じと思えるOEM製品をやたらと見かけることがある。台湾IT業界の一つの特徴といえる。このため、うっかりすると「トレンド」と思いこんでしまうケースもあるので要注意だ。
Computexはこのように幾重にも重なった特殊事情を考慮し、ポイントを絞って見ることが必須となる。昨年のASUSのブースなどはその典型で、訪問した方は今年の小型PCの展開は予測できたはずである。(若尾和正(ベガシステムズ社長)●文)