オフィス以外でも需要拡大か？

　「セキュリティ」といえば、まずはPC向けが頭に浮かんでくるだろう。だが、PCのみならず、携帯端末に対してもセキュリティ対策を施さなければならない時代になりつつある。すでに携帯電話にはウイルス感染の事例が報告されていて、セキュリティベンダーからは携帯端末向け製品が販売されている。

　モバイル端末が高機能化するにつれ、企業の利用が増えてきている。スマートフォンなども、情報を守るためPC同様に「セキュアなインターネット環境や社内ネットワークへのアクセス環境は必要不可欠だ」と、あるセキュリティベンダーの担当者は話す。このベンダーでは、スマートフォン向けのセキュアなリモートアクセスを達成するソリューションを販売中だ。スマートフォンは、メール閲覧などのライトユースに限れば、ノートPCよりも携行性と利便性が高く、重宝されている。モバイル環境が充実してゆくなか、モバイルネットワーク環境は一般オフィスだけでなく、飲食店のような店舗でも構築されるようになりつつある。

　従来、レストランなどで使われているオーダリングシステムは専用機器を組み合わせて構築されていた。だが最近は、一般に流通しているような汎用機器が用いられるようになってきた。端末にはWindows系OSを搭載したポケットPCが使用され、それらとPOSシステム、オーダーをプリントするプリンタなどを無線LANでつなぐ。汎用的な機器を活用していることで、専用機器よりも安価なシステム構築を可能にしているのだという。

　専用端末なら一般的に1台10万円ほどするというオーダリング端末も、ポケットPCを採用したシステムならば、メーカー製品で1台2─3万円程度で調達できる。その分、端末をより多く導入できる。安価なため、中小規模の飲食店にも適している。業界のコスト競争が激化するなか、安いばかりでなく、迅速な顧客対応を可能とし、汎用製品だから運用に特殊なノウハウを必要としないとなれば、採用する企業も増えると見込んだはずだ。

　だが、実際は「こうした店舗向けのネットワーク環境の『セキュリティ』がネックとなって、導入に二の足を踏む企業もある」のだという。ネットワークのセキュリティが保証されていないと、たとえオーダー情報であれ情報を盗まれる可能性が出てくるからだ。POS情報と密接な関係をもつオーダリングシステムのセキュリティは、「意外な盲点」となっているようだ。

　同じセキュリティベンダーの担当者は、こうした盲点をもつネットワークのセキュリティには、PKI（公開鍵暗号基盤）をうまく活用することができるのではないかと話す。「PKI活用で、セキュリティを担保できるソリューションを展開できるのでは」というのだ。

　組み込みOSが搭載されている場合は検証が必要とされるが、こういった（使用環境が）オフィスではない市場に向けたセキュリティ市場も広がっていく可能性がありそうだ。モバイル環境の進展により、あらゆる場面での情報保護を考えなければならない時代がやってきた。