ベンダーへの影響は？

　ISP（インターネットサービスプロバイダ）業界の再編が続く。このほどアッカ・ネットワークスは、イー・アクセスの子会社となった。競合の傘下に入ることで生き残りの道を選んだのだ。

　イー・アクセスがアッカの取得株式を15.04％から45.32％まで拡大。社内体制については、10月1日をめどにアッカがイー・アクセスから取締役を迎え入れる予定だ。「財務基盤の強化につながった」（アッカの須山勇社長）と胸を撫で下ろしているのをみると、単独では業績回復が難しいと判断した結果のようだ。

　このことは、ISPを取り巻く環境は、ブロードバンド（BB）回線サービスの月額料金だけで利益を維持していくのは、低料金が定着した現状では採算が合わないことを物語っている。イー・アクセスがアッカを子会社化したのは、ビジネス上、統合する意味があると捉えたからだ。両社が主要事業のひとつとして手がけているADSL事業を統合。販売は両社それぞれで行うものの、ADSL設備をアッカに譲渡することで収益性の高いビジネスに変える。イー・アクセスの深田浩仁社長は、「スケールメリットを出さなければならない」としている。

　国内ADSL市場のなかで、アッカとイー・アクセスのシェア順位は低いというわけではない。むしろ、上位を維持している状況だ。にもかかわらず、スケールメリットを追求しなければならないのは、市場環境が変化しているためだ。光ファイバー接続の台頭でADSLの加入者減が目立つ。採算の合う事業に変えるには規模の拡大が必須というわけだ。

　このような市場環境を踏まえると、今後はISP業界の再編が加速するとみていいだろう。数多くの国内ISPは、現状のビジネスモデルでは淘汰される可能性が高いといわざるを得ない。光ファイバーの加入者が徐々にではあるが増えつつあるなかで、ADSL事業が利益を確保できないビジネスになっているという事象は、大手に限らず中堅・中小事業者にも大きなダメージをもたらしていることだろう。なかでも、ケーブルテレビなど地域に特化した事業者が採算の合わないビジネスとして悲鳴を上げていることは間違いない。

　こうした環境悪化により、ベンダーサイドを襲う可能性のある問題としてあげられるのは、ISP業界でのユーザー企業が極端に減るということだ。今でも、ITシステムやネットワークインフラに対する投資が極端に抑えられるのは実際のところである。とくに、地方でケーブルテレビ会社を最有力得意先としてビジネスを手がけるSIerやNIerにとっては事業継続を危ぶまれるケースもあるはずだ。ほかにも、ADSLサービスの販売会社にとっては売る商材がなくなる可能性すら考えられる。

　NTTグループのNGN（次世代ネットワーク網）をはじめ、通信事業者がネットワークインフラの抜本的な強化を行い、アプリケーションを含めた回線サービスの提供など新しいビジネスモデルを模索し始めている。これも回線サービスだけでは食っていけないことの現れだ。ISP業界を中心にビジネスを手がけるベンダーにも、新しいビジネスモデルを構築する必要性があるとみられる。