ホームネットワークビジネス変わる
通信建設業最大手の日本コムシス(高島元社長)が、新たな一手に打って出た。同社はNTTから発注を受け、光ファイバー通信サービスのインフラ構築ビジネスを展開している。その日本コムシスがITサポートサービスの大手、スリープロ(高野研社長)との業務提携で家庭内ITサポートサービスのオンサイト業務に本格参入したのだ。
NTTからの工事受注額自体は増加傾向にあるが、通信事業者の投資状況の変化などで、1件ごとの単価は減少に転じている。
さらに、従来は電柱に設置した光クロージャから宅内にONU(光回線終端装置)を設置し、引き込む工事までをNTT指定の工事業者が行っていたが、他の通信事業者にクロージャから引き込む工事が開放される動きがあり、NTT以外の通信事業者指定の工事事業者が参入可能になる。
こうした事情から、宅内工事の市場環境は厳しくなっている。そこで、宅内設備まで含めた、ホームネットワークの保守、運用、販売を強化することで、ワンストップですべてを提供できる体制に拡充。縮小傾向にある事業を伸長させるというのが同社の狙いだ。「ホームネットワークは、NGN(次世代ネットワーク)やユビキタス社会の方向に向かっている。通信と放送の融合や、情報家電の普及などさまざまな展開が予想される」(日本コムシスの長谷川將・理事 ホームネットワーク部長)とみる。一方で、情報家電などさまざまなデバイスがネットワークにつながった状態のホームネットワークのユーザーは、不具合が生じた際などに、誰に相談したらいいかわからないといったことも起きかねない。そこで同社は、「ネットワーク」をキーワードにITサポートを行っていくという。
日本コムシスの今のホームネットワークビジネスは、NTT東日本のOSA(ワンストップアフターサービス)への対応として、Bフレッツ開通工事と同日、同時にPC・無線LAN・ゲーム機器などの接続設定を行っているほか、同じく工事日と同日にスカパー!の開通工事も行う。また、NTT東日本の東京エリア外での故障修理業務の受託、さらに代理店として、NTT関連の商品の販売なども手がけている。
今回のスリープロとの協業により、OSAメニューを拡充。PC周辺機器やウイルスソフトなどへの対応や、開通後のホームネットワークのオンサイト体制の確立による工事・運用・保守の強化、また販売にも力を入れることで、包括的にネットワークサービスを提供する。スリープロとは日本コムシスがマネジメント、スリープロが業務委託という形をとり、また両者でサービス開発など、ノウハウを共有する。
ホームネットワークの発展は見えているものの、白物家電の情報家電化もまだ、とば口の段階だ。今まで、回線工事とITサポートは別の業者がそれぞれ行うケースが多かった。今後は、「当然、競合他社も当社と同じような体制をとってくることは十分予想できる」と日本コムシスはみている。さらなる市場競争激化が予想されるなか、他社も同様に業容の拡大に向けた取り組みが大きく進んでいきそうだ。(鍋島蓉子●取材/文)